vol.138 村上なほ
NPO法人プリズムスケープフィルム代表 URL:http://prismscapefilm.com/
プリズムスケープフィルムは、アートを通じて人々のエンパワーメントをサポートするNPOだそうですが、エンパワーメントとは何ですか?
エンパワーメントとは、もともとその人が持っている能力を自覚的に開花させ、その結果として様々な自立へのサポートを行うことだと一般的には言われています。 私がエンパワーメントで一番重要だと思うことは、自分自身をいかに深く知っていくか、そしてその自分をどのように受け入れていくかです。
実際のサポート方法はどういったものなのですか?
写真を撮ることを通したワークショップや、セラピーを開いています。誰でも最初は、何に対してカメラを向けるか漠然としています。そこに何らかの客観的なアドバイス、サポートを入れる。「私って、こういうものをこんな場所から見ていたんだ。」など、この世界の中にどういった"美しさ"を見いだすか、一緒に読みといていくんです。単なる写真技術のワークショップとは違う、それぞれが自分の内側に入っていく過程を一緒に楽しんでいます。 油絵や絵画もやってみましたが、それらは自分の投影になりすぎてしまうんです。余りにも距離が近すぎて客観的になれない。しかしカメラは、ほどよい距離感が保てます。自分自身を発見するのに写真撮影は非常に有効です。
「なんでこう撮ったのだろう?」と、自分の写真を自分で読み解いていくことで、自分の内面を発見することが出来るんです。 心に問題を抱える子たちとワークショップをすることが多々あるのですが、彼らにとって写真を通じて自己発見するのは諸刃の剣(一方では大きな利益があるが、他方では大害を伴う危険があることの例え)になります。当然、自己の見たくなかった部分を見なきゃいけないことになる時もあるので。しかし、自分が素敵だと思えるものが撮れるというのは自分に自信が持てるということです。まず、自分を好きになって欲しいんですよね。
ワークショップで制作した作品を、展示することはあるのですか?
はい。昨夏と今春はタイ北部にある少数民族の村で、子どもたちに写真を撮ってもらいました。その子どもたちは人身売買、搾取的移住、エイズ、貧困などの問題に向かい合いながら暮らしていますが、ファインダーをのぞくことで、自分たちの目に映っている世界を悲惨なものではなく「すてきだな」と思って欲しいんです。 それは日本で行っているフォトセラピーと多少違いますが、基本的なところは通じています。 職業訓練をしてあげることや、経済的に支援してあげることは、私にはできない。でも写真を撮るということで、自分を好きになる、自分の周りにある世界を好きになる、その手助けはできます。 自分の生きている世界に"美しさ"を発見する。美しいと感じる力、それを感受する力は、自己肯定のためにとても大切だと思うんです。 子どもたちの撮った写真は「No!Trafficking Project」と称するイベントそして、日本で展示も行いました。 彼らの抱える問題は、すごく複雑ですが、知ってしまった以上、知らなかった自分には戻れないんですよね。衝撃を受けました。本を読んだり、勉強会に行ったりしている時、人身売買に取り組む団体「てのひら~人身売買に立ち向かう会」(リンク先http://www.geocities.jp/tenohira_trafficking/index.html) のメンバーと知り合いました。 ただ、知れば知るほど、どうやって次の1歩につなげばいいのかわからなかった。しかし、私にできることをひたすら考えてみたんです。 それはやはり表現、アートを通して一緒に考えていくこと、それが私らしくて自然だなと。今は自分の中で、それが少しずつ「形」になりつつあります。
その「形」にしたものを、誰に一番伝えたいですか?
タイの子供たち、成人男女に一番見て欲しいです。日本人に伝える以前に、タイの人たちがそれを見ることで、癒される作品や映画を作りたいと思っています。 それこそ私が彼女たちにできることだと。 "上から目線"であったり"かわいそうな人がいます"のような表現を、やりたいとは思いません。彼らと出会って感じたのは、私たち以上に強いエネルギーを持っているということ。それを彼ら自身に一番に伝えたいですね。
今後の、プリズムスケープフィルムの方向性は?
何かと何かが"対立する"のは、違いがあるからだと思っています。 自分と異なるものに対して、敵対視するのではなく、 その多様性をどれだけプラスに捉えることが出来るか。 その媒介になりたいんです。 「メディア」は複数形で、単数形にすると、「メディウム」になります。 意味は「中間に位置するもの」だとか「媒介」です。 全く異なるもの同士がいきなり向き合うと、恐れ合い、対立が起きる。しかし、そこに媒介するものがあると、違うものと出会った喜びをお互いに感じることができる。その「媒介」することが私たちのミッションです。異なるものとの出会いを喜び、楽しめる。そんな世界にしたいですね。
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Wrote 2009.09.06 << 前のインタービュー | 次のインタービュー >>