vol.030 寺井元一 / Terai Motokazu

NPO法人KOMPOSITION代表理事  URL:http://komposition.org/

1977年9月13日
兵庫県生まれ
1984年
父親の転勤で沖縄県那覇市に転居。3年間過ごす。網膜剥離発症。
1990年
私立灘中学に入学。落ちこぼれる。アトピー性皮膚炎発症。
1995年
阪神大震災に被災。ゼロから勉強をはじめる。
1996年
私立灘高校を卒業。1年間の浪人生活に突入。
1997年
早稲田大学政経学部に入学。学生時代3年間、代議士事務所で学生スタッフとして従事。WEBの企画立案などに関わる。
2001年
早稲田大学院政治学科に入学。若者の価値観と投票行動の関連を研究する。 同年、学生団体kompositionを設立。
2002年
NPO法人komposition-standard(後にKOMPOSITIONに改称)を設立。
2004年
早稲田大学院政治学科を中退。のち、現在に至る。
詳しくは→ 

【ALLDAY】http://alldaymag.com/

【LEGALWALL】http://legalwall.komposition.org/

【寺井氏個人Blog】http://d.hatena.ne.jp/teraiman/

こんにちは!! テトルの本村拓人です! ! 今号もNPO法人KOMPOSITION代表の寺井元一氏のインタビューをお送りいたします。 内閣府/国民生活局が報告したデータによると、年間で非営利セクターに(宗教法人や政府系外郭団体等も含む)流れるお金は約28兆円にのぼるといわれている。その中で寄付金、補助金、会費等で集められるお金は約8割の23兆円。また、事業収入(博物館や美術館の入場料収入・宗教団体へのお布施等含む)は4兆 8000億円。この数字だけを見るとやはり事業から資金を獲得している非営利団体は非常に少ない。

欧米では既に盛んになっている行政・民間企業の連帯型パートナーシップによる非営利団体の活性化が社会的に大きなムーブメントとになっている。その際に必要なのが『対等』という意識を両者間(非営利セクター側も、行政・民間企業側も)が持つことである。可視化された非営利団体の大きな剣が行政・企業との交渉の場で大きな役割を担うはずだ。

さらに、寺井氏が取材の中で述べられたオープンソースを駆使して築きあげられた『ファイヤーフォックス』の事例はNPOの経営を考える上で非常に大きなヒントになりうる。以前、フローレンスの駒崎氏が紹介してくれた『KABOOM』というNPOたが、同団体はオープンソースの基を『公園』と位置づけ、この箱の中に行政や企業、さらには市民までをも巻き込んで『公園』というエンターテイメントを築きつづけている。作られた公園はやがて地域の人に利用され、隣人とのコミュニケーションを楽しむ場所や子供が純粋に遊ぶ場所など、利用者それぞれのNeedsを満たすだけでなく、利用者によって新たな活用方法が生まれる。NPOが他者を巻き込む際、この仕掛けてとなるオープンソースをどのように選択し、運営させるかがこれから重要な鍵となるだろう。

その他に寺井さんがNPOをはじめられた動機はありますか?

三つ目は、これは最近になっての理由で、インターネットの世界で起きていることと関係があります。それは何かって言うと、リナックスやファイヤーフォックスのようなソフトが開発されている、オープンソースという潮流です。もともとソフトウェアの世界では、いわゆる企業が資本を集め、社員を囲い込む形で何かしらの開発をやって製品をつくってきたわけです。

ところがインターネットで繋がることによって、世界中の大量のプログラマー達が、ボランティア的に各自思い思いに開発に関わるという開発形態が実現して、そこからリナックスがうまれました。マイクロソフトという巨大組織が作ったウィンドウズに匹敵するようなOSをつくったわけです。

同じようなやり方で、インターネットエクスプローラーに匹敵するようなファイヤーフォックスというブラウザーソフトが生まれてもいます。匹敵というか、インターネットエクスプローラーと比べたら、今ではファイヤーフォックスのほうが高く評価されてると思いますね。

このオープンソースの潮流というのはNPO的だなと思ったんです。例えば正社員を数百人雇っている会社に比べたら、競合するNPOにはお金はないからそんなに社員を雇えない。だけど週に二日間、もしくは一日だけ、もしくは半日だけでも手伝ってくれる支援者が数千人とか数万人いますとなったとき、NPOのほうがヒューマンリソースがあるということになる。

マイクロソフトは莫大な利益を生み出したし、もちろんウィンドウズをはじめとするソフトによって世の中を変えたけれども、マイクロソフトにできないことをもしかしたらリナックスとか、ファイヤーフォックスたちはこれからやってのけるんじゃないかと思います。

ファイヤーフォックスは元々モジラ財団っていう財団が開発元で、彼らは非営利団体なんですね。そして彼らのようなネット関係でなくても、僕らのようなどちらかといえばリアルの世界でも、時間はかかるかもしれないけれど、営利セクターを超えるような事業を非営利セクターがやれる気がするんです。

そして海外では、それが夢物語じゃないことを証明するかのように、例えば大企業の有能なビジネスマンが平日の就業後にどこかNPOの経理を担当していたりだとか、そういう事例があると聞きます。札幌のYOSAKOIソーランのように、あるモデルケースが火をつける形で自然といろんな場所に広がっていく事例もありますよね。

資本、つまり儲けへの期待値としてのお金をできるだけ集めて、大きなビジネスモデルを最速で回しましょうというのが営利セクターの戦略だとしたら、できる限り少ない資本で雪だるま式にビジネスモデルを回しましょうというのがNPOの戦略だと思って、すごく魅力を感じました。

それは事業の規模が5倍10倍になっても、すごく極論すると、必要な予算規模は増えないってことだと思ったんです。年商10億の企業が世の中を変えるのは難しいけど、年間予算10億のNPOが世の中を変えるっていうのは、可能性があると思うんです。

世界の富っていうのはその瞬間瞬間で有限なわけですよね。営利セクターのエネルギーの源泉が資本、つまりお金を集めることだとすると、そのエネルギーもどこかで有限なはずです。ところが人々が無償で時間を割いて関わってくれることによるエネルギーは、お金と比べると全然手付かずというか、まだまだ可能性がある。

もちろん人口も地球上で50億とか有限なのだけれど、今のところ無限といってもいいぐらいの余地がある。世の中を変える、というぐらいのことができるかもしれない。こういう話は理屈としては甘ったるいかもしれないけれど、そのロマンが非営利セクターの最終的な魅力なんだろうと思います。これからも KOMPOSITIONをNPO法人で運営していきたいのはそういう理由が大きいですね。

株主に対する配当という大きな問題が大前提に存在する営利セクターとは違う、お金じゃなくてやりたいことが最初にある、そこでアメリカの事例でもあるファイヤーフォックスは先駆的な事例ですね。

そうですね。インターネットの世界ではリアルの世界に先行するような事例がたくさん起きていると思います。web2.0とかは、中身がないとも言われていますけど、僕にとっては衝撃的な事でした。ボランタリーな力が価値を生み出していくわけで、僕の感覚は当たらずとも遠からずだと興奮しました。

web2.0っていうのはユーザー同士がマーケットや社会の一部の構造を創造するといことですよね?

たとえばミシュランっていうのは、覆面調査員みたいな雇われた人間がいて、彼らが飲食店を調べるわけですよね。それとは別に、読者が思い思いにコメントや点数を投稿していくwebサービスもありますよね。食べログとか、アスクユーとか。ああいうものって実は誰も雇われの覆面調査員をやってないですよね。読者がお店に行って、食べた感想を好き勝手にレートをつけていって、評価のデータが増えていく。そうするとそれぞれのお店に対する評価の精度もあがって、さらに読者も増えていくわけです。

もちろん広告やサイト改善や、サーバーの増強とかは費用が必要かもしれないけれど、評価している人間っていうのは無償のまま、自然に増えていくわけですよね。山の上から小さい雪玉を転がしたら、麓で巨大な雪崩が起きるみたいな話で、最終的には巨大なスケールメリットが自然的に起きてくる。仕掛けた人間の想像を超えてムーブメントが起きていくって言うのはすごく面白いと思いました。最終的にはNPOの魅力もそこにある気がするということです。

ただし、例えばファイアーフォックスの開発ってほとんどがインターネットの中で完結することですよね。ファイヤーフォックスがベータ版をつくりました。そもそも開発するのもボランティアがつくって、それを組み合わせてある種のパッケージをつくって、公開したらボランティアによるバグ取りや報告が始まって、それをまたいじってみたいなことをやっている。

そういうオープンソースの開発はインターネットで完結する。でも、多くのNPOは福祉でも、まちづくりや教育でも、僕らのような場合でも、人や場所がいないと始まらない、リアルな分野じゃないですか。そのリアルに、オープンソースのような仕組みが実現するのは簡単ではないんです。これに関してはこれからの試行錯誤が大切だと思います。僕らはまだまだ模索していて、まだ成果がでるような、そういう段階まできていません。NPO全体の論点とも思いますが、今後はもっと本腰で研究したいと思っています。

理想に近づくためには、インターネットっていうある種の幻想社会から実社会に変遷していく必要があると?

まあ、インターネットが重要なのは間違いなくて、でもいわゆる電子メールやWEBサイトといったものだけではインフラが十分でないってことですね。この場合のインフラというのは、単に情報を流すんじゃなくて、善意を交換するためのインフラなんですね。インターネットで完結する活動なら、ボランティアが二日か三日間の間のどこかで空いた時間を使って、成果があればどこからでもメールを送っておいてくれたらいい。受け手も時間が空いたときに、御礼のメールなんて送ったりする。これで善意のリソースが交換されてるわけです。

でもKOMPOSITIONの活動の場合は、どこに来てくれないと困るとか、いつ来てくれないと困るとか、そういう問題があるわけです。だから自ずと、少人数でも深く関わってもらうべき事柄と、浅くてもいいので大人数に関わってもらうべき事柄とを整理しなきゃいけない。でもまず深い関わりから固めていかないと前に進まないし、整理もできないし、という難しさがある。その上でインターネットをどう活用できるかってことが大切になると思います。

話がちょっと脱線するんですけれど、デザインって昔に比べて手軽な存在になりましたよね。フォトショップとかイラストレーターみたいな高機能のパソコンソフトが当たり前になりましたから。映画を撮るってことも敷居が下がりました。昔は編集っていうのはフィルムを切ってやってたわけだし、そのたびにお金がかかっていた。だけど今だったらデジタルでできる。

いろんなところで敷居が下がっています。それでNPOとは言わないけれども、何かしらの組織をつくったりだとか、仲間と一緒に何かの事業を興すっていうことも敷居が下がってると思うんです。僕の大学時代にはメーリングリスト位はあったけれども、たとえば仲間との日程調整だけでもすごい時間がかかったわけです。メールするのもパソコンの前に行かなきゃいけなかった。

今はどこでもネットにつながっていて、携帯でWEB上のメールやカレンダーのサービスを使うこともできる。そういう意味で人々のリアルな活動を支援するインフラってどんどん発展しています。だから今はみんな恵まれていると思います。団体というより、個人のレベルでネットを使った活動インフラっていうのはもうできてる。ただNPOが事業戦略としてネットを活用するためには、さらにその先の工夫がまだ必要ですね。

Word of power

●できる限り少ない資本で雪だるま式にビジネスモデルを回しましょうというのがNPOの戦略
●世の中を変える、というぐらいのことができるかもしれない。こういう話は理屈としては甘ったるいかもしれないけれど、そのロマンが非営利セクターの最終的な魅力
●仕掛けた人間の想像を超えてムーブメントが起きていくって言うのはすごく面白い

寺井氏のインタビュー(第三号)は以上になります。

次号も引き続きNPOKOMPOSITION代表、寺井元一氏のインタビューをお送り致します。
みなさま、お見逃しなく!!

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