vol.096 上野友紀子
株式会社フルハシ環境総合研究所 エコモチ事務局長 URL:http://www.ecomoti.jp/
2001年4月〜
インターネット・ビジネス・ジャパン株式会社
事業内容:WEBサイト制作、システム開発および管理・運用
IT技術者の育成およびITに関する企業教育全般
IT技術者の人材派遣および経営戦略における人材採用コンサルティング
資本金:1億円 売上高:12億円(2006年度) 従業員数:65名
担当業務:WEBディレクター、インストラクター2004年5月〜現職
最近の活動実績・著書等
2007年1月より、企業人のエコ・モチベーションアッププロジェクト「エコモチ」コンソーシアムを立ち上げる。月1回の研究会活動を中心に企業共通エコポイントシステムについて検討。コンソーシアムへは計35社約60名が参加。「エコモチ」の事業化を2007年12月より開始。エコモチWebシステムを 2008年4月より本稼動させる。
こんにちは! テトルの本村拓人です!! 誰かに親切な行いをするときに、人は必ずしも見返りを求めているわけではありません。お年寄りに席を譲ったときに返ってくる「ありがとう」というひと言さえがあれば、お礼の品など必要ないのです。あるいは道ばたに落ちているゴミを拾ったとき。そこには誰からの感謝の言葉すらありませんが、心地よい風が吹きつけるような気持ちよさを感じることができるのではないでしょうか。 ほとんどの人は、なんの見返りも期待せずに、親切を行うことができ、そこに喜びを見いだすことができる。フルハシ環境総合研究所が運営するエコモチは、そのような"良識"が存在するという仮説のもとで、エコ活動とモチベーション向上を結びつけようという風変わりなプログラムです。 果たしてその仕組みとは...? エコモチの運営事務局長を務める上野友紀子さんにお話をお伺いしました!
まず最初に、エコモチとはどのようなサービスなのか、教えてください。
エコモチの正式名称は、企業人のエコモチベーションアッププロジェクト。略して通称エコモチです。仕組みをご説明すると、会社員の方々がエコアクションを実践するたびにシード(種)と呼ばれるポイントが溜まります。溜まったシードは、NGOやNPOに寄付できるんです。寄付金は企業が負担し、企業が用意した寄付金の額によって1シードが何円で寄付されるかは変わってきます。 シードの寄付を受けた団体は、集まった寄付金がどのように使われたかを寄付してくださったみなさんにフィードバックします。支援先の地域での変化や、現地から届けられる「ありがとう!」という声。それがみなさんのモチベーションに繋がる、という流れなんです。
なるほど。とてもおもしろい発想ですね。このアイデアは、どのようにして誕生したのですか?
買い物をするときにレジ袋を断ったり、公共交通機関を使ったりするとエコポイントがもらえる仕組みがさまざまな地域で行われています。ここでは、ポイントがたまるとエコ商品と交換できたり、お店でお金として使えたりします。 このエコポイントとかエコマネーと呼ばれる仕組みを企業内で出来る仕組みを作り、ビジネスとして動かせないかという話になりまして。ちょうどある企業から、車通勤する従業員の数を減らしたいのだが良い方法はないか、という相談があったのでひらめいたのです。 しかし、社内で「モノやお金がもらえるからエコアクションをするのではないよね」という声があがり、ポイントが自分にインセンティブとして返ってくる仕組みを疑問視するようになったのです。 これは社長の船橋の見方なのですが、 モノと交換しようと考える時点で、欲がからんでいるのではないか、と。船橋のオリジナルの言い方だと、「清流を濁らせる」そうなんですが、欲とからめてエコを促進しようとすれば活動そのものに濁りが出てきてしまう。 私たちがやりたかったのは、そういうことではありませんでした。エコ活動をするのは、なにかしらの見返りがあるからやるわけではないと思っていたんです。レジ袋を断るのは、なにかモノがもらえるからではないですよね。原点に立ち返って見つめたとき、欲にからませる方法論に疑問が残りました。
それはそうですね。レジ袋を断るときに期待することなんてありませんね。
2006年の夏、子どもがいじめにあって自殺をするというニュースがたくさん報道されていました。どうしてわたしたち日本人は、経済的に豊かで十分に幸せなはずなのに、自ら命を断ってしまう人がいなくならないんだろうって思いました。で、やっぱり物質的な豊かさではなく、心の豊かさが足りてないんじゃないんじゃないかなって。問題はメンタル面じゃないかと考えたんです。 乾いた心に雫がポトリと落ちて、潤っていくような。なにか、そういう活動ができないかと思いました。自分の存在価値をポジティブに捉えることで、世の中が繋がっていくような仕組みってないかな、と。それを踏まえてエコマネーやエコポイントの仕組みを見つめ直したときに、モノや金が自分に返ってくるのは違うかなと感じたんです。
見返りを期待しない活動が大切だということでしょうか。
そういうわけでもありません。たとえば、おばあさんに席を譲ったときに、"ありがとう"という言葉が返ってくれば、モノをもらっていなくても、うれしいですよね。 エコモチは、その勇気ある行動にシード(種)という価値を持たせました。そのシードが、途上国で飢えている子どもたちの支援に繋がっていく。そして子どもたちからの"ありがとう"という感謝の言葉や笑顔が返ってくれば、またしっとりと心が潤っていく。それをつなげていけば、世の中を変えることができるかもしれません。エコモチの背景には、そんな思いがありますね。
うまく繋がれば確かに美しい循環が生まれそうですね。
おばあさんに席を譲る行為はエコアクションではないかもしれないけれど、レジ袋を断ることなどのアクションをするときに、"自分がいま勇気を出せば、ご飯が食べられない子どもたちに役立つ"とか、"ワクチンの提供ができ、子どもの命を助けられる"といったことをイメージしてほしいんです。そうなれば、きっとみなさん、がんばってアクションしてくれると思うんです。本当の意味で、モチベーションアップになるのではないか、と。
エコモチが推奨する行動は、エコアクションに限られたものなのですか?
名前がエコモチ、つまり"エコ活動でモチベーションアップ"なんですが、エコに絞っているわけでもないんです。
ウェブサイトを拝見させていただきますと、国連が掲げる社会問題を網羅してらっしゃいますもんね。
幅広くCSR全般に範囲を広げて話しをしていたんですが、話を聞いた方々からわかりにくいという声をいただき、エコに絞りました。 エコモチを企業向けのプログラムとして作っていたときに、社会のインフラの中でどんな企業も参加できる汎用性の高いものにすべきだと考えまして。公共料金のように安く、誰でも手に入れられるようなものでなくてはならないと思ったんです。 家族でやっている小さな会社も、従業員何千人という大企業も、等しく参加できる仕組みを目指したんですね。ここまで考えたとき、スケールが大きくなってきたので、フルハシ環境総合研究所だけで話すのではなくいろんな企業の方を巻き込んで一緒に考えることにしました。
他の企業にも参加してもらおいうと考えたのは、いつ頃のことですか?
2006年の秋冬ぐらいですね。さまざまな方と意見を交換する中で、それならコンソーシアムをやったほうがいいんじゃないかという声が上がりました。さっそくコンソーシアムを立ち上げ、企画書を書いて、取引先や過去にお付き合いのあった企業さんに声をかけました。
だいたい何社くらいに声をかけたんですか?
参加企業10社を目指していて、その3倍くらいの会社には声をかけたと思います。
声をかけるときに、選定基準としたことはあったのでしょうか?
お声がけさせていただいたのは、大企業が中心となりましたね。CSR担当の方がいらっしゃるような会社ほうが意図が伝わりやすいと思ったのですが、そういった部署があるのはやはり大企業が多かったので。
なるほど。環境意識の高い担当者と話をする場を作れば闊達な意見交換ができそうですね。
最初、コンソーシアムは協賛金をいただきながら動かそうと考えました。ところが予算を割いていただくことがなかなか難しくて、参加者が見込めなくなってしまったんです。時期を待っても仕方がないので、手弁当の会議にしました。"手弁当なら"と、続々と手をあげてくださる方が現れましたね。
コンソーシアムは、どのような場であると伝えていたのですか?
月1回、研究会をいたしますのでご参加くださいね、と。それから、メーリングリストで都度ご意見をいただいたり、アドバイスがいただきたいときにはご協力をお願いします、と。 弊社にとっても、コンソーシアムをやるということは初めての試みだったので、どんなアウトプットをしてよいのかもわかりませんでした。とりあえずは、集まったみなさんで、アイデアを出し合えるようなことができればなと。どういった形のものであれ、スタートさせたいという気持ちのが大きかったんです。 味の素さんやソニーさん、あいおい損保さん、NECパーソナルプロダクツさんなど、最初は10社くらいのご担当者のみなさんに集まっていただきました。コンソーシアム自体は、回を重ねるごとに、顔を出していただく方も増え、全部で7回行ったなかで、最終的には35社くらいにご参加いただけました。
コンソーシアムでは、どのようなお話をされたのでしょうか?
第1回目に、ゴールを描くことからはじめました。モチベーションを上げることがいかに重要であるかを確認して、みなさんと一緒に、エコモチの最高の状態がどういうものなのかをワークショップ形式で話し合いました。ワークショップ自体はセミナーなどでよく行いますので、その技法を応用しました。
おのおのが自社のCSRを考えるのではなく、エコモチという仕組みについて検討していることがおもしろいですね。
そうですね。でも、エコモチに共感してくださっているみなさんに集まっていただいているという前提がありましたので。
みなさん、会社の看板を背負っている参加されているわけではなさそうですね。
もちろん会社を代表していらしていることは事実なのですが、エコモチの会議の場では会社員というより、個人で参加している意識をみなさんお持ちだったと思います。だからだと思いますが、みなさん自分の立場は横に置いておいて、いろんなアイデアや意見を出し合うことができました。 それに、エコモチのコンソーシアムに入ったからと言って、導入していただく必要はないというスタンスは表明していました。ゆるい集まりにしたことが、なんでも言える空気を作ったのかなと思います。 とはいえ、これからの時代には、個人ででもそのような集まりに参加したいと考える人の存在は重要になりそうですよね。きっと会社にとっても大切な人材になると思います。 コンソーシアムに参加していること自体が、すでにアクションが起こせる人の証拠になっていますからね。そのようになんでも言える空気があったので、シードにつながるアクションを社会貢献的な活動全般に広げるのか、それともエコに絞ったほうがいいのかといった、基礎的なところから徹底的に話し合いました。実験的にテストランニングしてみたい、とおっしゃる方が現れたら、その方法を検証してみたり。
会議をやって、ブラッシュアップされた部分はありますか?
最初に私たちが考えていたモノは、エコアクションを起こせばシードが発行され、とった行動を振り返り、さらに次のアクションへ落とし込んでいく、という流れのものでした。ところが、マーケティングでいう、PDCAで考えると、これでは最初のP、つまり自分で計画する部分がありません。話し合った結果、Pの要素として、自分で行動したいエコアクションを選択できるようにしました。 そのほか、エコモチに対して企業が支払うことができる予算感や寄付金の配布先についてなど、さまざまなことがここで決定されていったんです。
企業では、寄付予算というものが予め決定されているものなのでしょうか?
もともとNGOと連携しているところは、ちゃんと予算も決めてらっしゃるところもありますね。エコモチは、新たにこの活動のために予算を申請していただくつもりでいました。寄付活動をしていない会社に、予算を確保していただこうと考えていたんですね。 でもね、やっぱり、大手企業さんだとここで引っかかることが多いんですよ。寄付ってなると社内の上のほうまで許可を取って行かなくてはならないことが多いんです。会社の顔で行うことですので。最終的なハンコをいただくまでには、たくさんの人をかいくぐる必要がありますので、ここが難しい。 大手の企業さんですと、すでに独自の寄付活動をやっていることもありますし、これまで支援していた先と、エコモチが提案する支援先の活動内容がかぶってしまっていて、バッティングすることなんかもありますし。 これまで活動してきた感触では、中小企業さんやいままで寄付活動に力を入れてこなかった企業さんには、参加していただけることが多いですね。
なるほど。いろいろ難しいものですね。
それから、寄付するにしても、なぜそこに寄付するのかというストーリーがきちんと描けていないと厳しいんですよ。"なぜ、その団体に寄付するのか"という背景がしっかりしていなければ、許可は下りません。 ただ、エコモチの場合は、単に寄付してほしいと思っているわけではなく、社員のモチベーションアップも大きな目標にしているんです。だから、社員にフィードバックがあるのだということを、いかに伝えられるかが大切なんですよ。エコモチような仕組みを取り入れているところは、ほとんど聞いたことがありません。そこに価値を見いだしてほしいですね。
●心の豊かさが足りてないんじゃない?
●企業の方を巻き込んで、一緒に考える
●これまでにないアイデアに価値を見いだしてほしい
コンソーシアムで検証を重ね、いよいよエコモチはテストランニングを行うことになります。机上の空論として終わるのか、それとも、社会に変革を起こす仕組みであることを実証できるのか。上野さんは期待と不安を胸に、テストランニングの結果を待ちました…。
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Wrote 2009.08.15 << 前のインタービュー | 次のインタービュー >>