vol.006 松崎 稔
オリンパス株式会社 CSR本部 CSR推進部 課長 URL:http://www.olympus.co.jp/jp/
オリンパス光学工業(株)入社。19年に渡りカメラ開発に従事。その後、
97-03、米国駐在 R&Dシニアリエゾン兼シニアエンジニアリングマネージャー。ソーシャルマーケティングを本業で展開。
04-05 マーケティング企画部長。グローバルスポンサーシップを担当。
06-07 オリンパスイメージング(株)営業企画統括部 課長。
07-07月より現職。
前回は、松崎氏がCSRに目覚めるまでのエピソードをご紹介しました。もともとは長年カメラの開発設計を手掛け、マーケティングを経験し、その傍ら、セプテンバーイレブン(9・11)や日本経済の変化など様々な人生経験を通して自分にとって本当に大切にしたいと思うものは何か?と考え抜いた末に見えてきたCSRという一つの道。Vol.2となる今回は、CSRへとつながる活動を始めてからのエピソードをご紹介いたします!
コーズマーケティングを始めてみてどうでしたか?
やっぱり難しい。会社は利益を追求するものだから、四半期ごとに提出する資料で書けないことをやるのは難しい。少なくとも半年で結果が求められます。それは数値的なもので、売り上げや、利益にリンクするものです。直属の上司からは余計な仕事をやっているという評価でした。話をすればするほど、「分かった。会社にとっては、すばらしいことだけど、是非この組織ではなく、もっと適切な部署で行ってくれ。」と言われました。でも、逆に考えれば、何故やりにくいのかが良く分かりました。進める上での問題点もよく分かった。これがトリガになり初期の段階で、このプロジェクトに賛同しかねる理由を関連組織からすべて出してもらったのです。この方がかえってやり易かったのかもしれないですね。それに克服すべき課題が具体的にできてくれば、それは知恵とアプローチ次第で、解決法は見出せるのです。その"ツボ"を押さえると、今度は、これはいいじゃないか!となり、応援団に変わってくれます。でも初めはつらかったですね。自分自身でも、あまりにもかけ離れたことをやっている意識は持っていました。広げた風呂敷が大きかったのです。社内の関連組織的も、「これは良いプランだ。反対はしないけど、経験もないので、この仕事は我が部署は関われないよ。」という感じでした。形が見えてきた段階では、関連部署は、全面的な協力を頂きバックアップして頂きました。大変感謝しています。
実際にどのようなことをされたんですか?
"A Day in the Life of AFRICA" というプロジェクトです。このプロジェクトは、世界の26カ国から著名写真家約100人がアフリカ大陸の53カ国に散らばり、24時間の間に撮った写真で写真集を作るというものでした。このプロジェクトの目的は、3つありまして、①世界で初めてデジカメで写真集をつくる、②初のアフリカ全体の写真集をつくる、③英語/ドイツ語/フランス語で写真集を発売し収益の100%をアフリカのエイズの教育基金に寄付するというものでした。3つ目の目的は、アフリカに蔓延するエイズの問題に注目してもらいたいという社会的意義のあるものでした。 もともと"A Day in the Life "プロジェクトはシリーズもので、写真集を出すためのプロジェクトでした。今回の14回目で、初めて全面的に社会に貢献する目的で行ったのです。2000年ぐらいから準備は行ないました。 途中、セプテンバーイレブン(9・11)もあって、そのころ、社会全体が写真家に、紛争やテロの温床となる貧困とか、社会のマイナス面の写真を要求していました。写真家もそのようなマイナスイメージの写真ばかり要求され心がすさんでいたんです。そんな中で、この写真集の収益を100%アフリカのエイズ教育の為に寄付しようという高尚な目的は、写真家や、我々スポンサーを大変に高揚させました。それが、写真史上、最大級の今回のプロジェクトに押し上げた大きな要因と考えます。 写真集が売れないことには、寄付する利益を得られませんから、写真集完成時には、オリンパスが、アメリカでサテライトスタジオを借りて全米のTV局あてに24時間配信しました。プロジェクトの内容や写真、写真家のインタビュー、またアフリカのエイズの問題そして、このプロジェクトの意義を伝えました。全米で、20局以上、のべ800万人以上が視聴したということです。
このプロジェクトの効果はどうでしたか?

熊本展、来賓大使への写真集贈呈
結果としては、今まで知られていなかったアフリカをよく伝える素材として高い評価を受けました。そこで、国際社会の約束『ミレニアム開発目標(Millennium Development Goals:MDGs)』の必要性を伝える素材としてふさわしいということで、NYの国連本部でも紹介されました。MDGsでは、アフリカを抜きには考えられないものです。アフリカは干ばつや洪水、貧困、感染症、紛争といった問題を抱えているけど、今回の写真は何気ない日常の1コマやアフリカの大自然、人々の躍動感と希望に満ちた姿を映したものでしたから、今までのようなアフリカのマイナス面だけを伝えるのではなく、アフリカで暮らす人々の日常を伝え、アフリカを身近に感じる素材として評価されたのです。 それから、2003年アフリカ年にちなみ、写真展を東京を皮切りに世界でやっています。そのうち東京での写真展の全収益(写真集の収益寄付とは別)をMDGs達成に役立てるために国連に寄付しました。現在は、この寄付が元となってUNDPを始めとする国連関連機関がAIDS啓発のCD「We are the Drums -for an AIDS Free Generation-」を作成しました。これはアフリカのミュージシャンが、アフリカのために、アフリカの言語で、アフリカの音楽でCDを作ったのです。これが、昨年の2007年に完成し、世界エイズディ(12月1日)にアフリカ52カ国のラジオ局中心に10,000枚無料配布されました。丁度、北京の中国国立美術館でこの"A Day in the Life of AFRICA"展のオープニング式典と重ねましたので、アジア向けMediaにオリンパスから配布いたしました。 (ミュージシャンの許可が取れれば、オリンパス音楽配信サイトにて無料提供予定。) (写真展は、基本的には無料で提供しています。)
その後、プロジェクトはどうなりましたか?
愛・地球博でも協力しました。国連館の4つのコンセプトのうち一つがMDGsでした。また、今年は日本政府が中心となりアフリカの開発をテーマする国際会議TICAD Ⅳ(Tokyo International Conference on African Development Ⅳ)の年です。2003年アフリカ年 TICAD Ⅲから5年たってもこの素材が一番良いということで再度、誘致を頂き、全面的に協力いたしました。 また写真展だけでは限られた人だけしか見れませんでの、社内のWEBグループの全面的支援を受けて、2004年にオリンパス内にウェブギャラリーを作りました。日本語だけでなく、英語、中国語、韓国語も作りました。。コンテンツとしては、100枚の写真が解説つきで見れるし、音も聞けるんです。この音は、アフリカの原音を使っていて環境BGM的にもなりますよ。その中にもMDGsのコーナーを作って、オリンパスの役割、MDGsって何だろう?ということの普及に努めています。こういうことをやっていると、いろんなところからの問い合わせがあって、ユニセフの県支部のアフリカ勉強会にMDGsパネルを貸したり、TICADの民間市民フォーラムの団体が主催した、Run for Africaで協力をしたりしました。これから、2008年を締めくくるのにあたり、G8サミットを行った北海道でも写真展を行います。12月中旬から、写真の町として有名な、東川町で行ないます。
目に見えて結果がでてやりやすくなりましたか?

始めのスタートは、デジタルカメラのプロ向け新視システムの新規導入にともなう大型導入イベントが切っ掛けでした。このときは、カメラ導入度のマスマーケティングでした。しかし、それは、ごく初期のことで、その後は、会社としての『本業を通じての社会貢献』と舵を切り直しました。まさにCSR的アプローチを行ってきたのですが、社会とのコミュニケーションという観点からは、この方が多くの共感を呼びました。初期の東京・神戸の会場はオリンパスが準備したものですが、その後のいずれの会場も、ユニセフ県支部が用意していただいたり、自治体側からご用意頂いたり、国連や外務省から誘致頂いたりということで、外部の要請に基づき行ったものです。そのような、地域とのコミュニケーションの存在こそが、地域社会との良い関係性の築きと、このイベントの社会的意義を皆さんにご理解いただけていると考えています。 写真という素材はすばらしくメッセージ性が高く、また、一流の写真家が成しえた技は、社会に訴える力があるからこそ、この5年間続いてきたのだと思います。
・克服すべき課題が具体的にできてくれば、それは知恵とアプローチ次第で、解決法は見出せる
・『本業を通じての社会貢献』
・写真という素材はすばらしくメッセージ性が高く、また、一流の写真家が成しえた技は、社会に訴える力がある
長文におつきあい頂き、ありがとうございました!
次回は、A day in the life of AFRICAというオリンパスのCSRにおいて大きなものとはまた別の活動についてご紹介いたします!
乞うご期待!
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Wrote 2011.11.08 << 前のインタービュー | 次のインタービュー >>