vol.075 森摂 / Mori Setsu

雑誌「オルタナ」編集長/NPO法人ユナイテッド・フィーチャー・プレス(ufp)代表  URL:http://www.alterna.co.jp/index.html

1986年3月
東京外国語大学スペイン語学科を卒業。
1986年4月
日本経済新聞社入社。
1998年3月
流通経済部などを経て、2001年までロサンゼルス支局長。
2002年9月
日本経済新聞社を退社。同年10月、ジャーナリストのネットワークである
NPO法人ユナイテッド・フィーチャー・プレス(ufp)設立、代表に就任。
2007年3月
環境と社会貢献と「志」のビジネス情報誌「オルタナ」を創刊。
詳しくは↓ 

【オルタナ編集部ブログ】
http://alterna.seesaa.net/

こんにちは!テトルの本村拓人です!! 今回から3回にわたって、雑誌「オルタナ」を発行するオルタナの森 摂さんにご登場いただきます。 地球環境についてや、社会貢献について、さまざまな雑誌が刊行されたり、特集が組まれたりしています。「オルタナ」も同じような内容を扱いますが、大きくことなるのはビジネスを切り口にしていることです。 口先でいくらきれいなことを言っても、事業として成立していなければ、持続的な活動はできません。日本経済新聞社で20年のキャリアを積んだ森さんは、よりよい社会を築くためには、ビジネスの視点が重要であることを説きます。 1回目の配信では森さんが日本経済新聞社を退社し「オルタナ」を立ち上げるまでをうかがいました。

「会社は、誰のものなのか」という大きな問い

それではまず、森さんが「オルタナ」を創刊しようと思ったきっかけをお聞かせください。

僕は20年、新聞社で働いていました。日本経済新聞です。日本の経済の仕組みのど真ん中で、なんの疑問も持たずにやってきました。1998年から2001年まで、ロサンゼルスで支局長を務めたのですが、そのときにパタゴニアの社長であるイヴォン・シュイナード氏に取材をする機会があったんです。

そのとき、質問をひとつしました。「会社は、誰のものか」という質問です。この題材は、よく日本のメディアで取り上げられています。経営者のものだとか、従業員のものだとか、さまざまな意見がありますが、圧倒的に、株主のものというのが支配的な見解ですね。ビジネスパーソンの常識的な答えです。

イヴォン・シュイナードさんはなんと答えたのでしょうか?

彼はね、「会社は株主のものではない」と言うんですよ。では、誰のものか。「地球資源のものだ」と彼は言うんですね。正確に言うとこれは、自然保護論者のデイビッド・ブラウワー氏の「死んだ地球からビジネスは生まれない」に影響を受けた言葉なんですけれども。シュイナード氏は、あらゆるビジネスは地球資源がないと成立しないものだ、と言うんですね。この話を聞いて、僕はまさに目から鱗でした。

もう少し、噛み砕いてご説明いただいてもよろしいですか?

つまりそもそも、会社は誰のものでもないということです。たとえば僕が編集する「オルタナ」にしても、印刷をしてくれる人、配送してくれる人、あるいは取材をしてくれる人、いろいろな人がいないと成り立ちません。当たり前ですけど、僕ひとりではなにもできないわけです。さらに言えば、多様な地球資源を使って作られているわけで、そう考えると、ビジネスは地球資源のものである、と。ビジネスをするうえでの哲学として、非常に筋が通っている、と僕は感銘を受けたんですよ。

売り上げの1パーセントを寄付するすごさ

その考えに触れたことが、どのように発展して「オルタナ」につながったのでしょうか。

そんな考えもあったのかと感心した僕は、シュイナード氏にその後も何度もお会いしました。そして、パタゴニアという会社のスタンスに共感するわけです。パタゴニアの歴史と理念をつづった『社員をサーフィンに行かせよう』という本を翻訳させていただいたのですが、"仕事中でも、好きなときにサーフィンをしに行っていいよ"という考えは、まず日本人には理解しにくいと思います。

楽しそうですけど、仕事が滞りそうでちょっと怖いですからね。

"そんな楽しい会社、成立するのか?"という感じですよね。もちろん、仕事はしっかりやることは前提になっていますよ。それだけじゃなく、パタゴニアは売り上げの1パーセントを地球環境保全のために寄付しています。日本経団連に「1%クラブ」というものが存在しますが、あれは税引き後利益の1パーセント。利益の1パーセントって、売り上げの1パーセントと比べるとそれこそ桁がふたつくらい違ってきます。そこにも、すごいなぁと思ったわけです。

そして、パタゴニアのような企業はほかにあるのだろうか、あるのならそれを紹介したい、と思いました。その想いが「オルタナ」創刊へとつながっていくわけです。

僕がいなければ成り立たないことをやりたい

日本経済新聞に所属したままで、そういった企業を紹介するわけにはいかなかったのですか?

そもそも僕には、自分のメディアを持ちたいという気持ちがあったんです。日本経済新聞は、僕が辞めても何の問題もなく記事が作られていきます。そうではなくて、僕がいなければ成り立たない、そういうメディアを持ちたいとずっと考えていたんです。

ロサンゼルス支局長という立場であっても、そのように感じるものですか。

そうですね。もっと大きな緊張感や責任感を求めたのかもしれません。いずれにせよ、そのタイミングでシュイナード氏と出会い、僕が発信したいテーマが固まっていきました。

新聞社を退職した後は、ジャーナリストをネットワークした組織を作ってらっしゃいますね。

2002年10月に設立したユナイテッド・フューチャー・プレス(ufp)ですね。ネットワークを作って人脈を広げて、仕事をこなしていき、また、これまで培った記者としての経験を後輩に伝えるためのNPOです。

ufpのみなさんが書く記事は「オルタナ」の大きなエンジンになっていますね。

2005年10月に発売された「週刊東洋経済」で、ロハスビジネスの特集を10ページほどやったんですよ。その記事でパタゴニアのような会社について、ufpのジャーナリスト仲間に調べてもらいました。15社くらいピックアップされたのですが、この15社はその後、「オルタナ」の原点になっていきます。

Word of power

●僕ひとりでは、なにもできない
●ビジネスは地球資源のもの
●僕がいなければ、成り立たないことがやりたかった

日本経済新聞社のロサンゼルス支局長という華やかなキャリアに決別して、フリーのジャーナリストへ転身した森さん。そうまでして、彼が作りたかった「オルタナ」とは、どのような雑誌なのでしょうか。次号は、「オルタナ」に託す森さんの想いにフィーチャーします!

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