vol.017 渡辺パコ / Watanabe Paco
NPO環境リレーションズ研究所監事 URL:http://www.env-r.com/index.php/
1960年
東京生まれ⇒東京都立西学校卒⇒学習院大学文学部哲学科卒
1985年
採用広告プロダクション「メディックス」入社。コピーライター、クリイティブディレクターとしてリクルート社の採用媒体の広告、入社案内、会社案内等を制作
1988年
UPU社はじめ各社よりコーポレイトコミュニケーション媒体の制作を受託
1990年
有限会社水族館文庫設立
1994年
出版物制作事業を開始。雑誌等への執筆活動
1997年
グロービスマネジメントスクール(GMS)講師(コミュニケーションとリーダシップクラス)「コミュニケーションデザイン」を事業ドメインとする知恵市場スタート
1998年
知恵市場事業化
1999年
ネットビジネスへのコンサルティング業務を開始
2000年
GMS ロジカルコミュニケーションクラス講師環境報告書制作に関するコンサルティング・企画業務を開始
2002年
GMS クリティカルシンキングクラス講師
2003年
環境経営の分野に本格的に取り組むライフデザインの分野に取り組む企業向けにロジカルシンキング研修などを提供。
2004年
亜細亜大学経営学部 非常勤講師(ロジカルシンキング)
2005年
NPO法人 環境リレーションズ研究所 監事
2006年
知恵市場をブログポータルにリニュアル
2007年
環境リレーションズ研究所と共同で植林事業「ヤマガラの森」を開始。
詳しくは→
【NPO環境リレーションズ研究所】http://www.env-r.com/index.php/
【プレゼントツリー】http://www.presenttree.jp/
【知恵市場】http://www.chieichiba.net/
【水族館文庫】http://www.suizockanbunko.com/
こんにちは! テトルの本村拓人です! 今号はNPO環境リレーションズ研究所監事、渡辺パコ氏のインタビューをお送りいたします。 一歩ひいた視点から繰り出される戦略的ソリューションを次々に打ち出す渡辺パコ氏曰く、「どんな組織も持続可能な成長を目指すうえで、どこからお金が入り、人をどのように巻き込んでいくかという『仕組み作り』が非常に重要」と氏は語る。私はこの取材を通して社会起業家に必要な資質をまた1つ見つけた気がした
pacoさんは多くの本を出版されていて、また、グロービス経営大学院で、ロジカルシンキングを教えられています。戦略的に、かつロジカルに事業戦略を練るところがpacoさんの強みですよね?
今、僕が力を入れていることのひとつとして、国や市などの行政と市民、それも個人や企業、非営利団体をどのようにつなげていくかというテーマがあります。繋ぐ人というか、まさに手をとらせる人。
環境問題への取り組みという領域で考えると、テクノロジーという点では環境ソリューションは既にいろんな手段が確立されています。しかしある自治体では、テクノロジーの開発そのものを支援することが政策になっていた。なので「この話は、市でやってもおそらく効果がないですよ」と助言させていただきました(笑)。
それよりも、すでにある手段をどうやって横浜市内で使うか、という仕組みを作ろうとしている会社に補助金を提供したり、ビジネスモデルやプラットフォームを作るための補助金を何割だしましょう、というタイプの支援の仕方はすごく大切です。環境に良い物を作るための基礎研究費にお金を使って新たなものをつくるより、既にある物が使いこなされていないのですから、そっちを使い切ることを考えたほうが、効率はいいのです。
アウトプットとして形になるような、例えば特許の開発には行政もすぐにお金を出したがる(というか、出しやすい)のですが、プラットフォーム作りのようなソフト面になると形として残るわけでもありませんからね。だけど、本質的に重要なのは仕組みづくりやプラットフォーム作りだという時代に入っているので、それは環境や途上国支援にしても同様の事が言えると思います。
フェアトレードもそうですが、途上国で作られた商品をどこで売るのか? プロモーションはどのように行うのか? などで非常に苦労すると思うんですが、まずその前に、途上国の人の感覚で作ったものが日本人の好みや品質に合わなかったりするんです。このような問題を解決するためには現地にスタッフを派遣して、ニーズにあった商品作りをする必要がある。技術そのものより、それをどうやって社会やマーケットにフィットさせるかという方法論や細かな手間の積み重ねのほうが重要なんです。
また、売上げがどのように現地に還元されているかというロジックも伝わるように開示していかないと生活者の購買欲をそそることはできません。要するに先進国、途上国間でお互いに努力をしている、という結果が売上げに反映されるわけです。同じ500円のハンカチでも情報の開示の仕方で生活者にとっては非常に価値が高くなるわけです。商材として品質もデザインもしっかりしていて、さらにそこにドネーション(寄付)をつけて初めて売れるわけですよね。
NPO環境ソリューションズ研究所でプロデュースされている、プレゼントツリーを始められるまでのいきさつをお聞かせ下さい。
NPOプレゼントツリーに関しては、僕が作ったスキームではなくて、NPO環境リレーションズ研究所のスタッフが発案して、スキームを作ったんです。もともとは、カリマンタンで植林活動をしている団体がありまして、そことの連携から始まっています。植林活動をしているんだけど寄付がなかなか集らなかった。どうやったらお金が集るんだろうと考えた結果「証書にして、個人に木を買ってもらうのは素敵だよね」ということで始めたプロジェクトになります。
NPO法人としての環境リレーションズ研究所は寄付で運営のすべてをまかなうという発想がなく、ビジネスとして経営をしているNPOという認識が良いかと思います。NPOだから、税の考え方が一般の法人と異なるので対象にならずに済むわけなので、商行為で集めた利益を次の環境事業に繋げていくことがやりやすい。お金がまわることで環境が改善されていくのはおもしろいと思って僕も参加したわけです。このあたりは理事長の鈴木敦子とも考えが一致しているところで、従来の市民活動のためのNPOとは、雰囲気がけっこう違います。
今は監事というタイトルで年に1回の監査をやることが役割ですが、それ以外はNPO環境リレーションズ研究所をプラットフォームとして使っている感じで、NPOだからこそやれる事を、そのプラットフォーム上にのせています。
NPOのメリットとは?
プレゼントツリーは木を買っていただいて、そこに購入者の名前などを書き込める名札を一本一本つけるんですね。売買行為契約ということになると、例えば、何に対する対価なのかが問われます。木の所有権を渡すスキームもありますが、もし木が枯れたらどうなるのか? 成長して伐採が必要なときに、買った人の権利はどこまでかといった点を考える必要が出てきます。
そこで、全部寄付という形で参加していただき、活動全体に賛同しているという位置づけにしました。寄付を集める受け皿としてNPOは最適です。木の所有権はお渡ししていませんが、NPOが所有することが目的ではなく、リスクをお互いに小さくすることが目的です。木が育つ30年後、50年後に、寄付者とコンタクトが取れていれば木を切るかどうかという事はお話して、どうしても切りたくないという方がいらしたら、当然木は切らずに残します。寄付者が亡くなってしまう状況も必ずありますし、寄付してくださった方とコンタクトを取れない状態が続いた場合は、私たちの方で管理するという柔軟なスキームでサービスを行っています。このような活動を運営・管理する場合、やはりNPOだと非常にやりやすいわけです。
行政と企業、NPOをつなぐことによって、企業も自社で完結した環境対応だけでなく、より効果的な環境適応ができるのに、そういう視点が乏しい。こういった点まで含んだコンサルティングになると、それなりの時間はかかります。だからこそ20代、30代という次の世代を担う方々にその辺までを含めて育成できればと考えています。
それはNPO環境リレーションズ研究所でやられるわけですか?
そうですね。社内スタッフの育成が主な狙いで、そこに一般の方々、それこそこのメルマガの読書の方々にも参加してもらって勉強する場をつくりたい。あくまでも、内部教育の中に、他の人も参加して下さい、という位置づけです。仕組みつくりでお金も物もソリューションもハッピーも回す考え方を支えていきたいなと思っています。是非参加してみてください。
仕組み作りがやはり重要ですね。プレゼントツリーの話にまた戻りたいんですが、南八ヶ岳の里山の土地約1200坪分をpacoさんご自身で購入されているんですよね?
現在は共有名義になっていますけどね。私の方で全額出資しています(笑)。2006年の10月くらいに、丁度私の別荘の裏にある山の伐採が始まったんですね。そこに「きこり」さんが伐採の為に来ていたので「伐採なんか始めてどうしたんですか?」と聞いてみた。200~300坪の土地のマツクイ被害のアカマツを伐採していたんですね。
200~300坪だと程よい広さなので、おそらく土地を買ってもたいした額にはならないだろうなと当初は思っていました。そこで、土地の地主さんに会わせていただき、いろいろと話を聞いていると200、300坪なんてとんでもなくて、裏山の上の方まで伐採を始めていたんですね。地主さんは「1200坪くらいですよ」と言われたものだから、こっちとしては愕然としたわけです。
その土地の地主さんもかなりお歳を召されている方でしたので、「何か使う目的があれば、土地を売りますよ?」となったわけです。正直1200坪もの広さの土地を購入する必要もなかったので「買うつもりはありません、ただ、貸して欲しいのですが」と何度も何度も借りたい旨をお伝えしました。当初1800万から始まって、最終的に「いくらなら買いますか?」という話になったので「700万円くらいだったら」とお伝えしました。
まさかあの頑固なおじいさんが値下げ交渉に応じるとは思ってもいなかったのですが、値段として不当に高いわけでもないので土地を購入することになりました。一応現在は全て私の方で全て支払ったことになりますが、形としては私がNPOに貸しているということになります。
現在までに200万円くらいまで寄付が集っていますので、それはNPOの分の寄付行為としていずれ私の方に返金される予定です。ただ、熊本やスリランカでは違ったスキームでプレゼントツリーの企画が発動しています。グロスの額は現在何千万単位で動いていますよ。その中から余剰金を出していって最終的に土地代の投資額を回収するという計画です。もちろん、動く金額はあっても残る額は小さいので、回収するのはかんたんではないですけどね。
プレゼントツリー以外で今年実施されたプロジェクトについてお聞かせ下さい。
今年プレゼントツリーライブを実施しました。薬師寺で行われたライブに対してオリンパスさんからスポンサードをしていただき、そのお金は全額ではないんですが、熊本の植林に使われます。細かい調整を行った後、NPOにもお金を残しながらも、他のプロジェクトにも再投資しようと考えています。
プレゼントツリーのフレームでやりながらどう余剰金を出していくかというのが今後の検討課題でもあります。余剰金がでればいろいろと展開できるわけですからね。また、今回は里山の土地は私が全額負担しましたが、次以降はレンタルという前提で、そこは見本林という構想で実施していきます。ただ、私たちも一つくらいは所有しましょうということで今回土地を購入したことは意味があると思います。植林の活動をやっているのに「お宅は一つも土地をもっていないんですか?」なんて言われかねないですから(笑)。
また、里山の1200坪の土地への植林活動は今後全国へ展開する上でよい見本になります。そういった戦略を考えても購入する意義はありました。次回以降のスキームとしては、まとまったお金を集めて、土地を20年~50年のスパンで契約更新しながらプロジェクトを進めていこうと考えています。一つのプロジェクトで、大体1000坪くらいあれば100万円くらいの余剰金を残す事は不可能ではないので、それが定着していけば私たちがハンズオンでやるのではなく、地域ごとの植林活動をやっていただくというスキームですね。
また、資金調達に関していうと、できるだけ企業からのまとまったお金を集めれば具体的に活動自体は運営できますので、後は今回できたモデルを企業へ提案していく事がタスクになってきます。今回先行投資をして里山の土地を購入してプロジェクトを始めたのも結局は今後に繋がるモデルつくりの基点になるわけですから、説得力にもつながります。
●『仕組み作り』が非常に重要
●繋ぐ人になりたい
●本質的に重要なのは仕組みづくりやプラットフォーム作りだ
paco氏のインタビュー(前編)は以上になります。
次号も引き続き渡辺パコ氏のインタビュー(後編)をお届け致します。
NPO環境リレーションズ研究所の商品、事業モデル、そして、収益構造に迫ります。
みなさま、お見逃しなく!
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Wrote 2009.06.16 << 前のインタービュー | 次のインタービュー >>