vol.109 中島康滋
特定非営利活動法人コモンビート 発起人/代表理事 URL:http://kojinakashima.com
1972年名古屋市にて生まれる。
幼少期、兼業農家だったこともあり自宅で採れた米や野菜を食べ自然と共に育つ。
3歳からピアノや絵画などの芸術分野に興味を持ったため、
その後、作曲や映像・デザインなどの創作活動を行うこととなる。
1992年、音響技術専門学校在学中の19歳で起業。
インターネット創世記の当時に音楽配信技術情報サイトを開設し話題となる。
1997年、「音のデジタル流通革命によって、
音楽家の音楽創作・発表活動を開放する」という社会的ミッションを持ち会社を創業。
国内外インディーズレー ベル数百を集め、日本で初めて著作権保護された音楽配信事業を始める。
その後、M&Aにより日本最大級の音楽配信会社と合併。
2001年、約20カ国を100日間かけて地球一周を果たす。
旅を通じ「文化と教育」について関心を持ち、帰国後は社会教育分野へと活動をシフトする。
翌年、携帯で自己成長を支援するコンテンツサービス事業の会社を設立し、10万人以上から支持を受ける。
2003年、感受性と情熱を育て社会で活躍する人材を生み出す「NPO法人コモンビート」を設立し代表理事に就任。
ミュージカルを手法とした共育プログラムを提供し、これまで1000人以上を輩出、3万人以上の公演動員を行う。
多くのベンチャー起業経験と社会活動の経験から、「社会企業化支援」と「社会教育環境の整備」のテーマで活動する。主に、感情教育/社会教育に関する事業 支援、脳科学による適性診断/人材教育会社の設立、社会企業化コンサルタントなど、事業の創出という手法により多くの企業や団体と協働し活動を行っている。
こんにちは! テトルの本村拓人です!!
今回から3回にわたって、NPO法人コモンビートの代表理事、中島康滋さんにご登場いただきます。
人前で歌ったり踊ったりしたことのない素人たちが集まり、一緒に泣いたり笑ったりしながら舞台を作り上げる。コモンビートは、「A COMMON BEAT」というミュージカルのプログラムを使いながら、参加者たちにさまざまな気づきや達成感を提供しています。
たとえば10代の学生の頃に持っていた弾けそうなエネルギーをいまでも感じることはあるでしょうか? いったいあの頃のパワーは、どこへ行ってしまったのでしょう。ひょっとして、本当に消滅してしまったのか、それとも、自ら眠らせてしまっているだけなのか......。
「A COMMON BEAT」の舞台に参加した人々の躍動感や笑顔を観ていると、結論としては、眠らせているだけ、と思わざるを得ません。何もあきらめる必要はない。もっともっと、楽しいことは作っていける。中島さんのお話を聞きながら、そんなことを感じました。
コモンビートというと、ミュージカル公演がひとつ大きな顔になっているイメージがありますね。このミュージカル公演について教えていただいてもよろしいでしょうか。
「A COMMON BEAT」ですね。これはアメリカのUp With Peopleという団体が作った作品なんです。僕はこの作品をピースボートの中で実施している際に参加したことがあります。僕と共同でNPO法人コモンビートの代表理事をしている韓朱仙(ハン・チソン)は、もともとUp With Peopleのインストラクターだったこともあり、その後ピースボートに呼ばれてプログラムを実施していたのです。 コモンビートでの公演の大きな特徴は、公募で集まってくれた素人のスタッフとキャストが、共に舞台を作り上げていくことでしょうね。「A COMMON BEAT」の公演スケジュールは、1年半くらい先まで決まっています。そのくらい早く押さえないと、会場が取れないんですよね。 会場取りが済んだら、次はスタッフ集めです。だいたい100人くらいに集まってもらいます。スタッフが決まったらスタッフに研修を行いながら、今度はキャストの募集をかけるんですね。キャストの募集をかけると参加者が殺到して、今じゃあっという間に定員に達してしまいます。立ち上げた頃は本当に人が集まらなくて、定員に達するのに1ヵ月くらいかかっていたのですが、最近だと30分もかからないうちに埋まってしまいますね。
募集はオフィシャルウェブサイトやメールマガジンで呼びかけるのですか?
「A COMMON BEAT」は練習期間も含めて1年のうち3ヵ月しかやらないのですが、残りの9ヵ月の間には、さまざまなところでパフォーマンスをする機会があるんですよ。それが企画という部分です。楽しいイベントを仕掛けたり参加したりしながら、観に来ている人たちに、「今度、一緒に舞台を作らない?」とアピールすることもありますね。パフォーマンスの披露すると同時に、営業もしているわけです(笑)。もちろんウェブやメルマガでも募集告知はしていますよ。
「ミュージカルを観に来ない?」じゃなくて、「一緒に舞台を作らない?」ってところがおもしろいですね。
やっぱり観ているよりやったほうが楽しい、ということです。実際にやってみなくちゃわからない。スタッフやキャストのスキルもたくさんのイベントなどを通じて上がっていくわけですし、それに、何かやってみたいと思っている人は多いはずなんです。カルチャースクールでもなく、ボランティアでもなく、社会的に意義があって、楽しくて少し厳しいようなものに触れたいと、みんな思っているんですよ。しかも最後には、5000人近いの観客を前に舞台を披露してスポットを浴びるわけですから、充実感はあると思います。
それにしても、素人のみなさんが集まるのですから、短期間で舞台を作るのは難しいのではないですか?
最初はやっぱり、舞台で見せられる状態とは程遠いですね(笑)。1ヵ月目はみんなで集まって自己紹介からはじまり、いろいろなアクティビティを行いながら、仲間として互いを認め合っていくんですよ。僕らは教育のことを、共に育てると書いて"共育"と呼んでいるのですが、「A COMMON BEAT」を作るときに先生はいません。共に考え、教え合う仲間がいるだけです。それで力を合わせてよいものを作ろうとするから、参加した誰もが出し惜しみなんてしません。 2ヵ月目に入ると、舞台における「役」にようやくトライできるようになってくるわけです。アクティビティのハードルも高くなってきて、たとえば、10人くらいチームを作って、シナリオから演出まですべて任された寸劇をやったりするんですね。結局はそれを大きくしたものが「A COMMON BEAT」ですから、縮小版をやってみれば、作品を作る難しさや演出ということの意味などが自らわかってくるのです。
小さなことでも、同じ目的意識を持って取り組めば、チームワークはできてきますよね。

ほかにも、「こっそりバディ」アクティビティーはおもしろいんですよ。
バディ、つまり「相棒」という意味なんですが、みんなにそれぞれひとりずつ影で見守っている「バディ」がいるんですね。自分を見ているのバディが誰であるかはわからないし、自分が見守っている相手にもわからないようにします。
そして、その人の魅力を見つけ、応援していく・・・影でこっそり応援するわけです。たとえば、手紙を届けたりする人もいます。「今日はこんなシーンで輝いていたね」とか、相手の良いところを見つけ出して応援メッセージが書いてあるなどです。つまり自分がいつも誰かに見られていて、しかも応援されている。どんな状況でも目に見えなくとも応援していてされているんだということを静かに学ぶアクティビティーですね。
とえばこのような相互の共育の仕組みがいっぱい用意されています。
しかもその時に集まったキャストに応じて常にアレンジしていますので同じことをマニュアルのように繰り返すことはありません。
大切なのは、いかに自分で考え対応していくか、またやる気が湧いてくるということに気づくがということです。情熱を持って取り組めばきっと新しい自分に気づけるはずだ、と。「A COMMON BEAT」はそこに賭けているわけです。
しかし、数ヶ月で、舞台に上がれるまでになるものなんですか?
まあ、それなりというか、かなり大変ですよね。ただ、プロに求めているような完璧な演技を求めているわけでもありません。だから細かい技術指導を1つ1つすることはしませんし、それをしている時間もありません。たとえばステージ上で別れのシーンを演じているとしますよね。そのときに、演者には別れをイメージする場面をみんなで考え話し合い、共有し意見を出し合い発想してもらっています。たとえば、この別れは悲しいのか悔しいのか、どんな過去や背景があり未来があるのか、など。お客さんが実際の舞台で得られる演出イメージと、キャストが心にイメージしていることが違っていることもありますが、それはプロでも一緒です。ただ、それを演技として教えず想像力を膨らますことによってその気持ちを強く表現することができれば、それは演技となって現れてくるものなのです。 そしてとにかく考えなくてはいけないのは、いかに楽しんで舞台を作るかということなんです。僕らスタッフも楽しみめるような演出やしくみを日々考えて応援をしていきます。最終的にどんな舞台が出来上がるのか僕らにさえわかりませんが、楽しむことさえ忘れなければいい100日後を迎えられると思います。
パンフレットを拝見すると、参加したみなさんはとってもいい笑顔をなさっていますね。
「A COMMON BEAT」に参加する前と後では、ガラッと変わる人も多いですね。特に、笑顔がとってもよくなるんです。パンフレットにあるような笑顔は、参加してしばらくしてからじゃないと撮れないですね。(笑)
「A COMMON BEAT」に参加したキャストは、参加した後、どのような感想を抱くのでしょうか?

一番よく聞く答えは、「感謝するという気持ちや機会が増えた」ということですね。キャストは舞台に上がる、いわば「A COMMON BEAT」の主役になるのですが、彼らがステージに上がれるように支えてくれる人たちがたくさんいるんです。また、100人が100日でひとつのステージを作る中では、いろんな苦しみや喜びがあり、それをみんなで乗り越えた先に、ようやく舞台は完成するわけです。そのことに気づくんですよ。 演じるストーリーにも交流やぶつかり合い(戦争)のシーンがあるのですが、それって実は社会で起きていることと一緒なんですね。ぶつかり合うことで関係性が強まるのは、なにもこの舞台だけの話じゃない。実際にぶつかり合う経験をするなかで、キャストはだんだんとそれがわかってきます。お互いが理解し合おうとしなければ、協力関係を築くことはできないし、一人でやろうとしても限界はある。そんな中で誰かを応援したい気持ちがあることや誰かに応援されている自分の存在に気づくんですね。 そこに気づくと、いいかげんに生きていくことが恥ずかしくなってくるはずです。心のスイッチが切り替わったキャストはとても前向きになりますし、思いやりも芽生えます。近頃の学校で行われる演劇の発表会なんかでは、大勢が主役をやりたいと、特に親がそのような主張するからというような理由で、シンデレラが5人もいたりするらしいじゃないですか。「A COMMON BEAT」では絶対にそのようなことはありません。演出担当が苦労して配役をするのですが、その配役を全力でやりつくすんですよ。どんな役割だって必要なんですから。その状況下で、いかに楽しく自分の役を全うできるかがとても重要なんです。これは社会に出たって同じだと思いますからね。
ステージを観たお客さんの様子はどのような感想を持つのでしょうか。
よく聞く感想は、「本当に素人なの?」というものですね。もちろん、プロが舞台を作れば、「A COMMON BEAT」より見た目に綺麗なものはできるかもしれませんけどね。しかし、素人が集まり一生懸命作り上げた舞台には、プロの舞台とは違うエネルギーが満ちています。たとえば途中で戦争の場面があるのですが、シーンと静まりかえった中、かなり多くの客席からすすり泣く声が聞こえてきたりします。これはキャストが教えられた演技をしているのではなく、自ら生み出された感情のぶつかり合いを舞台上でしているので、そのことが伝わったのだと思うのです。このキャストのエネルギーと客席の感動がつながると、本当に一体感のある空間が生まれます。
ひたむきさは、確かに感動を生みますね。
キャストたちは本当に活き活きしていますよ。たとえば、会社で働いている同僚がほんの数ヶ月の間にどんどん変わっていって、いったいどうしたんだろうと思っていたら、「A COMMON BEAT」の招待状をくれた。で、舞台を観に行ったら職場では見たこともない表情でステージで歌い踊っていた、なんてことがあるんです。「なんだこれが原因だったんだ」ってびっくりされるそうです。 キャストたちにはお互いに自分が呼ばれたいニックネームで呼び合い、舞台での役割があるなかでぶつかりあったりするわけですが、ある種の非現実的な状況の中でチャレンジしていきます。つまり、日常の中では、かわしたり、よけたりしていたことであっても、逃げずに真正面からぶつかっていくという体験にチャレンジすることができるんです。その体験を通じて、よりよい人間関係を構築するための経験を積み重ねていくんだと思うんですよ。
コモンビートの収益構造は、どのようになっているのでしょうか?
ほとんどが興行収入です。今のところ助成金はいっさいいただいていません。キャストやスタッフからも参加費用を頂いていますし、会員の会費もあります。みんなからお金を頂いて、「学びの場」として運用しています。。僕はもともとベンチャーを経営していて、その会社が合併して辞めたあとピースボートで世界をまわりました。そして戻ってきてからこのNPO法人というやり方を知りました。調べていくうちに、日本のNPO団体が非営利に囚われて、経済や経営の仕組みがうまく回らないことで非常に財政的に苦しい状況であることも同時に知りました。 僕には経営の経験があったのですがそれまでは営利ばかりだったので、「じゃあNPOという非営利に挑戦してみようかな」と僕にとってもチャレンジだったのですが、、、、これが思ったよりずっと大変でした。営利でやるほうが楽なこともいっぱいあって。ある意味で両者はまったくの別物ですね。営利の場合で創業社長系は、経営はトップダウン型が多いですよね。しかしNPOは完全にボトムアップ型なので、総意を得ながら進めなくてはなりません。みんなお金じゃないところでかかわっているので、その気持ちに応えられなければ関わりそのものが終わってしまうんですよね。でも、そこは両方を同時に経営していて営利企業にもとても重要だと感じたし、企業だって本来そうあるべきだということにも気づけました。
●実際にやってみなくっちゃ
●情熱を持って取り組めば伸びる
●ぶつかり合うことから逃げない
見ず知らずの人たちが集まり、ステージに立つために、あるいは裏方として支えるために、心をひとつにして作り上げる「A COMMON BEAT」。どんな舞台なのか気になりますね。気になったら観に行かなくっちゃ、いやいや、それより参加しなくっちゃ! さて、次号は、コモンビートを運営する中島さんが、この事業にどのような理念をお持ちなのかにクローズアップ!
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Wrote 2009.07.28 << 前のインタービュー | 次のインタービュー >>