vol.110 中島康滋
特定非営利活動法人コモンビート 発起人/代表理事 URL:http://kojinakashima.com
こんにちは! テトルの本村拓人です!!
全3回にわたってお送りするNPO法人コモンビート代表理事の中島康滋さんインタビュー。今号は第2号です。
見ず知らずの人たちが100人集まりステージを一緒に作り上げていくコモンビートの活動は、完成した舞台はもちろんですが、それが作り出されていく課程にこそ大きな意味があります。泣いたり、笑ったりしながら、互いに支え合って産み出す充実した人間関係。参加すれば、どのようなことが体験を通じて理解できるのか、非常に興味深いところです。
今号は、コモンビートを運営する上での中島さんの理念を伺いました。人間が持つ底知れない可能性を信じる中島さんの考え方には、誰もが共感を覚えるのではないでしょうか。
どうすればいいのか、すぐには思いつかないかもしれません。しかし、みんな気づいているはずです。よりよい未来を作っていくことができるのは、ほかならない自分たち自身であるということを。
中島さんは、コモンビートをどのような想いでスタートさせたのですか?
私にとってNPO法人コモンビートは、いまから50年後の社会に向けて仕掛けている事業です。よりよい50年後に向けて何ができるかということを考えてスタートした事業なんですね。
50年後ですか。それはいったいどういう意味なのでしょうか?
いま、資本主義が壊れかけているとよく言われていますよね。実際には、もう壊れはじめているのかもしれない。ヴァージングループの代表リチャード・ブランソンがガイア資本主義という言い方をしていますが、そもそも現代において資本とは何かという話はよく取りざたされています。社会的な資本と、個人の資本という考え方がある中で、昔なら、お金なのか、それともカラダなのかといったテーマで語られていましたが、もっとメンタルな部分に関係する資本があってもよいのではないかと僕は思うんです。
メンタルな資本ですか。
そうですね。人はお金のために働いているのかと言えば、実はそうでもなかったりします。このような考え方は、いまでもちらほら見かけることはできますが、50年後にはもっと広く受け入れられ、世の中は激変していると思うんです。経済構造も全部変わってくるんじゃないかと僕はにらんでいるのですが、その新しい社会に向かって、コモンビートは個人と社会の心の資本を育んでいきたいと思っているんですね。
現代は希望を感じづらい社会になってしまっていますが、50年後には感じられる社会になっていそうですか?
グローバリゼーションの旗印のもと、世界はずっと拡大路線を追求して走り続けたわけですが、しばらく前から、時計の針が逆に進みはじめましたよね。たとえば地域の重要性がクローズアップされ、さらには個人の可能性にも期待がかけられるようになってきた。その瞬間をみんなが体験しましたよね。
"その瞬間"、と言いますと?
中国の食品問題や秋葉原の殺傷事件など、世の中がおかしくなってきているなという予兆はありましたが、決定的瞬間はサブプライムローンの崩壊じゃないでしょうか。あれで世界がひっくり返ってしまった。
僕がインターネットで起業して、音楽配信事業をやりはじめたのはブラウザがまだネットスケープ・ナビゲーターになる前のことでした。モザイクというブラウザの頃です。僕は以前、ヤマハで働いていたのですが、そのとき大学とインターネットを結んで、ニューヨークからジャズの音楽ファイルを何時間もかけてダウンロードしていました。当時も時代が変わっていく予感はあったのですが、2007年くらいから再び変革のときを迎えているのを感じますね。ウェブという大きなメディアの中で、個人の存在に光が当たることが本当に多くなったし、その集合としてウェブがあることが改めて認識されたように思います。そしてバーチャルな世界で培われてきた個人の価値が、リアルな世界でもクローズアップされてきているように感じるんですよ。
個人の力ですか。
つまり、昔は企業という共同体にコミットすれば終身雇用という制度が迎えてくれたわけですよね。しかし、その制度が安心できるものではないことがわかって、個人の力でなんとかしなくてはならなくなってきた。情熱を持った個人が立ち上がれる状況になったとき、この個の集合がすごいパワーを発揮しはじめたんだと思うんですね。
企業という傘の下では、100人で100のエネルギーを作せなかったはずなのに、情熱を持った100の個が集まれば、1000や1万のエネルギーを生み出せる。コモンビートもそうなんですが、100人が100日かけてものを作るとすごいことができてしまうんです。また、個人の力を尊重しているから、同じものを作ろうとしてもそのときどきの100人によって、まったく違うものが生み出されるんですよ。インターネットのシェア争いの世界でいえば、ヤフーやマイクロソフト的な方法とグーグル的な方法の違いに似ているかもしれませんね。もちろん、ヤフーやマイクロソフトがあったからこそのグーグルなのですが。
コモンビートは、人材を育てるということに力を注いでいらっしゃいますよね。

コモンビートの活動テーマは教育ですからね。よい未来を築いていけるのは他にもなく人間本人ですよね。いま抱えている地球環境をはじめとしたあらゆる問題は、人の感性や情熱次第で方向性が決まるじゃないでしょうか。たとえば、マイ箸を持つことはいいことだと思うんです。エコバックを持つことも同じですね。でも、じゃあマイ箸とエコバックを持てば、環境問題への取り組みとしてOKかと言えば、そうでもありませんよね。それもみんなわかっています。
必要なのは、根本的な意識変革を図り、自ら気づいて行動できるようになることだと思うんですよ。そういう人が増えていけばきっと未来には期待が持てる。だからこそ、人材育成が重要なテーマになってくるんですね。まあ、「よりよい未来を作る人材を育成する」なんて、じゃぁあなた(私)はどれほどの人間なんだ?、ということを考えると、ちょっとおこがましいような気もするのですが、誰かに習うとかモデルがいるわけでもない活動なので、それぞれがそうなって欲しいという願いでもあります。
コモンビートの理念としてはもうひとつ、そういった人々が活躍できる場作りをしていきたいなと考えています。リチャード・ブランソンが言ったガイア資本主義ではありませんが、お金のためだけでなく、価値ある人生のために働ける場を作りたいんですね。人と人の間に雇用関係が生まれ、働く人のやる気が発揮され、幸せになれるような、そういう事業のスタイルは必ずできると思うんですよ。まだ、それがどのようなものかはっきりと形は見えていないのですが、人材育成、そして場作り。その両面をやっていけば、いずれは出てくるのではないかと思っているんですよね。
コモンビートを通じて、どのような人材を育成しようとお考えなのですか?

大きく言えば、感受性と情熱を持った魅力的な人を育てることですね。我々には古代からの過去があり、その延長線上に現在があります。当然、未来は現在から続いていくもの。だから僕らが作っていかなくちゃならないんですよね。我々は、過去から届けられたバトンを、未来へ受けわたす存在なんですよ。
未来へバトンをわたすとき、当然やっておくべきことはあると思うのですが、それを「つらい気持ち」でやっていてはダメだと思うんです。苦しい気持ちでやれば、苦しい未来ができあがってしまうかもしれない。それは絶対に嫌ですよね。やっぱり未来は明るくて楽しくないと。となると楽しくバトンをわたしていく必要があると思っています。
楽しい未来を作る人は、やはり様々な面での「バランス」を上手に考えて行かなくてはならないと思うんですね。世の中のありとあらゆる生物が共存し、その中で人間も生きていることを理解しなくてはならない。それを可能にするのが想像力であり、感受性なんです。ものごとを感じるアンテナを研ぎ澄ませながら、自分らしく生きていくことが重要になってくるのだと思います。
もうひとつの要素である情熱が必要だと思うのは、これがないとものごとが作り出せないからです。そしてモチベーションを継続できるのも、この情熱があるからです。目の前にあるすべての造形物は、誰かの情熱が産み出したものですよね。何度も失敗を繰り返しながら、それでもあきらめなかった気持ちが形になっている。古いクラシックが僕らの時代にまで受け継がれているのは、それを受け継ごうとした情熱を持った人がいたからでしょうね。
だから私たちはその情熱を持って未来を作っていかなくちゃならない。その気持ちが大切だと思うんですよね。
●人は決して、お金だけのために働いているわけじゃない
●個人の存在に光が当たっている
●楽しい今が、楽しい未来をつくっていく
NPO法人コモンビートの中島康滋さんインタビューは、次号がいよいよ最終回。十代の頃に起業した会社を、世間の注目を集めるITベンチャー企業へと育てた中島さんが、なぜコモンビートを立ち上げるにいたったのか。移り変わる中島さんの人生のストーリーをお送りします。
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Wrote 2009.02.20 << 前のインタービュー | 次のインタービュー >>