vol.108 辰野まどか

NOMAD global代表  URL:http://www.nomadglobal.jp/

こんにちは! テトルの本村拓人です!! 全3回にわたってお届けするNOMAD global代表、辰野まどかさんのインタビュー。今回はいよいよ最終回です。 切れ者のビジネスマンを集結させて、社会問題の解決に取り組むGIFT。社会貢献を行う団体にビジネスの考え方が必要であるという点は、これまでの取材でもたびたび言及されてきたことですが、ここまで徹底している団体はさすがにはじめてかもしれません。 これからのNPOやNGOのあり方に、新たな可能性を導くGIFT。そのダイナミックかつインテリジェンスな活動について、辰野さんにお話をうかがいました!

行政やコミュニティを巻き込んだビジネスモデルを考える

一週間の座学のあとには、どのような活動を行うのでしょうか。

GIFTの大きな目的は途上国で活動してる社会起業家であるクライアントを見つけて、異なるバックボーンを持つ22人が知恵を絞ってビジネスモデルを作り、クライアントの事業が投資対象になるようにサポートすることなんです。私が参加したときは、寧夏回族自治区という広い中国の中でも上から数えて3番目くらい貧困地域に行き、そこで活躍する女性起業家をサポートすることになりました。起業家の名前はヤンさん。ノーベル平和賞の候補になっていた方です。

ヤンさんのどういった活動がノーベル平和賞の候補になっているのですか?

4、5年前に、ワンガリ・マータイ氏というケニア人の女性がノーベル平和賞を受賞しましたよね。彼女は荒れ地に木を植えていき、ケニアを緑の豊かな見違えるような国に変えました。ヤンさんも、ワンガリ・マータイ氏と似た活動をしているんです。 ヤンさんは都会の出身にも関わらず、田舎のさびれた地区にやってきて、どんどん木を植えました。その結果として畑が生まれ、牧場が生まれ、ワイナリーが生まれたんです。近くを黄河が流れているので、その水がちゃんと循環するシステムを作ることで雇用を生み、農協作りにも関わりました。女性がほとんど職につけないような地域で女性に職を与えて、地位の向上も図ったのです。

しかし、そのエリアは、貧しさからはまだまだ抜け出せないということですか。

そうなんです。それで実際に彼女と会って話しをしてみると、地域の生活環境を少しでも向上させたいというとても強い思いを持ってらっしゃいました。差別を受けている少数民族の女性の地位を向上させるためには教育が必要であると考えていて、教育機関を作りたがっていました。また、ちゃんと職に就かせて、賃金も十分に保証しなければならない、と。 GIFTの一週目は座学でしたが、続く二週目は現場に出ます。現場へ行き、クライアントであるヤンさんや寧夏に暮らす人などの話を聞きながら、ビジネスモデルを構築するんです。ここで難しいのは、ただ単にお金が儲かるようなビジネスモデルを作ればいいわけではないこと。政府やコミュニティを巻き込み、すべてにおいてよい循環が生まれるような仕組みを考えなくてはならないんです。

ビジネスをやるためには、そのための準備が必要

ヤンさんに対しては、どのようなモデルを考えたのですか?

私たちが注目したのは、ヤンさんのワイナリーから生まれるワインです。中国のワインはほとんど輸出されず、国内で消費されています。味のほうは......、あまりよくないんですね。それを知っていたので、ヤンさんのワイナリーにもあまり期待していませんでした。ところが、想像以上においしかったんですよ。それでまず、このワインをブランドとして成立させ、売るワインの種類も増やしていくというプランを立てていきました。 また、ヤンさん自身、エコに非常に興味を持っていたんですね。寧夏に住んでいる人々の生活は貧しいのですが、環境は非常に豊かです。だったら、エコツアーなどが企画できるのではないかという話にもなりました。

しかし、よいビジネスモデルを作っても、主体となるヤンさんがうまく運営できるかという課題は残りますね。個人の能力差もあるでしょうし。

おっしゃるとおりです。ヤンさんは組織でワイナリーとエコロッジ、農業を運営しているのですが、重要な役職は彼女の身内で固められてしまっているんですよ。たとえば、彼女のお母さんとか。それで、そういった人たちにも話を聞いてみたのですが、あまり経営のことなどには関心がないんです。これではうまくいきません。だから、ビジネスモデルを作るだけでなく、ヤンさんと話し合って納得してもらいながら、組織作りも行うことになりました。 それで、GIFTのおもしろいところは、この先があるということなんですね。たとえば、ヤンさんという女性がどれほど心がきれいで、ビジネスモデルがいかに優れていても、なかなか投資家の心を動かすことはできないんです。彼女がいかに熱心に話をしても、投資家がうなずく数字の話ができないんですよ。その部分に私たちが入り、投資家を口説き落とす。プログラム最後の日には、投資家に対してそのプレゼンを行うわけです。

ははぁ。とんでもないですね。それはすごそうです。

優秀な人が集まっていたので、出来上がったビジネスモデルは切れ味のあるものでした。彼らはまた、現実的な数字を語りながらロジカルに話すこともできるんです。そしてプレゼンの当日、一流ホテルに投資家たちを招いて、GIFTのメンバーとヤンさんも集まりました。GIFTのメンバーは、みんなビジネススーツをビシッと着こなして、ビジネス英語で会話します。ところが、ヤンさんはその場にポロシャツとトレーニングパンツ姿で現れたんです。ビジネスシーンで飛び交う英語も、もちろん使えません。残念なことですが、それではやっぱり投資家とビジネスの話をしようにも通じないんですよ。寄付ならわかりますが、ビジネスの話をするのはやっぱり難しい。

多文化共生を実現するNOMAD(遊牧民)でいたい。

GIFTはその両者の言葉を翻訳をする役割を果たしているわけですね。

そうですね。私自身、この手の活動には、それこそオタクのように参加してきていたのですが、結局どの団体も同じ壁にぶつかってしまう、つまりビジネスモデルをうまく作り、ちゃんと収益を獲得するところまで落とし込むということができていなかったんですよ。ビジネスの世界に繋がれないんです。 いいことをやっている素敵な人たちがいるのに、うまくいかなかったり。国が金銭的な支援をしても、ビジネスとして立ち行かなかったり。その突破口はなんだろうと思ったとき、NPOやNGOと、最前線で戦うビジネスマンに距離を感じていたんですよ。社会貢献の志を持つ人は、経済が優先するビジネスに対して反発を持っているし、ビジネスエリートも社会貢献という響きにうさんくささを感じていたりして。 ですが、この両者は互いに反発するものではないんです。互いが必要としていて、交差することで新しい価値を生み出していけるものなんです。GIFTはそのきっかけ作りをしているんですね。

なるほど。わかりました。その学びを得た辰野さんが、今後個人的に取り組もうと思っていることがあったら、教えてください。

GIFTはひとつの「人材育成×ビジネス×NPO」スタイルを見せる興味深い団体だと思います。今後も社会投資ファンドを作るなど、ボーダレスな発想と共に、進化していくようです。私自身は、国際協力オタクから始まり、政府、民間企業、国連、メディアなど様々なセクターにかかわり、アジア、アフリカ、ヨーロッパ、オセアニア、アメリカと現地に触れる旅をしてきました。そういった過去にはそれぞれ分断されていたセクターや、国籍や文化を掛け合わせて、質の高いエネルギーの生まれる化学反応を起こしたいと思っています。 かの昔、シルクロードは、好奇心旺盛なノマド達が、多民族を繋げ発展したと言われています。現代のノマドは私の周りにもたくさんいます。そういう人と_がりながら、NOMAD globalのコンセプトである「平たい地図を丸い地球儀に~We are all connected~」に向かって活動し、発信していけたらと思います。

Word of power

●強い思いをもってらっしゃいました
●オタクのように参加してきた
●質の高いエネルギーの生まれる化学反応を起こしたい海外発のものであることが悔しい

以上で、辰野氏のインタビューは終了です。

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