vol.072 田辺 大 / Tanabe Yutaka

フォレスト・プラクティス代表  URL:http://www.fpltd.jp/

1994年4月
中央大学法学部を卒業後、大手自動車メーカーに就職。
2000年1月
1年間の外資系ケミカルメーカー勤務を経て、外資系コンサルティング会社に就職。
2002年9月
エクアドルのコーヒー農園に訪問するなど、自ら見つめる4ヵ月の旅に出る。
2003年1月
日本初となる社会起業家を対象としたコンサルティング会社、有限会社フォレスト・プラクティスを設立。
2006年6月
盲ろう者や視覚障がい者のマッサージ師が定期的に企業を訪問して施術するオフィスマッサージ「手がたり」の運営を開始
2008年4月
障がい者マッサージ師と企業とを結ぶ、マッチングサービスを職業紹介会社と連携してスタート。
詳しくは↓
 
【社会起業家入門】
http://fp.cocolog-nifty.com/

こんにちは!テトルの本村拓人です!! 今号も引き続き、フォレスト・プラクティスの田辺大(ユタカ)さんが登場です! ごく普通の大学生の人生を歩んでいた田辺さん。しかしその心には、奥尻震災のボランティアに参加したことで、小さな火が灯りました。"困っている人たちに、何かできることはないだろうか......"。そんな思いを抱えながら、しかし、田辺さんは答えを見つけられないまま、自動車メーカーへの就職の道を選びます。 そして再び田辺さんは自身の人生を揺り動かす出来事に出会います。大学生の頃のボランティア経験も含めて、田辺さんはそのような出来事との出会いを「偶然です」と話してくださいました。 でも、本当に偶然だったのでしょうか? 少なくとも田辺さんは小さなアクションを起こし、人生を変える出来事が待ち受ける場所へ、足を踏み出しています。 第二回目の配信では、アクションを起こした田辺さんの人生の変化をお届けします!

エコツアーに参加したのは、単純な好奇心から

奥尻地震の震災ボランティアを経験した田辺さんのその後を教えてください。

東京に戻って自動車メーカーに就職しました。そこで5年半働いた後、外資系のケミカルメーカーに1年勤めました。その次は、外資系コンサルティング会社に就職をします。

当時29歳で、30代はエキサイティングな仕事に挑戦したいと考えていたんです。コンサル会社なら能力を引き伸ばしてくれるんじゃないかと思いまして。

現在携わっている社会起業家のコンサルティング事業には、ここでの経験が活かされているわけですね。

そうですね。ここで2年9ヶ月、フル稼働で仕事をしました。発展途上国に関わる仕事にも就かせてもらい、エキサイティングな体験をすることができました。ところが、1日の睡眠時間が2時間から3時間くらいしか取れないほど仕事が忙しい。2002年には肩の激痛で夜中に目が覚めるようになって、退社させていただくことになったんです。

そして、有給消化中にナマケモノ倶楽部というNGO団体が主催するエコツアーに参加します。エクアドルのコーヒー農園を訪問するこのツアーに参加したのも、まったくの偶然。大学時代に奥尻島で出会って以来の友人である、井上英之さん(※注1)に勧められて、フェアトレードのコーヒーを出すカフェを都内にオープンしようと計画している藤岡亜美さん(※注2)と一緒に参加したんですよ。「おもしろそうだなぁ」くらいの感覚で。

※注1:NPO法人ETIC.ソーシャルベンチャーセンター プロデューサー

※注2:フェアトレード会社スローウォーターカフェ(有)代表環境NGOナマケモノ倶楽部理事

ここぞというときに行動している、という点がおもしろいですね。

同じタイミングで、ボストンにも行きました。ハーバード大学の大学院が近くにある英会話学校に通いまして。日本におけるソーシャル・アントレプレナー(社会起業家)の必要性を、そこで気づきました。

儲かるかを考えるより先に起業するのが社会起業

帰国した後にフォレスト・プラクティスを立ち上げるわけですね。

2003年1月に、ひとりで立ち上げました。2002年当時、日本にもすでに社会起業家はいたのですが、市民運動の延長線にあるような団体が多く、想いが先行で、経営には関心が薄い人たちと感じました。当然、食べていくのに苦労が絶えない状況で。わたしはそれを、コンサルティングの手法でなんとかできないかと思ったんです。

しかし、社会起業家をサポートしようにも、まだ数が少なかったわけですから、コンサルティングの事業化は難しかったのではないですか?

ええ。でもこれって、社会起業をするときの特徴なんですよ。社会起業は、机上でソロバンをはじいて儲かるかどうかを考えるより先に、いま目の前にある社会の課題に突き動かされてはじまるものなんですね。私の場合も同じで、社会起業家たちに経営ノウハウがないことに危機感を感じたのでいきなり会社を設立してしまいました。そのための十分な貯金もないし、誰かの弟子について勉強したわけでもない。事業計画をきちんと立てるタイプの経営者が聞いたら、とんでもないと思うでしょう(笑)。

勝算はあったのですか?

海外でのソーシャルアントレプレナーの潮流を知っていましたから、そのうち日本にも増えてくるだろうと思いました。でも、リスクは取らないとダメなんです。ハイリスク、ハイリターンです。まぁハイリターンではありませんでしたけどね(笑)。まず、身の丈でも、始めてみて、やりながら試行錯誤して、いろいろ考えればいいと思います。

「営業に行く電車賃がもったいない」

コンサルティング業務では、具体的にどのように社会起業家に関わってらっしゃるのでしょうか?

フルラインでやりますね。もう最初から最後までです。たとえば、給与が出ないという問題を抱えている団体があるとします。そこで、なぜ、を重ねてみるんです。

「なぜ、給与が出ないんでしょう?」「売り上げが少ないからです」「なぜ、売り上げが少ないんでしょう?」「そういえば、あんまり営業に行かないからです」「なぜ、営業に行かないんでしょう?」で、そうすると、営業に行くための電車賃がもったいないとか、隠れていた経営の課題が現れてきます。

なるほど...

それで一緒に営業に行こう、ということになるんですが、先方に見せるものが何もない。「困りました。田辺さん、どうしましょう。」「じゃあ、営業資料を作りましょう。」パワーポイントで、資料を作り始めて、「ところで、この事業のブランドはなんですか?」と質問すると、びっくりされますね。 「ブランドーッ!? そんなもの考えたこともなかった!」 さらに深堀りをしましょうということになり、 理念作りからはじまり、ミッションを考えて、そして3年間の事業目標を立てるんです。

その間、田辺さんの売り上げは出てるんですか?

出ませんね(笑)。私は、気持ち先行で、債務超過していそうな団体ばかりに営業に行っていました。で、どうしたかというと単年度契約だと無理なんです。1年では育たないので、3年くらいの期間で契約させていただきます。そして、2年目以降で、フォレスト・プラクティスの報酬も定義してもらう。年間の売り上げがいくらになれば、このくらいいただく、といった具合です。

向こうが倒れてしまったら......。

当然、こちらも倒れます(笑)。でも、最初にコンサルティングしたところがいきなりうまくいき 売り上げが2倍になり、給与が5倍になった。それで当社にも報酬が入ってきたんですよ。 この事例で自信を深めたというのはありますね。

Word of power

●「おもしろそうだなぁ」くらいの感覚で
●社会の課題に突き動かされて、社会起業ははじまる
●向こうが倒れたら、当然、こちらも倒れます

会起業家のコンサルティング業務と並んで、フォレスト・プラクティスの大きな柱となっているのが、オフィスマッサージ事業の「手がたり」。
次号では、社会問題に直面した田辺さんが、想いに突き動かされて「手がたり」を立ち上げた経緯をお届けします!

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