vol.114 國田 かおる

Carbon to Forests代表  URL:http://ctf.jp/

1979年7月生まれ
1985年~1990年 小学校時代をNYで過ごす
1994年~1996年12月 高校時代をシドニーで過ごす
2001年3月 慶應義塾大学法学部法律学科卒業
2001年4月 東京ガス株式会社入社
2002年4月 京都大学大学院 地球環境学舎入学
2004年4月 松下政経塾入塾
2006年9月 YENから派生した食事会「エンカレ」をスタート
2008年2月 藤崎事務所に入社。現在に至る

こんにちは! テトルの本村拓人です!!
今号から全4回にわたり、Carbon to Forests代表の國田かおるさんにご登場いただきます。
國田さんは環境コンサルタントとして株式会社藤崎事務所にお勤めする一方で、カーボン・オフセットに関する普及啓発団体、Carbon to Forestsの代表をされています。今までに『日本をロハスにする30の方法』(講談社/2006)や『ロハスの教科書』(明治図書出版/2007)といった本を共著で出された他、『カーボン・オフセット』(工業調査会/2008)という編著や新聞、雑誌、企業の社内報などにもエコ関連の文章を寄稿され、環境という切り口で世の中を良い方向に変えていこう、と奮闘されています。
最近は仕事でされているコンサルティング内容とNPOの活動内容が重複することも多いとのこと。企業や自治体からのセミナー講師依頼も多いそうですが、その際「どちらの立場でお話しましょうか」と確認してからお話されるそうです。 環境問題に関心があっても、仕事が忙しくてなかなか取り組めない。環境の仕事に興味があるけど何をしたらいいのかわからない。そんな悩みを持つ人にとって、仕事と活動を区切らない國田さんのライフスタイルは何かしらのヒントをもたらしてくれるかもしれません。
今回は、ロハスや松下政経塾、CTF(カーボン・トゥ・フォレスト)といった國田さんのまわりに散りばめられたキーワードを頼りに、その活動の軸となっている考え方などを尋ねていきます。

ロハスで一番大切なのは、持続可能なこと

──國田さんといえば、『日本をロハスに変える30の方法』という共著の本があり、ロハスな人というイメージがあります。このロハスとは何か、まずはご説明いただいてもよろしいでしょうか。

はい。ロハスとは、Lifestyles of Health and Sustainability (健康で持続可能なライフスタイル)の頭文字を取ったものなのですが、その中で一番大切なものは、サステナビリティのS、つまり持続可能であることだと私は考えています。無理して健康的な暮らしを取り入れようとしても、持続させることって難しいんですよね。だから出来ることから取り組めばいいと思うんです。"じゃあ、できることってなんだろう?"と考えること。それがロハスの第一歩だと考えています。

──どのようなことを指針に、"自分のできること"を考えたらよいのですか?

ひとつ核になるのは、自分以外の人の立場に立って考えるということです。対象は人だけでなく別の生物でもいいのですが、なにかに思いやりを持って接することが最初の一歩で、どのくらいの思いやりのレベルなら持続できるのかということを考えることがロハスだと思っています。
例えば緑を育てながら、毎日日当たりのこととか、水のこととか考え始めると、暮らしの中でばらばらだった要素がつながる瞬間があるんです。季節の移ろいに感謝すること、そういった感性を持つことが、実はロハスだったりするんじゃないでしょうか。
「ロハスはお金がないとできないんですよね」とよく聞かれるのですが、そうではありません。ロハスはセレブの人が楽しむもの、というイメージが先行してしまったみたいですね(笑)。ロハスと言えば富裕層に売れる!みたいな誤解が一時あったのは事実です。今ではなくなったと思いますが、、、
ロハスはお金よりも時間とか価値観について考えないと、「できない」かもしれません。 私も実はそうだったのですが、本気でロハスな生活をやろうとすると、忙しくなってしまうんですよ。健康で持続可能なライフスタイル。それを実践するために、あれも知りたい、これも知りたいという状態になってしまい、交流の場に呼ばれれば参加するし、企業の方とも話をする機会が増えて、振り返ると結局ヨガのヨの字もできていない。
そんな状態でも"せめて食事には気を遣いたい"と思ってオーガニックなものを食べようとしても、夜遅くまで接待があり、「國田さん、ウチの名産の牛なんですが、ぜひ食べてみてください」なんて言われると、「すみません、お肉あまり食べられないんです」とも言えないし、かといって残すともったいない。心も体もちっとも持続可能でなくなり、"ああ、これはロハスじゃない! これじゃあいけないのに......"、なんてことを思ったりして。

──ロハスとはゆったりしたイメージがありますから、確かに違う気がしますね。

そうなんです。だから、身の丈を知り持続させることがまず大事なんですね。また、ライフスタイルズのLなんですが、これはライフスタイルが十人十色であることからわかるように、いろいろなカタチがあっていいと思うんです。だから、自分が取り組んでいることだけがロハスだと思い込まず、他人のロハスも受け入れて認めてあげることも大事。このようにロハスには定形がありません。だからこそ、少しずつ上を目指していけるものでもあるんですよね。

──"これがロハス!"という具体的なものがないので、なんだか難しいですね。

そうなんですよ、難しいんです。でも、実践してみると意外と簡単なんですよ。たとえば、「ロハスをはじめたいのですが、どうしたらいいんですか?」って聞かれたとしますよね。そしたら私は、「それじゃあまず、早起きしましょう」って言うんですね。実際私は、5時に起きるように心がけています。

──5時! 早いですねぇ! じゃあ、何時に寝てるんですか?

そうそう、それなんですよ。朝5時に起きようと思ったら、やっぱり夜は12時くらいには寝ないとつらいですよね。できれば11時、あるいはもっと前に寝たい。もちろん寝るまでの間にお風呂に入りたいしご飯も食べなくちゃいけないし、リラックスできる時間だってほしい。そうやって逆算していくと、仕事は何時までに終えなくちゃいけないか、わかりますよね。
私の場合、仕事は午後3時まで。午後3時を過ぎてからの仕事は、人に頼まれたものや興味があることだけにしています。3時までだとしても、朝5時から働いたとすれば10時間ですから十分ですよね。いつもうまくいくとは限りませんが、少なくとも夕方の5時にはパソコンの電源を切って仕事はおしまい。メールも見ません。まわりの人にも「私に午後7時にメールを送って、その日の内に返事をくださいと言われても、お答えできません」と伝えてあります。その代わり、早朝から仕事をしているので、送り主が出社してパソコンを立ち上げる頃には返事は届いています。

──なるほど。一般的な時間軸とは違う選択をしているわけですね。

そういうことを続けていると時間に対する意識の変化が起こります。自分の時間を大切にしようと思うと同時に相手の時間も大事に考えることができるようになるんですね。これまで無自覚だった時間の価値に気づくことができるんです。

──なるほど。しかし、さきほどの話では、朝5時起きというのがいきなり高いハードルです。

私も以前は夜中の2時、3時に就寝するタイプでした。でも、おかしいなと思って、改めることにしたんです。私はYEN(Youth Environmental-mind Network)という環境サークルに所属しているのですが、メンバーは忙しい人ばかりで、みなさんプライベートのパソコンを立ち上げるのがだいたい夜11時くらいからだったんです。夜11時を過ぎてからメーリングリストで情報交換がはじまるのですが、まるでチャットのように延々と話が続くんです。みんな夜中に起きていて、深夜電力を使って、それで話題がエコ。それって何かおかしいですよね。
「だったら月に1度定時で仕事を終えて、実際に会ってご飯食べながら話そうよ!」と提案をして、それから「エンカレ」という定例食事&勉強会がスタートしました。確かに職種によっては、深夜作業になることもわかります。でも、そんな中でも週に一度くらい早起きできる日はありますよ。たとえば月曜日の朝。日曜日くらいは自分の意志で早寝することができるはずなので、「だったら月曜日の朝に会いましょう」って、朝ご飯会を開催したこともありましたね。

頭ではわかっているのに、伝える言葉を持っていない

──國田さんは、NPOローハス クラブにも参加されていますよね。ここではどのような活動をされているのですか?

そうですね。ローハス クラブに関しては、ロハスという言葉がある程度浸透してきたということもあり、少しお休みしています。2005年頃からロハスについて知りたい、情報交換したい、交流したいという方向けにロハスアカデミーというものをNPOが主催していて、そのお手伝いをさせて頂いていました。「日本をロハスに変える30の方法」を書かせて頂いたのもこのご縁がきっかけです。

──ローハス クラブでは、どのようなお立場なんですか?

主席研究員という肩書を頂いていますが、役割を果たせているか悩ましいですね(笑)。あと、LOHASコンシェルジュの第一号にも認定されています。

──LOHASコンシェルジュとは、資格なのですか?

NPO認定の資格です。これまで7期まで卒業された方がいて、200人くらいの方がコンシェルジュやライフスタイリストとして認定されています。コンシェルジュになるには、ロハス発祥の地と言われているコロラドのボールダーに行かなくてはならないので、なかなか大変なんですよ。

──聖地を見て、体験することが重視されているのですね。

ロハスが生活の中に溶け込んでいる状態を見ることができますので、ああ、なるほど、と気づきはあります。肌で感じないとわからないことってありますから。

──体験してこそわかる形のないものを、講座で伝えるのは難しいですよね。微妙なニュアンスが間違って伝わってしまったりすることもあるでしょうし。

それはありますね。でも、ロハスはライフスタイルなので"実践する"ことが原則としてありますが、"正しいこれを真似すればよい!"という訳ではないんです。先ほども申しあげたように、「正解」「不正解」があるのではなく、どちらかというと自分の思いや考えを人に伝える重要性をお伝えしています。こういう事実があって、自分はどう思って、何がしたいのか。一人一人の意見が集約されて、社会には広がることが重要だ思います。
ロハスアカデミーで話をすると、みなさん頭ではわかってらっしゃるんですよ。農業をやっている方がいらっしゃったり、マクロビを実践している方がいらしたり。でも、まわりの人に伝えるすべを持っていなかったりするんですよね。
なんとなくやっていることについて、その背景にある法律や制度の関連性がわからないと言う方もいれば、手がけている事業にどうやってロハスに結びつければいいのか悩んでる方もいらっしゃいました。まず大切なことは、物事と物事の関連性を明確にすること。そして、一般の方に広める方法を知ることに務めればいいと思うのですが。

私の理想は、自分の役割がなくなること

──CTF(カーボン・トゥ・フォレスト)の代表もされていますが、どんなことをしているのですか?

CTFは、環境サークルYENの分科会から派生した活動です。こちらも2003年くらいから活動しています。CTFはカーボン・オフセット(自分が排出したCO2を相殺/埋め合わせするためのサービス)に関する情報を発信しています。
2002年の秋頃、YENのメンバーが、自分たちの出したCO2,例えば飛行機に乗る時に出るCO2の量を計算して、埋め合わせるための費用を負担するという考え方を提案して調べてみたところ、海外にはそういったサービスがあったんですね。でも、日本にはなくて。だったら自分たちで広めてみよう、というところから始まり、私は最初オフセットをお願いするお客様の立場でした(笑)。それが縁あって2006年から代表を引き継ぐようになり、もっと広まったらいいなぁ、という思いでビジネスコンテストなどに応募していました。

──それは、どのようなビジネスモデルだったのですか?

飛行機に乗ったときに出るCO2の量を計算して、植林という形でオフセットを提案してみました。それを航空会社や広告代理店に、広めていきたいです、みたいな感じです。その頃はまだ、いまみたいにオフセットが一般的になる前の時代で、まわりの人たちからは「そんなのお金にならないよ」って言われていました。ところが、2007年の秋くらいから大ブレイク。それを本格的に生業とする人も出てきたんですよね。

──時代が求める一歩先の情報をキャッチして広めていく。先見の明があるのですね。

ロハスも同じなのですが、私の理想はいつも、自分の役割がなくなってしまうことなんです。ロハス、ロハスって言わなくても、ロハスが浸透していて、オフセット、オフセットって言わなくても、みんな実践しているような世の中になってほしいんですよね。まだ当たり前になっていないものにアンテナを張って、それを当たり前のことにしていく活動をしているので、ある程度広まれば私の役割はおしまいだと思っています。

Word of power

●できることってなんだろう?
●肌で感じないとわからないことがある
●当たり前でないものを当たり前に

まだ一般化していなものをいち早く取り入れ、まだ見えていない価値を与えていく國田さん。いったい彼女には、どうしてこれを実現する力が備わったのでしょうか。次号は、國田さんが、どのように問題意識に目覚め、どのようなアプローチを試みていったのかについてお伺いしてみました。

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