vol.119 谷口奈保子

NPO法人ぱれっと創設者/前理事長  URL:http://www.npo-palette.or.jp/

こんにちは! テトルの本村拓人です!! 全3回にわたってお届けするNPO法人ぱれっとの創設者で前理事長の谷口奈保子さんへのインタビュー。今号は第2回目です。 病院でのボランティア経験などを通じて知り合った、筋ジストロフィーの青年の言葉などに心を動かされ、谷口さんは障がい者福祉の道へと進みます。 今号では、ぱれっとの活動がいかにして広がっていったのかについてお話をお伺いしていますが、谷口さんの活動にはニーズをいかに汲み取るかという一貫したテーマがあることがおわかりいただけると思います。 必要としている人がいるからサービスは生まれてくる。とてもシンプルな原理です。とはいえ、それほど話は単純なわけではないようで...。

障がい者がふつうに暮らせるということを、世間に見せつけたい

ぱれっとの活動は、どのようにして広がっていったのでしょうか?

なにかコツのようなものがあるわけじゃないですよ。ひとことで言えば、そういうニーズがあったから。障がい者たちが必要としたから、活動が広がっていっただけです。

そのニーズを敏感に察知する能力は必要ありそうですね。

そうですね。汲み取れる人は必要かもしれないですね。私は、彼らの集まれる場所が必要だと思ったから"たまり場ぱれっと"を作った。働きたいというニーズがあったから、"おかし屋ぱれっと"が生まれ、接客をしてみたいという声を拾って"レストランぱれっと"をスタートさせました。彼らがどうしたいのかが一番なんですよ。 実は、当事者の親でさえ、彼らのやりたいことがわかっていませんからね。だから、周囲の者が勝手に何かをやろうとしてもだめ。彼らを巻き込んで、一緒に考えていかないと。

なるほど。当事者のニーズというのは、そのまわりにいる人には意外と見えづらいものなのかもしれませんね。

そうですよ。たとえば障がい者に英会話が必要だなんて思わないでしょう? でも、実際に聞いてみると、実はやりたがっているということがわかります。じゃあ、作っちゃおうよ、と。そんなとき、ぱれっとが大切にしているのは、障がい者だけの集まりを作らないことなんです。健常者も必ず一緒に活動できる場にします。

それはどうしてなんですか?

ぱれっとの活動目的がそもそも、障がい者と健常者が共に生きる社会を作りたい、ということなんですね。障がいがあるだけで、ふつうに生きる権利が奪われることに納得いかない、と考えていることは先にも述べましたが、障がい者だって健常者と同じように働けるし、暮らせるんだということを世間に見せつけたいんです。

子供を亡くした親の気持ちが、あなたにわかるのか?

ぱれっとを運営していく上で、一番難しいと思うことはどのようなことなのですか?

やっぱり人間関係ですね。特に障がい者の親とどう付き合うか。障がいを持った子の親は、子供に社会に溶け込んでほしいと思う反面、それは無理なのではないかと思っています。だから、子供をかばってしまい、厳しく接することができないんですね。要望に応えて働ける場所を作っても、「ウチの子にはまだ早い」となってしまうんです。 厳しいことを言って、親を泣かせたことも一度や二度ではありませんよ。でも、泣いたってだめ。私に涙なんて通用しません。「障がいの子を持ったことがない谷口さんに、私たちの気持ちなんてわからない」と言われたこともありますが、私だって、「じゃあ、子を亡くした親の気持ちがあなたにわかるのか」ってね。 お互いに、わかるわけがないんです。でも、だからといって、「はい、そうですか」じゃ終われない。わからないからこそ、話し合わなくちゃ。お互いを理解しようと努力しなくっちゃいけませんよね。ずいぶん長くぶつかってきましたけど、お互いに歩み寄って、うまくやれるようにはなりました。

当事者である障がい者からの抵抗もあるのですか?

それはありません。だって彼らはやりたいんですもの。もちろん、実習をやってみて、やっぱり嫌だっていう人もいますよ。でもね、できるだけ彼らの気持ちを汲んであげたいんですよね。彼らの中にはいろんなことをやってみたい気持ちがあって、その選択の受け皿を増やしてあげたいんです。 企業にしても実際に働けている姿を見たら、障がい者雇用がしやすくなると思うんですね。実際、ぱれっとから企業に出て行った人もずいぶんいるんですよ。

壁にぶつかっては乗り越えるというプロセスを経てきた

組織を継続させていくうえで、課題があれば教えてください。

後継者の育成は難しいですね。これは、うちだけに言える問題ではありません。障がい者の分野は、いつまでも創始者が君臨するケースが多いんです。でもね、時代は変わります。私も40歳でぱれっとをはじめましたが、その頃といまでは勢いが違いますもの。 創業メンバーはやはり、ぱれっとの理念やミッションについて、よく理解してくれています。新しい時代を作ろうとした人たちだから、プライドもあるし、信念があるんです。でも、そのミッションが作られて20年経った後に入ってきた人は難しい。もちろん、理念に共鳴したから入ってきてくれてはいるのですが。こればかりは、見守るしかないかなと思っています。

教育することは難しいのですか?

難しいです、とても。教育の仕方にしても、ひとりひとり違いますからね。みんな、育ってきた環境も違いますし、持っている障がいだって違います。私が心配なのは、チャレンジする心を、いまの若い人からあまり感じられないこと。 昔だったら、私が全部責任を取るから、チャレンジしてみよう、と勇気を与えることができました。やりたいことがあったら、やりなさい、と言えたんです。その中で壁にぶつかり、克服して、というプロセスを踏んで、いまの状態にまでなっているんですね。

Word of power

●当事者や周囲の人を巻き込んで一緒に考える
●お互いを理解しようと、努力をしなくっちゃ
●やりたいことがあったら、やりなさい

次号は、ぱれっとの今後の展望についてや周囲の団体との関わりなどについて伺いました。ほとんどすべての方針を、ときには涙を流しながらの熱い話し合いで決めていくぱれっと。忍耐強く、納得のいくまで語りあうスタイルが、彼らの団体としての強さを物語ります。

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