vol.085 今村久美 / Kumi Imamura

NPOカタリバ代表理事  URL:http://www.katariba.net/

高校卒業後、慶應大学SFCに進学。高校時代には環境作文コンテストで全国4位に入賞したことも。2001年にSFCを卒業後、リクルートなどでアルバイトをしながらNPOカタリバを同じ大学生の竹野優花さんとともに立ち上げる。06年にNPO法人に。大学生が高校訪問をする「カタリバ事業」では 3500人のボランティアスタッフを抱える。

こんにちは!テトルの本村拓人です!! 全5回の配信でお届けするNPO法人カタリバ代表の今村久美さんインタビュー。今号はいよいよ最終回です。 今村さんは、カタリバを続けていくなかで、学校という空間に入っていくことの難しさを痛感します。しかし彼女は、粘り強いアプローチから、構造を知り、入り込む余地を見つけ、ジワジワと進出していきます。 彼女が生み出した高校企画カタリ場は、いまでは予約が殺到する人気イベントとなりました。"堂本剛に会いたい!"と考えていた平凡な女の子が、成功者たちが口を揃えて「事業化は不可能」といったことを見事に形にしてしまったわけです。 あきらめずに、強く願うこと。そして、常に行動に移してみること。 今回のインタビューを通して、そんな素敵なことを教わったような気がします!

教壇は聖域で、教職免許がなければ近づけない

リクルートと並行してカタリバも進めていたんですか?

そうですね。2002年の春からリクルートでバイトしながら、カタリバが実際に動き始めたのがその夏ですからね。リクルートの仕事で訪問するたび、裏名刺をわたして、カタリバの説明もしていました。

すると「進学ネットよりも、君の思っていることを形にしてみせてくれ!」と、おっしゃる先生が現れました。そして文化祭の中で実験的にイベントをやらせていただくことができたんですよ。

どのようなイベントだったんですか?

ブースを作らせていただいて、私の知り合いの20人ぐらいがスタンバイ。「自己診断ができるよ~」と高校生に呼びかけて、診断しつつ、話をしました。評判はなかなかよかったですね。

実績にもなるでしょうし、そこからは楽になりそうですね。

ところが、このイベントの後、実際に高校の授業枠をもらってカタリ場をスタートさせるまでには2年かかりました。授業を任せてもらうことはなかなか難しくて、その壁の突破ができなかったんですよ。

壁とはどういうものですか?

教壇は、やっぱり聖域なんです。先生の場所。教員免許を持っていない人は、なかなか近づかせてくれません。閉鎖的なところがあって、学校同士のつながりだけでなくクラス間の交流すらない場合もありますね。 それから、生徒への悪影響を危惧する先生もたくさんいらっしゃいます。

カタリ場の話しを聞いたおかげで「弁護士を目指していた生徒がロックバンドをやりたいと言い出したら、君に責任が取れるのか?」といったことはよく言われました。

多様な選択肢があることを知ったうえで考えてほしい

人生を変える責任を取れるのか、という問いは返答が難しいですね。

でも、この情報が溢れている次代に、先生が狭められた進路範囲しか見せなくても、子供たちは情報をとってきますよ。人生には多様な選択肢があるわけですから、必要な情報の提供があってもよいはずなんですよ。

やりたいことという軸でいったん自分を見つめて、それを実現するにはどうしたらいいか。だから今、勉強をがんばる。だから今部活をがんばる。目標を持つことは大きな原動力になります。 ただ、やっているうちに変わってもいいと思うんです。

未来の目標が決まらないこと、やりたいことが見つからないこと、それ自体は問題ないです。ただ、高校生活の今をもっと取り組むために、また、その後の進路選択を、きちんと自分で選択するために、いったん立ち止まって考えること、それが、大切。

レールに乗せられて大人になって、レールがない部分から自分でレールをひかなければならない。そこで初めてレールのひき方をしらないんだってことに気づく人、たくさんいます。だから高校生の段階で、自分で探す、自分で決める、だからがんばるのは自分だと、感じれらる。私はそう思います。

なぜ、自分はがんばるのか

なぜ、それに取り組むのか。

それを知ることはモチベーションにつながりますね。

たとえば、医者や弁護士、公務員などは、すばらしい職業とされていますが、それを子供たちに正しい答えとして提供する。だからそれ以外の選択肢は見せないようにする? 私は疑問に感じます。子供たちがいったんグルっと自分のことを考えて、そういった職業を目指すことに決めたのならば、とてもすばらしいことだと思いますけどね。それは大人が決めることではないはずです。

いろんな人に応援してもらえる団体になりたい

2004年になって、ようやくカタリ場を作っていけるようになったんですよね。

そうですね。でも、それも正攻法での営業からではありませんでした。いろんな高校の先生に話を聞いたんですが、いま言ったように敬遠する人もいれば、熱い先生もいらっしゃるんです。

もっと別の教育の形があるのではないかと考えているような。そういう先生は横につながっていて、他の学校の先生と情報を交換していたりしています。一緒にカタリバを立ち上げた同士の竹野優花と今村亮が、先生のネットワークをかけずりまわり、先生方の飲み会などにも参加させていただいて営業したんです。 なるほど。そういうところから、はじまっていくというのはよくわかる気がします。

それで、授業を任せてもらうことになったんですね。高校のほうから「ウチでもカタリ場をやってくれ!」というオーダーが入るようになったのは2005年くらいからです。

それにしても長い道のりです。思いがやっと実った、という感じですね。

現在は、年間80回くらい、カタリ場を開催しています。今の組織の実力ではこのくらいが限界に近いです。キャパシティに上回ったオーダーが殺到している感覚をもちます...今後の目標をお聞かせください。

働いている職員にとって、ボランティアのキャストとのコミュニケーションも仕事です。人に対してはコスト感覚を持った関わりはできない。だから、労働集約型の仕事なんですよね。このマンパワーをどうにかしなくちゃ、というのは課題のひとつですね。また、資金調達の仕方を少し変えようと思っています。これからは、寄付金営業も始めたいと思っています。 以前は、寄付に頼ることなんて絶対にいやでした。設立当初、企業の方にNPOと記載されている名刺を渡すと、寄付金目当てでしょ、なんていわれたことがありまして、それがすごく嫌だったからです。でも、わざわざ今、なぜ、それを選ぼうとしているのかというと、もっとみなさんに共感してほしいなと思ったからです。自分は間違っていないと信じて、ずっと続けてきたこのカタリバ。だから、たくさんの人に、賛同してほしいって思うようになりました。

これまでは、カタリバの付加価値、たとえば人材や、高校生マーケティングや、他社のイベント運営などビジネスにしてきましたが、これからは本来事業で経済的自立を目指して生きたいと思っています。選択と集中をしていきたい。もちろん、寄付金収入100パーセントを目指すわけではありません。いまゼロなので、 20パーセントくらいには持っていきたい。

Word of power

●意欲を持って物事に取り組む高校生を増やしたいだけ
●お金持ちがすばらしいということでしょうか?
●みなさんに、共感してほしいなって思ったからです

以上でカタリバ今村氏は終了です。次回もお楽しみに!

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