vol.081 今村久美 / Kumi Imamura
NPOカタリバ代表理事 URL:http://www.katariba.net/
高校卒業後、慶應大学SFCに進学。高校時代には環境作文コンテストで全国4位に入賞したことも。2001年にSFCを卒業後、リクルートなどでアルバイトをしながらNPOカタリバを同じ大学生の竹野優花さんとともに立ち上げる。06年にNPO法人に。大学生が高校訪問をする「カタリバ事業」では 3500人のボランティアスタッフを抱える。
こんにちは!テトルの本村拓人です!! 今週は、5回にわたって、NPO法人カタリバを運営する今村久美さんにご登場いただきます。 文中に"カタリバ"と"カタリ場"ふたつの言葉が登場します。"カタリバ"はNPO法人名で"カタリ場"は、カタリバが主催するプログラム名です。 "もしも、タイムマシンがあったら..."という想像を、みなさんはしたことがありますか?タイムマシンで時空を飛び越えて、漠然とした悩みを抱えていた頃の思春期の自分に語りかけることができるとすれば、なんて言ってあげたいでしょうか。 また、ちょっぴり大人になった自分が未来から訪ねてきたら、どんなことを相談したいですか? カタリバが企画するカタリ場は"キャスト"と呼ばれる大学生を中心としたメンバーが高校を訪問し、生徒に自分と向き合う機会を提供する授業プログラム。親にも先生にもそして友達にも言えなかった気持ちが、見ず知らずの先輩には相談できてしまう不思議。カタリバは、この直接的すぎない距離感を、「ナナメの関係」と名付けました。 カタリ場を通じて大学生たちは昔の自分に見せたい今の姿を、そして高校生たちは、さまざまな不安や不満を乗り越えたちょっと先の自分の姿を、見つめているのだと思います。
キャストとスタッフが協働してカタリ場を運営
カタリ場の企画は、現役の大学生たちが高校を訪問して高校生と語り合うとてもユニークなものです。 まず、この仕組みについて、教えていただけますか?
カタリ場を担うのはカタリバキャストとスタッフです。 キャストは登録制で、無給のボランティアです。ほとんどが大学生で、社会人は少ないですね。 高校を訪ねるのは平日の昼間ですし、本番までには何度も打ち合わせやシミュレーションを行いますので、社会人の方に参加していただくことが難しいのが現状です。
スタッフは、NPO法人カタリバのスタッフのことで、こちらは有給です。キャストを取りまとめたり、事務をしたり、キャストが活動するための土台を作っているんです。現在は20名ほどの職員がおり、中には学生職員もいます。
キャストの役割は、高校生の悩みや夢を聞き、経験を語ること。キャストを育てるのは大変そうですね。ホームページには細かく訓練プログラムが掲載されています。
ホームページに書かれていることは、ちょっと大げさかもしれませんが・・(笑)。 カタリ場がどのように動いているかを説明すると、まず、カタリバの正職員の担当者が高校の先生と契約を結びます。
無事成立したら、登録している大学生たちに、メーリングリストでプロジェクトマネージャー募集の告知をします。立候補者との面談・選考を経て、内定したらプロジェクトマネージャーがプロジェクトを進行する主体となります。担当の高校・生徒をいかに分析して課題を抽出し、それに対してどんな企画をつくり、どんなキャストを募集するか、それらはすべてプロジェクトマネージャーの責任です。
プロジェクトマネ-ジャーにとってこの体験は、リーダーとしての役割を学び、問題解決をしていくトレーニングとなります。
NPOカタリバではつねに10~15くらいのプロジェクトが同時並行して進行しており、学生職員が企画コーディネーターとしてフォローアップしていきます。
高校へは、たくさんのキャストが訪問するんですよね?
そうですね。だいたい240人ほどの生徒がいる高校に50人ほどのキャストが押しかけます。 集まるキャストで、プロジェクトの雰囲気はガラッと変わるんですね。プロジェクトに必要なキャストをみきわめスカウトする、ここがプロジェクトマネージャーの一番の腕の見せ所だと思います。
任せることが、大学生たちに責任感を生む
どのような企画を行っているのですか?
高校によって企画内容はいろいろです。 まず、スタッフとプロジェクトマネージャーが高校を訪問して、先生が感じている問題をヒアリングするんですね。
いじめが多いとか、学費を払ってくれない親がいるとか、悩みはさまざま。それを聞いて、プロジェクトマネージャーを中心に、問題のソリューションとなるような企画を作るんです。
ニーズの違いはどのようなかたちで企画に反映されるのですか?
たとえば、この学校はいじめがひどくて劣等感を持っている子が多いから、キャストのメンバーを優しそうな人を中心にして、カウンセリングっぽい構成にしてみようとか、この学校は総合学科ですでにいろいろな取り組みをしているから、偏差値の高い大学に通うキャストの、各領域で活躍する事例にフォーカスしてみようとかですね。
ひとつひとつの企画がオーダーメイドなんですね。
実は以前は、私が企画を量産していました。 私が取りまとめ役になって、先生と打ち合わせをして、キャストもすべて決めて、段取りを組む。それをスタッフやキャストに手伝ってもらっていたんです。
ところが、それでは"久美ちゃんの団体の手伝いに来てる"気分になるだけで、不満ばかりになってしまったのです。任されないのに、あれこれ指示されるばかりなんですからね。人が離れていくことが、その頃はよくありました。
カタリバに関わりたいと思っていても、実はその量や質はまちまちなんです。NPOの運営に関わるスタッフと、カタリ場の現場で活躍するキャストとを二層に分けたのは、それがわかったからですね。NPOの運営に興味がない大学生に、無理してNPOの運営の手伝いを頼んでもモチベーションは下がるだけ。
大学生の多くは、カタリ場で高校生と語ることに魅力を感じているんですね。キャストは企画ごとに選ばれますから、もしかすると、訪問する高校生との出会いは一期一会なものになるかもしれません。それがわかっているから、彼らはとても真剣になります。もうコストパフォーマンスなんてまったく考えずに、やりたいと思ったことを全部盛り込む感じですね。
任せているぶん、責任も感じてくれます。本番前から、訪問する高校に愛情を感じてくれているみたいですね。そんな彼らに、名刺の渡し方や挨拶の仕方など、毎回指導するスタッフは大変ですが!笑
はじめて自分のことをこんなに話した!
カタリ場を体験した、キャスト側、高校側は、それぞれどんな感想を抱くんですか?
キャストにとって、訪問する高校は、第二の母校に思えるくらい思い入れの強い場所になります。当日までの長い道のりを思い出してか、泣いてしまう子もたくさんいるんですよ。 "ちょっとちょっと、主役はあんたたちじゃなくて、高校生でしょ!?"って思うときもあるんですけどね!笑
企画がうまくいかなくて、「高校生に最初の一歩を作ってあげることができませんでした...」と泣きだす子もいます。いろんな成功体験や失敗体験を積んでくれているみたいです。
高校生はどうですか?
カタリ場を通じて、高校生みんなが何かを感じたかといえば、そうではないと思うのですが、よく感想としてもらうのが「はじめて自分のことをこんなに話した。」ということですね。
高校生のころって、両親や先生にはもちろん、友達にだって余計話せないような自分の本当の気持ちってあるじゃないですか。自分のことをマジメに語るなんて、サムくて、引かれるから、口に出さないでしょ。それを言葉にしてみることって、実はものすごく冒険で、ものすごく非日常。クラスっていう固定したコミュニティの枠内では、むずかしいじゃないですか。それを可能にするのが、カタリ場の距離感。カタリ場の魅力は、教室に非日常を持ち込むことだと思っています。
では、学校の意見はどうですか?
キャストは別にカウンセリングの資格を持っているわけではありません。素人です。だから、必要だと思ったら「ダメだよ、そんなの!」とか、言ってしまったりもします。
先生方は、そんな現場を「新卒で先生になったときには、自分にもそんな情熱あったな~」とか、「ウチの子たちは笑わないもんだと思っていたけど、笑うんですね。」とか言ってくれます。 生っぽさが逆に、よかったりするみたいですね。
カタリ場の最中に、プイッと教室を出ていく子もいます。「ダリ~なぁ」とか言って。学校ならそこで、強迫的に生徒に呼び出しをかけたり、学年集会が開かれたりしますよね。ところがカタリ場では、ワーッと生徒を追いかけていく。脱出した子が保健室の前にいれば保健室の前で、トイレにいたらトイレでカタリ場がはじまります。笑
担任の先生が日々、1対40で対応されるのとは違う、一日集中のパワーで接するので、そこは評価されますね。
●コストパフォーマンスなんて考えない
●いろんな成功体験や失敗体験を積む
●素人の生っぽさが、逆にいいみたい
素人の大学生たちを指導して、対話の中で高校生に考える機会を与える人材に育成するカタリバ。
現場の雰囲気を想像してください。悩んだり、泣いたり笑ったりする、青臭い青春のど真ん中。もしあなたが、これをビジネスにしようと思ったら、いったどこから手をつけますか?
猛烈な青春のエネルギーは、いかにして事業になったのでしょうか。次号は、カタリバ誕生の謎を追っていきます!
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Wrote 2010.01.16 << 前のインタービュー | 次のインタービュー >>