vol.049 貝ノ瀬滋 / Kainose Shigeru
三鷹市教育長 URL:http://www.city.mitaka.tokyo.jp/a002/p110/g15/d11000001.html
1948年北海道生まれ。 中央大学卒。電気通信大学大学院博士課程中退。 東京都内小学校教諭、東久留米市教育委員会、都立教育研究所、東大和市教育委員会、 三鷹市立第四小学校校長などを経て、現在、三鷹市教育長。地域と学校をつなぐコミュニティスクールの草分けとして三鷹市で様々な教育改革を実施。 アントレプレナーシップ教育導入の先駆者。著書に『市民が考えた不登校問題-心の叫びに答える-』(共著・教育出版)、 『子ども・学校・ 地域をつなぐコニュニティスクール』(共著・学事出版)他
こんにちは! テトルの本村拓人です! ! 今号も貝ノ瀬氏のインタビューをお送りいたします。
三鷹市の第四小学校の校長になる、と内示があったんです。それが平成11年の4月でした。当時三鷹は駅に降りたことも無かった。校長になってからは、教育行政の時にあたためていた考えを少しずつやっていこうと思っていました。4月に入ってちょっと様子をみてたんです。
学校の先生だから、まず子供を見ますよね。そうすると特に際立ったのは、三鷹の子供たちは経済的にある程度安定した地域が多い。勉強はそこそこできる、明るい、屈託もない。しかし頭でっかちな子もいる。それから家にパソコン持ってる子が多いからITも強い。だけどガッツが無い。それから高い志みたいなものが弱い。打算的まではいかないけれども、夢といえば夢だけど、サッカー選手になって、大金持ちになりたいとか、イチローみたいに大リーグいって稼ぎたいとか。女の子は、保育士さんとかもありますけど。
三鷹に限らず日本の子供全体にいえる傾向だと思います。 要するに夢が画一的なんです。世の中には色々と職業があるし、なかったら自分で仕事つくってもいい、というような発想がない。もちろん指導されてないから仕方がない部分もありますけど。
これからは自力でクリエイティブに生きていくような人がいないと、日本はやっていけない。しかしそういう教育がされていない。塾に行っていい大学に入り、いい会社に入る。そういうのはすごくわかるんだけど、その先がない。会社がつぶれたらどうするのかと考えない。
例えば東京大学をでて、一流の企業に入ったら未来永劫幸せだと、そういう予定調和的に考えている。親も同じなんです。もっとチャレンジ精神とか高い志を持って欲しい。金持ちになりたいというのは否定しないし、悪いことじゃない。けれどもやはり最終的には人のために生きるってことになるんです。そういう人間の生き方についても、もっと真剣に考えてもらいたいんです。
今の子供はみんな体力も十分でないんですよね。学力低下問題はよく話題になるけど、体力低下問題は誰も話題にしない。でも戦後一貫して体力は下がってるんです。そのことも含めて、体力とか健康問題、スポーツの問題、身体を鍛え、そして心を鍛え、精神を鍛えるという教育をしなければいけない。
21世紀に活力ある社会を維持していくには、今のままの彼らでは心もとないと思うんです。 もっと全人的な人格を持った上で、たくましさももたせなければいけない。ただ生きる力では十分ではない。もっと広い意味での人間力の方がいいと思ったんです。
だから最初の三鷹第四小学校では、人間力を育成するために、先生方に私の考えを納得してもらうことから始めました。当時先生方の実態をみたときに、若い先生もいれば、年配層の先生もいるんですが、やはり先生方は、旧態依然たる授業をやっていて、そんなに工夫をしているわけではない。
最初の子供たちと一緒になってやっていこう、という新鮮な志は時間とともにどんどん薄れていくんです。これは仕方の無いことです。だからこそもっと原点に返って、活力ある教育の現場をつくらなければいけない。
どうしようかと色々考えました。やはりこれは先生方や学校の中、私達だけではできない、改革できないと思いました。ここには外からの市民をいれてやらないとだめだと。開かれた学校にしないといけない。
地域には、色々な体験や経験、知識、技能を持たれている方が多くいるんです。みなさん日々自分の仕事されていますけど、掘り起こしてみると本当に色々な方がいらっしゃる。別に著名人に限らなくて、職人さんでもそうだし、ものづくりの人もそう。そういう人たちに学校に入ってもらえると、先生達も啓発されるんです。
「こういう生き方をしてる人たちがいる。」「こういう技能を持ってる人たちがいるんだ。」と。そういう職業とか仕事のことって、先生が教科書に書いてあったり、色々本で読んだりして、間接的に子供たちに伝えているわけですよね。けれども本職の人たちがそういうことを目の前で語ったりすると、全然違うわけですよ、本物の力は迫力があります。だからそういう風な場面をいっぱい増やしていきたい。
しかし外から人が入るということは、自分の授業を見られるということですよね。そうすると先生は緊張するし、かっこわるい授業はできない。少しは前向きに授業の準備したりするし、勉強したりする。だんだんそれが積み重なっていけば、先生方の力量UPにもなるんです。
それからボランティアで授業に参加してくれる人たちは子供たちと関わって、生きがいとか楽しさを見出してくれるんです。子供たちや学校の役に立ってるんだな、と感じることで、地域の人にとってもメリットがある。
三鷹四小の場合だと、教育ボランティアとして近所のおばさんとかに、色々手伝ってもらったりもするんですね。一、二年生なんかスーパー行って、そういうおばさんにあうと、「先生!先生!」とまとわりついてくるんです。そうすると周りの大人の人がおばさんのこと見るじゃないですか。おばさんは先生なんて言われると、恥ずかしいけど、嬉しいんです。憧れの先生なんていわれると嬉しいんです。そういうことがあるとまさにやめられなくなる。一生懸命にもなる。当然顔見知りになりますよね。
今までまったく地域の人たちとは接点がなかったんだけど、今度地域の人たちがいっぱい学校に入ってきて、接点ができる。顔見知りになるから、当然道で会えば挨拶するし、立ち話もするようになる。今度は見ず知らずの人じゃなくなる。そこに有機的な関係がうまれる。小学生が悪さをすれば指導もされるし、注意もされる。だからそこで地域社会の教育力が芽生えるきっかけになるんです。
最近家庭の教育が低下している、地域の教育が低下していると言われていますよね。そこに教育ボランティアが入ることで、地域社会の教育力がよみがえるきっかけができる。ボランティア同士も、もっと仲良くなりましょう、懇親会やりましょうということになって、会をもつようになる。今まではただの隣近所の関係しかなかったのが、子供を真ん中においてだんだん話題がとびかうようになるんです。
三鷹四小のなかで関わった人数が今まででのべ人数が年間約二千人なんですよ。週に三、四十人入ってますから、本当にすごい数の方々が出入りするんですね。不審者なんて入る余地がない。不審者だと目があわせられないから、挨拶しても、挨拶しない。
もちろん安全のために、いろんな派手な名札を用意しています。ボランティアの人は青い名札で、先生方は赤い大きな名札とか、それから突然の訪問者は、入り口で名前を書いて、小さい丸いバッジをつけるとか。だから何にもつけてない人は勝手に入ってきた人ということになる。そんな風にして不審者対応も意識しながらやってきました。
地域の子供は地域で育てる。地域の子供は地域で守るという気風が地域に広がっていくのです。
●世の中には色々と職業があるし、なかったら自分で仕事つくってもいい
●"これからは自力でクリエイティブに生きていくような人がいないと、
日本はやっていけない"
●やはり最終的には人のために生きるってことになる
●地域の子供は地域で育てる。地域の子供は地域で守る
貝ノ瀬氏のインタビュー(三号)は以上になります。
次号も引き続き貝ノ瀬氏のインタビューをお楽しみください!
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Wrote 2009.01.13 << 前のインタービュー | 次のインタービュー >>