vol.059 岩切準 / Iwakiri Jun

特定非営利活動法人 夢職人代表理事  URL:http://yumeshokunin.org/

1982年
東京生まれ、下町の江東区育ち。東洋大学大学院社会学研究科社会心理学専攻修士課程修了。NEC社会起業塾第6期(2007年度)修了。江東区立第五大島小学校評議員。人情に溢れる東京の下町に育ち、高校時代は地域の子ども会活動をサポートする「ジュニアリーダー」に従事。
2004年
大学時代に教育、福祉、心理に関する様々なNPO団体で活動経験を積み、大学在籍中に「夢職人」を設立。
2008年
法人化し、「特定非営利活動法人夢職人」の代表理事に就任。現在に至る。

こんにちは!テトルの本村拓人です!! 今回が2回目となる NPO法人夢職人代表理事岩切準さんのインタビュー。 前回は地域に育まれて成長した岩切さんが、 組織を立ち上げて、地域とのつながりを大切にしつつ、 子どもの成長支援を始めた経緯をお聞きしました。 地域における人と人とのつながりを重視する岩切さんが、 危惧したことの1つが、大人の側がこどもと接する機会が数少ないこと。 場作りの必要性を強く認識した岩切さんが始めたのが、地域子どもクラブ。 専門家ではない立場から、子どもの育成を開始した夢職人は、 多くの試行錯誤を経て、今年4年目を迎えました。 これまでの道のりを、思う存分語っていただきます!

子どもたちと大人との接点づくり

夢職人の事業について教えてください。

私たちの団体の特色は、いわゆる子どもの専門家である保育士や教師などではなく、一般の市民が子どもたちの支援に継続的かつ組織的に関わっている点です。

子どもにとって、第一に家庭、第二に学校が成長の場です。第三の成長の場を作ろうと考えた時、家庭や学校にない特性について突き詰めて考えました。その答えが多様性です。当たり前と言えば当たり前なのですが、親も先生の数は限られています。でも、社会に出れば、必然的に年齢も考え方も違う多種多様な人と関わり合いが求められます。

言わば社会力のようなものが必要となるわけです。第三の成長の場は、心のよりどころになるだけではなく、そのような力の身につく場にしていきたいという想いがありました。

そんな場を作っていくためにも、専門家ではなく、「普段は、OLです!」、「いつもは、大学で理工系の勉強をしています!」というような多様な一般の大人にたくさん参画してもらいたいと思いました。

「私は、特別なスキルがないけど」という人がいますが、それは違います。子どもたちは、特別なスキルを求めているわけでなく、話を聞いてくれたり、一緒になって物事を考えてくれる存在を必要としているのです。大人には、子どもたちと関わり合うことを通じて、評論家ではなく、子どもや青少年の支援の当事者になってもらいたいと考えています。

近年、よく子どもたちと社会との接点が無いと言われています。「社会との接点って何だろう?」と考えたときに、極論すると、大人との接点なのです。子どもが多種多様な大人と会う機会を作らなければいけない。

一方大人は、「自分の子ども以外の子どもと1カ月以内で、何人位の子どもと話しましたか?」と尋ねると、まず「ゼロ」という人が多い。現代において、自分の子ども以外の子どもと関わり合うことは希です。特に若い世代がそうですが、次の親になる世代が子どもと出会っていないのは、非常に大きな社会的コストになってくると危惧しています

多くの大人が子どもたちの支援に参画してもらいたいと考えた時、特定の教科やスポーツではない方がより幅広い人を巻き込むことできると思いました。私自身が専門的な勉強をしていたこともあり、まずは野外教育やレクリエーション、文化芸術活動などの多様な体験学習をプロデュースしていくことにしました。

これは、あくまでもスタートアップでの話で、子どもたちのニーズとも照らし合わせて、どんどん展開をしていってもらいたいと思っています。あくまでも私たちのこだわるべきは、ビジョンであり、手段ではないと思っています。

今、具体的にやっているのは、学生や社会人がプロジェクトを編制し、体験学習を主軸とした教育プログラムを大体月に1、2回程度なのですが、年間を通じて提供する流れを作っています。同じ地域に住みながら、学校も学年も異なる子どもたちが、「地域子どもクラブ」のような形で所属をしています。

私たちが重要視しているもう一つの点は、継続性です。教育プログラムの質と量を維持しながら続けていくことは、もちろん大変なことですが、ひとつのプログラムづくりだけでも大人には相当な労力がかかります。

そのため、多くの草の根の地域活動が、なかなか年間継続してやることが難しい状況にあります。子どもとの信頼関係を築いた上で本当に大切なやり取りができるのに1回のキャンプや、1回のクリスマス会など一過性のイベントで終わってしまうのは非常にもったいない。そもそも一過性のイベントやワークショップで子どもたちの成長にどれだけ寄与できるか疑問を感じます。やっぱり名前と顔をしっかり覚え、中長期的な関わりがあってこそ、本当の教育効果というものが得られるのだと思います。

企画自体を始めたのはいつ頃ですか?

私が始めたのが2004年1月にスタートし、当初は高校時代の友人3人くらいで集まり、バイト代を出し合って、知り合いに手紙を出しまくるところからはじめました。

現場で活動に取り組んできた経験からまず安全が何よりも重要なことはよくわかっていました。どんなに良い活動であっても1回の事故で全てが終わってしまいます。なので、子どもたちの安全を確保できるだけの仲間をまず集めることが何よりも大切でした。 その次に子どもたちへの広報をさせていただけるように地域にある全ての小学校の一校一校に頭を下げてまわりました。

何のコネもない学生が飛び込みでやってきたので当然、厳しい意見を受けることもありましたが、私たちの気持ちを応援してくださる校長先生とお会いすることができ、地域の小学校の校長先生が集まる会で説明をさせていただける機会をいただくことができました。いつも通り楽しい体当たりでのスタートでした(笑)

企画をつくるうえでどんな点に気をつけていますか?

一般的に地域での活動というと、安かろう悪かろうというイメージが強くあります。私たちの活動は、子どもや青少年の成長にどれだけ寄与できているかがとても重要だと考えているので、プログラム内容には徹底的にこだわっています。

「楽しい」ということだけでなく、「学び」つまり「気づき」がなくてはならないと考えています。「楽しい」というのは、子どもたち自身の主体性を引き出すうえで重要な要素です。でも、それだけではより良い成長にはつながりません。

プログラムを通じて、子どもたち自身がどのような学びを得てもらいたいのかを、はじめにプロジェクト内で時間をかけて洗い出し、ねらいをはっきりさせていきます。あとは、それを子どもたち自身の気づきが生まれてくるように具体的なアクティビティに落とし込んでいきます。

プログラムづくりには、高校生から上は40代後半くらいまでの人が一緒になってプロジェクトチームを編制し、権限がフラットな関係の中で進められます。だからすでにここでも異年齢集団での活動がはじまっているのです。

プロジェクトの状況に応じて、私自身が社会心理学を専門的に学んでいたので、それを活かしてアドバイスを行うことはありますが、あくまでもプログラムづくりの主体は、そのプロジェクトだと考えています。

特に子どもに関する専門的な知識やノウハウがなくても、しっかりとしたプログラムづくりができるように支援体制を強化していくことが中心メンバーの役割です。個人の学びを組織全体の学びとできるようにツールや仕組みづくりに力を入れていかなければならないと思います。個人の技量は確かに大切ですが、組織の性質上、それに頼ってばかりの運営ではあってはいけないと思います。

現在夢職人はどのくらいの人数で活動されているのでしょうか?

中核でやっているのが3名で、あとは、大体30人くらいのスタッフが常時入れ替わり立ち代わりで参画してくれています。

やはり仕事の繁忙期には出られないし、学生は試験期間には出られません。でも、色々なバックグラウンドを持っている人が関わってくれているからこそ、足りないところはフォロー仕合ながら、年間継続して事業を行うことができるのです。

事業の質を保つために色々な工夫をしています。プログラムづくりの段階では、数人のプロジェクトメンバーが中心になって推進していきますが、実際に子どもたちに提供する段階では、たくさんの大人が参画します。

プログラムがきちんと子どもたちに提供できるように事前段階での打ち合わせは、細かい点まで時間をかけてすり合わせていきます。プログラムに関わる大人が一丸にならなくては、子どもたちに良いものは提供できません。事前の打ち合わせに参加できない人は、そのプログラムには参加することができません。そのおかげか退会者は少なく、4年以上やってきて、事故やトラブルは一度も起きていません。これは、大きな成果だと思っています。

組織の最大の目的はビジョンの達成!!

ところでNPOという組織形態を選んだ理由を教えて下さい。

理由はいくつかありますが、まず第一にこの組織の目的を考えた時、ビジョンを実現していくことを最優先にしたかった。利益は、追求していくものではなく、手段だと考えました。

利益の最大化ではなく、価値を最大化していきたかったのです。組織の目的によって、成果の細かい評価まで決まってくるので、それだけは、はっきりしておきたかった。

次に考えたのが、生産性で、NPOは次の事業に全額投資できます。出資者に還元する必要がなく、ビジョンに向かっていくうえでとても効率的だと思いました。上がった利益を本当に問題解決のために使えるのは、すごく大事なことだと感じていました。あとは、多種多様な人を巻き込んでいくうえで、ボランタリーな人たちの協力を得ながらやっていくことが最善だと思いました。

また、教育分野は、基本的に完全受益者負担のモデルが成立することは、なかなか困難です。既存の教育システムでも、なんの助成や補助も受けずに成立しているところは、数少ないと思います。例えば大学も学生の授業料などだけで成立しているわけではなく、必ず助成や補助を受けています。

私たちは、できる限り所得などの諸条件に左右されず、広く子どもたちに成長の場を提供していきたいという想いが強かったので、事業を継続するためには、会費や寄付、助成などを獲得していかなければなりません。その点を考えてもNPOという形態が適していると思いました。

岩切さんのように、人のモチベーションを給与など以外で上げ続けられる人は今後社会において絶対的な価値を持つような気がします。

ビジョンは共有されていたとしても、ひとりひとりのインセンティブは異なります。それをきちんと理解しておく必要があります。私は、関わってくれるひとりひとりの人に対して、貢献をしたいと思っています。

例えば、「社会教育を学びたい!」という人には、わかりやすい本などを紹介したり、自分の持っている社会教育の情報を提供しています。大切な時間を割いて、何を求めて、この場にやってきていただいているのかを気づくことは、とても大切なことだと思います。

それは組織としてスタッフに対してもそうだし、ユーザーさんにもしっかりとやっていくということですね。

もちろんです。たくさんの子どもたちがあそんでいる中で、あの子がちょっとうまく溶け込めないなとか、さみしい想いをしていることに、察することと少し似ているかもしれません。人を一色単に考えるのではなく、いつもアンテナを張りながら、1人1人に対する注意を向ける感覚はすごく大事にしていかなければいけないと感じています。

組織では、ビジョンを意識しつつどこまでルールを設定されていますか?個々のスタンスに立つと難しそうですが?

これまでお話してきた通り、私たちの団体は、1人の100歩よりも100人の1歩を大切にしています。活動に参画いただける方のライフスタイルは様々で、関わるスタンスもそれぞれで良いと思っています。

画一的なスタンスを求めるつもりはありません。ただ団体の目指すべき方向というものは、共有していなければならないと思います。活動に参画する前はもちろんのこと、年に1度、総会とは別にビジョンシェアリングディという全社会を設けて、ビジョンや計画の共有を図っています。

多種多様な人が一丸となって取り組みをしてくうえで基本的なルールは必要だと思います。 活動の質を保ち、安全に活動を推進していくうえでなくてはならいものだと思います。しかしながら、それぞれの主体的な思考を妨げるようながんじがらめのルールは必要ないと思います。闇雲なルールの設定は、考えない組織を生み出すだけです。

時間は、かかりますが、「これはどうしたらいいか?」を議論することによって、身につけたルールは、やはりみんな守ります。「これをしてください」、「これはしてはいけません」ではなく、「なぜそれがだめなのか」、「なぜそれをするべきなのか」をきちんと話し合ったうえで決めたことは、浸透します。メンバーで議論をして、考えることは、遠回りをしているようで一番の近道だと思います。

本当に岩切さんは日々の自分のスタンスを大事にして明確にされていて、他の団体だとそこが弱かったりします。

私も以前は、参画していただいている方に対して、「協力してもらっている」、「お手伝いをしてもらっている」という感覚が強かったと思います。しかしながら、実はそれは大変失礼なことだと気がつきました。彼は、大切な同志なのです。変な線引きをして「してやっている」、「やってもらっている」という人が集まる組織は、必ずうまく機能しなくなります。

子どもたちに対しても同じです。近年、「子どもの参画」という言葉がよく聞かれますが、ほとんどが「偽りの参画」です。事細かにお膳立てして、子どもたちがただ参加している活動に魅力を感じることはありません。うちで「参画」を主軸のテーマに据えてやる場合は、対象としている年齢にもよりますが、場所やスケジュール、大まかな流れくらいしか決めません。

子どもたち自身が自分の力で考えて行動するのを支えることが大人の役割です。それは大人にとってはとても不安なことです。どこにボールが行くかわからない。それを走っていってここに落ちたとしたら、一緒に走らなければいけないわけです。大人が自分の思惑通りいかないことに対して怖がっていると「参画」は難しいのだと思います。

私たちのやろうとしていることは、子どもたちの成長を支えるプラットホームづくりです。プラットホームという土台があり、あとは、ウェブと一緒でオープンソースです。最終的なアウトプットの見通しが見えにくい不安はあっても、オープンソースの方が自分で考えていたものよりもはるかに良いものができます。ワクワク感が全然違います。囲い込んでいくことによって、いろんな可能性を閉ざしてしまうことは非常にもったいないと思います。

やはり「やってもらっている」という感覚のリーダー が上にいると、特にNPO業界では非常に統率するの が難しくなってくる部分がありますよね?

そもそも統率しているという気の人は、NPOをやっている人には少ないと思います。目指すゴールを共有し、お互いのスタンスを確認する。そのうえで、対等な立場で一緒にやっていくのが一番です。結局、関わっている大人が子どもたちのために何かしてあげているという意識をもった瞬間、子どもを支援する組織は必ず崩壊します。だって、「やってあげている」からということは、大人の側が何らかのフィードバックを望んでいるということです。それはとてもに危険です。

そうですよね。

変化は、必ず多様性から生まれます。画一的な世界からは、けして何も生まれてこないと思います。

Word of power

● 子供たちに気づきを与える
● 最大の目的はビジョンの達成
● 「一緒にやろう」とする意識

最終回となる次回は、夢職人の今後の課題、可能性についてじっくりお話しいただきます。教育現場から、プログラムとして評価を受けているという事業の今後の方向性について、岩切さんがあなたに熱いメッセージを発信します。

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