vol.018 渡辺パコ / Watanabe Paco

NPO環境リレーションズ研究所監事  URL:http://www.env-r.com/index.php/

1960年
東京生まれ⇒東京都立西学校卒⇒学習院大学文学部哲学科卒
1985年
採用広告プロダクション「メディックス」入社。コピーライター、クリイティブディレクターとしてリクルート社の採用媒体の広告、入社案内、会社案内等を制作
1988年
UPU社はじめ各社よりコーポレイトコミュニケーション媒体の制作を受託
1990年
有限会社水族館文庫設立
1994年
出版物制作事業を開始。雑誌等への執筆活動
1997年
グロービスマネジメントスクール(GMS)講師(コミュニケーションとリーダシップクラス)「コミュニケーションデザイン」を事業ドメインとする知恵市場スタート
1998年
知恵市場事業化
1999年
ネットビジネスへのコンサルティング業務を開始
2000年
GMS ロジカルコミュニケーションクラス講師環境報告書制作に関するコンサルティング・企画業務を開始
2002年
GMS クリティカルシンキングクラス講師
2003年
環境経営の分野に本格的に取り組むライフデザインの分野に取り組む企業向けにロジカルシンキング研修などを提供。
2004年
亜細亜大学経営学部 非常勤講師(ロジカルシンキング)
2005年
NPO法人 環境リレーションズ研究所 監事
2006年
知恵市場をブログポータルにリニュアル
2007年
環境リレーションズ研究所と共同で植林事業「ヤマガラの森」を開始。

詳しくは→ 

【NPO環境リレーションズ研究所】http://www.env-r.com/index.php/

【プレゼントツリー】http://www.presenttree.jp/

【知恵市場】http://www.chieichiba.net/

【水族館文庫】http://www.suizockanbunko.com/

こんにちは! テトルの本村拓人です! 今号はNPO環境リレーションズ研究所監事、渡辺パコ氏のインタビュー(後編)をお送りいたします。 非営利セクターに足りていないものがある。資金・人材・情報。さらに、組織・団体を運営する為の『仕組みづくり』や経営ノウハウも十分ではない。極論ではあるが、例えば、その人材の部分に着目したとき、大企業で働いているビジネスパーソンがNPOで働く光景は考えにくい。だが、paco氏が言うように、ワークライフバランス(私生活と仕事の適度なバランス)がソーシャルベンチャーやNPO業界全体の人材問題を解決する大きなヒントとなるはずだ。

環境問題を取り扱ったNPOで、これ程まで戦略的にやられているのを知れて本当にうれしいです。さて、NPOやこのような植林活動をやられている圧倒的なおもしろさとはなんですか?

一つは、NPOという時点でクリーンに見られるところは純粋にやりやすいですね。会社で社会的に意義のある事をやろうとするとどうしても「本当に儲かるの?」と言われてしまうわけです。NPOの場合、別にそこまで説明する必要がなく、トントンまでいくんですよというレベルで説明すればよいわけなので、その辺は株式会社と較べれば非常に気楽ですね。環境の事をやっていると「儲かるの?」ということを必ず2番目に聞かれますからね。

また、行政の方々とお仕事をする時はNPOの肩書きを持っていると楽というよりも、こちらの居心地が良いんですね。現在行っている横浜市とのプロジェクトもNPOの肩書きがついていると誰が見ても疑わないわけですね。例えば、株式会社〇〇の渡辺PACOですなんていうと「なんだこの人は?」といった事になってしまいますからね(笑)。要するに程よい肩書きといったところはNPOのメリットです。

さらに、無償で労働提供してもらっても堂々としていられることもメリットに入るでしょう。こちらの負担を最小限にしながら、最大のアウトプットを引き出す潜在性をもっているわけです。そのためにもコンセプトやビジョンは明確に伝わりやすくする必要はあります。交通費も、労働賃金も、食事代も出さないというスタイルはNPOでないとできません。もちろん、これは、やってくれる相手が事情をきちんと納得してくれていることが条件になることはいうまでもありませんが。

  PACOさん自身、NPOでの活動が自身の本業の仕事にもつながっているという側面からすると、NPOという別のカードで自分をアピールできるということですよね?

そうですね。しかしあくまでも、NPOでやりやすいものに関してはNPOとして活動しています。私自身グロービス経営大学院などで講師活動もしていますから、例えば一日30万円で講師をやりますというと、「NPOでそんなにとるの?」なんて言われてしまいます。単純に私がNPOだけの人間だと30万円の講師料はとれませんが、営利と非営利という身分をかけ持つことで営利のほうでこれだけやれる人だから、NPOでも本業と同じ、またはちょっと値下げしたぐらいの講師料でやってもらおうという心理が働くわけです。こういう流れの中で、NPOが受け取る報酬の水準が上がっていくともっといいですね。

また相手との関係の中でNPOか株式なのかを分けて考えています。例えば、企業がCSRをやっていきたいとなればNPOでいったほうが企業側の私に対する仕切りも低くなります。一方で、環境の研修をやりたいという人に対しては、NPOの看板で活動するよりも、普通の企業研修をやる人間として行った方が効果的です。私としては頭を切り替えて使い分けているというわけではありませんし、株式会社では儲からない仕事はやらないのかといえば、まったくそんなこともありません。環境分野以外のことは、それは環境のNPOにははまらないので、会社としてやります。その逆もしかりで、本業の方でいただいた仕事もNPOの方がよければNPOでやります。

あらためてお聞きしたいのが、PACOさんがこの社会活動をやめられない理由とは何でしょうか?

僕は、基本的にはお金にあまり興味がないんですね。もちろん、自分で使いたい、買いたいものも一杯ありますが、自分が使いたいお金が確保されているのであれば、それ以上のお金を欲しいとは思いません。その額が多いのか少ないのかはなんとも言えませんが、僕がやっていきたいと描く生活があって、時間のゆとりも欲しい。そういった環境を築ける最低限のお金は稼ぎます。その為には現状のNPOの活動だけでは駄目ということも分かっています。しかし、会社をもっと大きくしてお金を儲けたいという話ともまた違うわけです。

具体的にいうと、スケジュールは常に余分にあけておいてあります。頂く仕事でも、お金のためとは言いませんが、お金中心で考えている仕事に関してはある程度以上はやりません。断ってしまうケースも多々あります。身動きできないくらいまでスケジュールをパンパンにしてしまうと例えば、この取材も受けられないわけですよね。必ず余裕の日数をとっておいて、月何日かの研修をやっていて、現在ではロジカルシンキングの講義が一番の稼ぎ頭なので、ある一定以上の日数はやらないというマネージの仕方です。

単価の高い仕事ができる人や、不労所得とまでは言わないにしても、何らかの仕組みがあって、ある程度自動的に稼げる仕事を持っていけば、こういうやり方で仕事ができます。個人であれ、企業であれ、現在こういう収入の仕組みをしっかり作れる能力がある人が評価される時代になっていますよね。幸運にもこういうポジションに着くことができた人は、余力が少しでもあれば、会社を大きくするということだけでなく、その時間をNPOに参加するなどして自分自身を豊かにしていくことに使うというのは重要です。

もちろん、生活に必要なお金というのは個人によって違いますけどね。今は、お金が儲かればよい、セレブになりたい、どんどん会社を大きくしたいといった事が目標になっている人が多いので、それは本当に大きな会社、大きなお金が必要なのかということを自身の価値観と一度照らし合わせてみるのも必要です。ただ、忙しいあまり、考える時間がそもそもないという方々もいるでしょうから、時間をつくるところから始める必要があるかもしれません。一つの会社である程度の仕事とお金をもらえるのであれば週2日でも3日でも仕事とは違う分野や活動に使うというのが今後の一つの生き方のモデルになっていくと思います。

週末に時間があるから興味のあるNPOや、自分の専門スキルを欲しているNPOに参加するのもよいかと思います。ゴミ拾いの活動に行くというのも良いんですが、読者のあなたが例えば会社で経理の能力をもっているのであれば、ゴミ拾いよりも経理の能力のほうがあなたが持っている専門性は高いわけです。会計をやりたくてもなかなかやれないNPOに対して、あなたの存在意義は増すわけですよね。このような発想から、例えば、経理をできる人が、自分の会計事務所とは別に、NPO専門の会計事務所を設立するのも、おもしろいですね。

環境リレーションズ、また組織・人事コンサルタントという多彩な肩書きを持っていることも含めた視点で、現在のNPO、NGOの大きな課題とはなんでしょうか?

全体的にみて、一番足りないのは先ほどから申し上げているように、仕組みを作れる人、または、そのような発想をできる人がこの業界には圧倒的に足りていないということですね。それから、儲けているところと儲からないかもしれないところをつないで、いずれ収益をあげるといった働き方のできる人も少ないと思います。戦略的な仕組み作りをできないといけないと思います。現状では多くの団体の経営ノウハウやビジョン、または商品に対するアイデア自体が私から見て、やあり戦略性に欠けていると思います。

いくつかのステークホルダーが今何をもとめているのか? この団体、企業には〇〇を提供して、ある団体とこの団体をつなぐと水(お金)が流れるようにしていく発想をもっていかないとそもそもお金が動くビジネスにはなりません。本当にビジネスクリエーションの発想がNPOにはもっともっと必要で、これはもうベンチャービジネスと全く同じ発想ですよね。

環境リレーションズのビジネスモデルと商品について教えてください。

僕たちはリレーションズをテーマに組織やプロジェクトを運営しています。ですので、仕組み作り、つながり作りが文字通り商品になります。だから、つながりと仕組みが作れることで別の団体、行政、企業で持っている商品の価値が上がるという考え方で、今までは100円の価値がある商品を100円もしくはそれ以下の価格で取引きしていた流れが、企業や行政といった様々なつながりを持たせることで、同じ商品を90円でも買わないと思っていた人が、1000円でも買ってくれるといった世界を作りたいというのがビジネスモデルになります。

そこから、100円を1000円にできたんだから、300円から500円をうちの団体が頂きます、というのが僕たちの収益構造になります。とはいえ、現段階ではこういう仕組み作りをめざす、というところまでで、多くの事例がつくれているところまでは行けていないですけどね。

NPO・NGOの方々もおそらくこのビジネスモデル、商品、収益構造作りといった一連の仕組み作りに対するニーズはあります。私は他にも、行政や地域性の高いプロジェクトはかなりやってきているので私のコアコンピタンスだと思います。環境ビジネスにダイレクトにつながるプロジェクトだと代表理事の鈴木敦子さんの方が詳しいですね。彼女は環境系のビジネスの営業をずっとやってきていますので経験値からみても彼女の方が専門性はあります。要するに、私と彼女とではバックボーンが全く違うので、組織を運営していく上でも非常に効果的にその相違が作用しています。それぞれネタや畑や分野の違う人脈を持ち寄って「こんなことができるのでは?」なんて発想しあえるのは非常に幸せですね。

さて、もう少しマクロな視点でPACOさんのご意見をお聞きしたいんですが、今叫ばれているCSR、大手企業が次々に環境報告書などを通して生活者にCSRのアピールをしています。ただ、どの企業も横並びなCSRに陥りがちだという批判的な意見もある中で、企業のCSRにもかかわりを持っているPACOさんのご意見をお聞かせください。また、本質的なCSRとは具体的にどのような活動の事ですか?

CSRについて話を進めるときにまず注意しなければならないことは、「サステナビリィティ」という視点を強調しすぎるのは無理があると考えています。そうは言っても、サステナビリィティという概念は既に走りだしているので、サステナビリティ、イコールだめ、ということではありませんが、問題点と課題は理解しておく必要がある。サステナビリティとは、持続可能ということですが、リアリティをもって考えるとグローバルウォーミング、環境破壊、貧困が広がっている世界で、我々はサステナビリィティという概念すら持ち得ないぐらいの「持続不可能な」世界になっているわけです。

まして一企業がサステナビリティを追求するというのは、よく考えると、夢物語に近い。要するに、企業は本質的な社会問題のソリューションを持っていないだろうというのが私の考えです。ジャパン・フォー・サステナビリィティというNPOがあります。私も仲良くさせていただいている団体んですが、サステナビリィティに関する報告書を読んでもどうも夢物語になってしまっているんです。「こうあるべきだ」というビジョンがどうしてもユートピアに見える。僕たちの子供のころ、漫画の冊子に「未来はこうなる」とか、「空中都市」というテーマで、車が空を飛んでいたり、みんなテレビ電話を持っていたりという絵が描かれていたのですが、ジャパン・フォー・サステナビリィティの報告書を見てみると、人間性を重視した、コミュニティ・オリエンティドなばら色の世界が描かれている。僕の目には、時代に合わせて意匠を変えたユートピアの絵に見えるのです。

例えば、人と人とはこのくらいのコミュニティでとても仲がよくて、争いごとがなくて、戦争がなくて、というようなラブ&ピースな世界が描かれている。ヒッピー文化を連想させるような言葉がかなり入ってくるんですね。グローバリゼーションや弱肉強食の世界、また、それによって発生する貧困や、弱者の世界が解決されているようなすごく美しい世界になっているんですが、人類史上おそらくそのような世界は未だかつてなかったと思うんですね。

自分の子どもや臓器をお金の為に売るような社会は、ひどすぎるよね、だったらそこを「なんとか自分の仕事で家族が食べていけて」、また、「がんばれば子供が学校を出られるようにする」というぐらいまでが、僕らの世界で到達できるせいぜいで、それだけでも本当に大変なのではないのか。この程度ではとてもサステナブルとは言えません。僕は結構リアリストなので、世界から「貧困や戦争がなくなって」という未来予想図はどうしても描けないんです。貧困問題はどうしても残ってしまう問題であって、あるレベルまではなんとかしようよという現実路線しか描けないと思っていました。

Word of power

●程よい肩書きといったところはNPOのメリット
●一番足りないのは、仕組みを作れる人
●企業は本質的な社会問題のソリューションを持っていないだろう

渡辺paco氏のインタビュー(後半)は以上になります。

次号は今最も注目を集めている日本の社会起業家、NPOフローレンス代表、駒崎弘樹氏のインタビューをお送りいたします。

なぜ今駒崎氏が世の中の社会起業家の中で最も注目を集めているのか?その答えが次号からのメルマガで明らかになります。駒崎氏が目指すビジョン、または、氏の経営哲学でもあるプラットフォーム構想についても深くお聞きした。

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