vol.051 貝ノ瀬滋 / Kainose Shigeru
三鷹市教育長 URL:http://www.city.mitaka.tokyo.jp/a002/p110/g15/d11000001.html
1948年北海道生まれ。 中央大学卒。電気通信大学大学院博士課程中退。 東京都内小学校教諭、東久留米市教育委員会、都立教育研究所、東大和市教育委員会、 三鷹市立第四小学校校長などを経て、現在、三鷹市教育長。地域と学校をつなぐコミュニティスクールの草分けとして三鷹市で様々な教育改革を実施。 アントレプレナーシップ教育導入の先駆者。著書に『市民が考えた不登校問題-心の叫びに答える-』(共著・教育出版)、 『子ども・学校・ 地域をつなぐコニュニティスクール』(共著・学事出版)他
こんにちは! テトルの本村拓人です! ! 今号も貝ノ瀬氏のインタビューをお送りいたします。
モデルがすごく明確ですよね。地域の住民とともに教育をつくっていくというところじゃないですか。第四小学校でそのモデルを作って、今はそれを三鷹市内に広げていくというお考えですよね。
そうですね。あの時は校長でしたから一つの学校で仕事をしていたわけですよね。当時はとにかく三鷹第四小学校の子供をなんとかしなければいけないという気持ちがあった。 子供たちに、本物の夢や希望を持ってたくましく生きていってほしい、それで地域にも貢献していってほしいんです。そういう子供を育てたいんですね。そういうことを1校の中で考えていました。
これに取り組んでいって、だんだん地域の人がこれは面白いって賛同してくれて、人が増えてきた。 この企画の名前は「夢育の学び舎構想」と言うんですね。夢を育てるという意味です。この構想を地域に発信して、地域の人も賛同してくれて「やろうやろう。」って言ってくれたんです。そういう人たちにボランティアとして登録してもらっていったら百名、百五十名位になった。
続けていくうちに、こういうユニークな取り組みについては自然と世間に知れていくんですね。新聞に取り上げられたり、NHKが取材にきたり。
メディアにでたりすると、「自分達がやっていることは価値があるんだ、注目されることなんだ。」、とだんだん地域の人たちも自信をもってくる。ますます確信を持って、一生懸命にやります。先生方も最初はいやいやだったんですけど、だんだんボランティアの方々を頼りにするようになるんですね。
子供たちも喜ぶし、何ていったって子供たちが、「よくわかる、楽しい。」って言うんです。それに先生達が非難されることにもならない。そういう意味では一石三鳥、四鳥くらいの効果があるんです。
あるとき、当時三鷹市の企画部長をしていた現在副市長の河村さんという方が尋ねてこられて、三鷹第四小の取り組みについて意見交換をしたんです。そうしたら三鷹第四小の取り組みが三鷹の市政と同じ歩みをしているということがわかった。
三鷹の市政は、60年代後半から市民参加が活発で、それが現在の市政に生かされています。市長が例えば「むこう5年間の三鷹の市政はこうしていきたい。」というような目標を掲げて、それに向かって計画を作ってみんなで実現しようといったようなそういう単純なトップダウン型ではなかった。
もちろんこういう風にやりたいというビジョンは出します。ただ、それと同時に市民のみなさんが市政に何を期待するか、というようなニーズを聞こう生かしていこうという姿勢がすごく強かったんです。
むこう十五年間の基本構想をつくるときなんかも、市民を公募して二百、三百名位集めて分科会を開く。例えば子供の問題とか、それから福祉の問題とか、分科会を十位。そこでまったく行政の方が青写真を示さないで議論をさせる。
最初はみんな好き勝手言うんです。でもそのうちまとまってくる。その時に行政の人も入って、一緒になって色々話していくとだんだん骨格ができてくるんです。これ結構面白いんですよ。
極端な人がいるとして、その人が極端なことを言うと、今度は反対の意見の人が当然いる。この人たちがガチンコしてるうちにだんだん真ん中に落ち着いてくるんです。初めから真ん中を持ってきて、これだ!と言うと、両方納得しない。両方とも最初は自分の意見を主張するんですね。片方が優勢になると今度は相手側が黙っていない。
こうしていくとだんだん真ん中になるんです。結果だけ見れば、皆さんが納得するところにおさまっていたりする。結局良識が勝利するのです。
他の市、町だと行政が大体青写真を作るんですね。それで骨格は変えない。元々あるものに対して、訂正、手直ししてくださいという感じで議論を進めるんです。三鷹はそうじゃない。白紙からの参加でやって、結局素晴らしい青写真ができてくる。
これ無謀に見えますけど、三鷹の市政は長いことこういうことを実践している。これを三鷹方式といって、三鷹では市民が参画して行政と市民が一緒になって市政をつくってきたんです。三鷹のまちづくりは「協働のまちづくり」というのをスローガンにして進んできたんです。現在の清原市政は、さらに深化させ、充実・発展しています。
三鷹第四小学校の経営も、地域のみなさんや保護者の参画を得て色々と手伝ってもらっているんです。学校評価もやっています。学校評価って保護者の人たちだけに評価してもらうと子供を通してしかわからないですよね。
子供が「楽しいよ。」って言っても、学校が楽しいところかどうかは子供の判断に左右されている。子供が「学校がいやだ。」といったら、親も「どうも学校はだめらしい。」となりますよね。
ところが三鷹第四小の場合は地域の人がたくさん学校に参画している。実際子供と接しているし、先生方とも接している。だから学校のことがリアルにわかっている。その意味では学校評価の精度も非常に高い。真実に限りなく近い学校評価なんです。
確かに最初は「あの先生の教え方はひどい。」とか、そういう攻撃的な評価がずいぶんありました。でも二年目、三年目になるとだんだんおちついてくる。やっぱり先生方は大変なんだと。手のかかる子供たちを忍耐強く教えているとか、だんだん先生方の苦労がわかってくるんです。そうすると今度は地域の方々が先生方の味方になってくる。 単なるお手伝いからパートナーとして、ボランティアの方々が変わってくるのです。
小学校教育六年間でどういう子を育てる、中学校教育三年間でどういう子を育てるとか、そういう風に別々に考えない。15歳で卒業のときに、どういう学力をつけさせる、どういう子供を育てるということをきちんと明確にするような、そういう長期的な視野にたった一貫した教育が必要なんです。だから小中一貫が必要なんです。又、中一ギャップといわれる段差の解消も大切です。
でも金は無いです。だから統廃合するとかではなくて、今ある学校や、既存の資源、リソースを活用して、教育改革を目指しています。一つ一つの学校は離れているけれども、個々を連携型にして、先生方がいったりきたり、子供たちがいったりきたりできるようにする。
先生方は小中兼任にして、学園の先生として、中学の先生でもあり、小学校の先生でもあるという状態をつくる。その中で子供たちをみんなで協力して育てる。それは、コミュニティスクールを基盤として、9年間の一貫カリキュラムをもつ小中一貫教育ということです。
三鷹は七つ中学校がありますから、七つの中学校区を基礎に七つの小中一貫の学園ができる。それで全てをコミュニティスクールにする。だから7つの中学校区がみんな共生の社会、地域の人たちが、学校を支える、助け合うようなそういうシステムも同時につくっていく。
コミュニティスクールだから、みんなが学校を拠点として助け合っていくんです。これを全市で展開するんです。そういう理想的な教育を三鷹でやっていきましょうということで、三鷹で今実践しているんです。
今度の四月には三つの学園ができる。もうすでに一つ学園はできてますから、あと三つ同時に今年できるんですね。四月の開園式で三つ開く。その次の年、21年の四月にあと残りの三つの学園ができて、それでちょうど七つの小中一貫の学園ができる。その準備態勢を今検証しながら進めています。
新しい義務教育制の創造といってもいいと思います。
●"子供たちに、本物の夢や希望を持ってたくましく生きていってほしい、
それで地域にも貢献していってほしい"
●長期的な視野にたった一貫した教育が必要
●今ある学校や、既存の資源、リソースを活用して、教育改革を目指しています
●新しい義務教育制の創造といってもいい
貝ノ瀬氏のインタビュー(五号)は以上になります。
次号も引き続き貝ノ瀬氏のインタビューをお楽しみください!
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Wrote 2009.01.13 << 前のインタービュー | 次のインタービュー >>