vol.139 林 恵子

NPO法人ブリッジ・フォー・スマイル/理事長  URL:www.b4s.jp

【個人プロフィール】
大学卒業後、人材総合ビジネス会社株式会社パソナグループ(当時)に入社。
副社長秘書、営業、面接、契約管理、人事などを担当。
自己研鑽を目的にしたビジネス研修で児童養護施設を知り、
04年12月 NPOブリッジ・フォー・スマイル創設(05年6月法人成立)。
理事長就任。8歳女児、6歳男児の母。
【団体プロフィール】
・設立年/2004年
・主な活動拠点/東京、神奈川、千葉、埼玉
・組織構成/有給スタッフ5名、ボランティア70名
・スタッフ募集/特にしていません。ボランティアは、随時
・募金受付/随時
・どんな関わり方ができますか?/
セミナーで児童養護施設等の中高生の参加をサポートしたり、
退所者の個別相談にのったりする直接支援と、
広報誌を作成したり、啓発イベントを企画、実施したりする、
間接支援があります。

様々な家庭の事情により、家族と暮らせない子どもたち

まず、養護施設の現状を教えてください。

児童養護施設は、全国に約560施設あり、0歳から18歳の子どもたち約30000人の子どもたちが生活しています。 入所の理由として親の死亡、行方不明、入院、拘禁、養育放棄などが挙げられますが、近年、最も顕著な理由は、虐待です。施設で生活する子どもたちのうち、およそ6割が虐待を受けていたというデータがあります。「孤児」のイメージがありますが、実際のところ子どもの9割は、親が生存しています。

児童養護施設で一番の課題になっているのはなんでしょうか?

まず、大前提として知っていただきたいのは、施設の子どもたち自身が心に大きな課題を持っていることです。恵まれないというと、ただお金がないという印象になってしまいがちです。しかし、親の愛情を受けずに育てられた子どもたちは、心の面で恵まれていないため、健全な発達を遂げていないのです。ですので、モノを与えれば済むような問題ではなく、どうしたら傷ついた心を癒したり、愛情を満たしたりすることができるか考えなければいけないんです。また、一人ひとりの子どもたちの状況は全く違いますので、一概に正しいやり方はありません。このような状況に対応できるまで、子どもたちを取り巻く制度や環境が全く追いついていない。それが、一番の課題です。

そういった子どもたちは増え続けているのでしょうか?

増えていますね。今、都内の児童養護施設は、満員状態です。全国の施設の一割(56施設)は東京にありますが、少なく見積もっても、あと10施設は必要と言われています。児童相談所の職員が、虐待を受けている家庭に介入し、子どもを引き取ることができるように法律が改正されましたが、仮に子どもを助け出したとしても、彼らを預ける場所、施設がないんです。それが原因で、結局何もできずに、深刻になっていくケースも少なくありません。

企業が申し出る支援と、施設が受けたい支援が余りにも違いすぎる

企業と施設の想いの差についてお聞かせください。

企業のCSRは、広報的な要素も重要だと思いますが、何のためにやるのか突き詰めて考えると、困っている人を支援したいことだと思うのです。なので、それが押し付けになってしまっては意味がない。 例えば、あるサッカーシューズメーカーが「子どもたちの施設にサッカーシューズを贈呈する」というのは、わかりやすい支援です。ところが、施設にいる子どもたち、みんながみんなサッカーをするわけではない。お揃いを履きたいわけでもない。ですので、施設側も持て余してしまう。支援してくださるのは本当にありがたいのですが、そういった歯がゆい現状があるんです。 そこで私は、施設の人達はどうしたいのか、どうして欲しいのか、それを常に把握しておきたいと思っています。 現場で働いているわけでもない、子どもたちと同じ環境に置かれたわけでもない、当事者ではない私には、どれだけ彼らの気持ちに寄り添えるかが重要だと思っています。

一人ひとりに目を向けられるような体制を

一番力を入れているプロジェクトは何ですか?

施設を出ようとしている高校3年生と、施設を出てすぐの子どもたちの自立支援です。 普通の家庭で生活していれば、大学生になって一人暮らしを始めるといっても、困ったときには親を頼れるという安心感がありますよね。親がお金を送ってくれたり、わからないことがあればすぐに電話して聞くことが出来たり。 しかし彼らの場合は、それが何もないところにいきなり放り出されるわけです。準備も何もしていないのに、18歳になったからということで、その時点から衣、食、住、全部自分でやりくりしていかなければいけない。それがどんなに大変なことかという認識がない。それがすごく問題だと思います。

認識がないのは、施設側が?子ども側が?

世の中がです。18歳の彼ら自身の自覚も足りないと思いますが、そもそも日本の社会制度として明らかに不備だと思います。施設側は認識出来てはいるんです。子どもの行方がわからなくなってしまったとか、家賃が払えずに保証人の施設長に全部請求が来るだとか、退所後の子どもたちの対応もしているので。 具体的な予防策として、一人暮らし体験プログラムがあります。自立訓練棟というアパートのようなワンルームを用意し、そこで例えば一週間、一人暮らし体験をさせるわけです。生活費を渡して、買い物をしてくるとか、自分で寝る時間を調節するだとか。 ただ、日常業務だけでもたいへんな忙しさの中、このような自立支援プログラムを行っている施設はとても少ないです。その結果、子どもたちへ自立する意識を促すことができていません。 また、退所後もすべて施設の人に聞ける関係があるならいいのですが、人に頼るのが得意な子もいれば、そうではない子もいる。私たちは、環境においても、性格においても多様性のある子どもたち一人ひとりに対応できる、柔軟で力強いプログラムを目指しています。

目標を追いかけていれば自然と団体も良い方向に向かう

徹底していることや、活動へのモチベーションはどこからくるのでしょうか?

私が団体を立ち上げた目的は、企業と施設のギャップを解消することでした。そのためには、相手のニーズを把握することを重視していましたね。それを追いかけていれば自然と団体も良い方向に向かうという確信がありました。それは昔から変わらずに徹底していますね。 突き詰めて考えて行くと、最後は自分がどういうふうに生きたいか、だと思うんです。その答えが、私の場合、ただ単純に人から必要とされる人間でありたいと思っただけです。おいしいものを食べて、きれいな服を着て、自分のためにだけ生きるのではつまらない、誰かに必要とされている実感が欲しかったんです。

Word of power

●どれだけ彼らの気持ちに寄り添えるかが重要
●子どもたち一人ひとりに対応できる、柔軟で力強いプログラムを目指す
●最後は自分がどういうふうに生きたいか、だと思う

NPO法人ブリッジ・フォー・スマイル/理事長、林 恵子氏へのインタビューは以上です。

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