vol.127 日野公三

株式会社アットマーク・ラーニング代表取締役  URL:http://www.at-learn.co.jp/

1980年9月 株式会社日本リクルートセンター(現、リクルート)岡山営業所にアルバイトとして入社
1982年3月 国立岡山大学法文学部経済学科卒業
1984年4月 株式会社リクルート東京本社、住宅情報オンライン事業部に配属
1988年9月 株式会社オウトゥー・ジャパン設立、代表取締役に就任(~1994年3月まで)
1994年4月 株式会社ケイネット(神奈川県を大株主とする第三セクター)取締役就任(~1999年3月まで)
1999年4月 学校を運営するための会社、株式会社アットマーク・ラーニング設立、代表取締役に就任
2000年4月 アットマーク・インターハイスクール設立、理事長に就任。11月にNPO日本ホームスクール支援協会設立、副理事長に就任。
2004年9月 美川特区(現、白山市美川特区)アットマーク国際高等学校設立、理事長兼校長(現、理事長)就任
2005年7月 NPOソーシャル・イノベーション・ジャパン理事(現、常任理事)就任。11月には株式会社立学校の業界団体、学校設置会社連盟設立、副理事長(現、理事長)に就任
2009年4月 川崎特区アットマーク明蓬館高等学校設立、理事長就任

こんにちは! テトルの本村拓人です!!
今号から3回にわたって、株式会社アットマーク・ラーニング代表の
日野公三さんにご登場いただきます。

アットマーク・ラーニングが運営する
川崎特区アットマーク明蓬館高等学校やアットマーク・インターハイスクールや
白山市美川特区アットマーク国際高等学校は、
インターネット通信を介して勉強ができ、
さらに高等学校卒業資格まで取得できる高等学校なのですが、
特徴はそのスタイルだけではありません。

ビジネスのシーンで浸透しつつあるコーチングという概念をいち早く取り入れ、
生徒一人ひとりに伴走し、やる気を引き出す教育を行っているのです。

第1回目となる今号では、学校の概要や設立にいたるまでの動機などをお伺いしました。

生徒が主体的な学べる学校

それではまず、アットマーク・ラーニングが運営する
インターネットハイスクールについて、ご案内いただけますでしょうか。

はい。まず、アットマーク・インターハイスクールは2000年に創立された学校です。
インターネットを使った通信制の高等学校で、教科書もカリキュラムも
生徒自身が主体的に決めるまったく新しいスタイルを採用しています。
学習コーチングという理念を取り入れ、一人ひとりの生徒に合った学習スタイルを作り、
生徒がやる気を持って目指したい方向に進めるようにしているんですね。

興味のあることを見つけて取り組んでもらった成果物は、
きちんと評価されてちゃんと単位がもらえます。
アットマーク・インターハイスクールはアメリカのワシントン州のホームスクール、アルジャー・インディペンダンス・ハイスクールと提携しており、
規定の単位を取得すれば、アメリカの高校の卒業認定が受けられます。

おもしろいですね。
では、川崎特区アットマーク明蓬館高等学校と
白山市美川特区アットマーク国際高等学校のほうはいかがですか?

川崎特区アットマーク明蓬館高等学校は2009年4月、
白山市美川特区アットマーク国際高等学校は2004年9月に特区として認定され設立した高校です。
どちらも通信制の高等学校なのですが、日本の高校教育課程に準拠しています。
もちろん、普通科目以外にユニークな科目が用意してあり、単位を取ることもできますよ。
アメリカの学校の卒業資格だけでなく、日本の高校の卒業資格も取ることができます。

インターネット上の学校ということですが、それでは学校へ行く必要はないわけですか?

アットマーク・インターハイスクールはスクーリング、つまり登校の義務は一日もありません。
川崎特区アットマーク明蓬館高等学校と白山市美川特区アットマーク国際高等学校は、
1年のうち3、4日の本校登校の必要があり、一斉授業を受ける必要があります。
特別活動と呼ばれる学校行事では、キャンプを開催したり、修学旅行へ行ったりもしています。

第三セクターの経営再建の依頼を受けて

日野さんが教育に取り組むようになったきっかけを教えてください。

いまから20年ほど前に、私はコンサルティング会社を経営していました。
そのときに、ケイネットというパソコン通信会社の経営再建依頼の相談を受けたんですよ。
独立して会社を経営する前、私はリクルート本社の住宅情報オンライン事業部にいたのですが、
そのときから通信事業に携わっていたので話がやってきたんですね。

ケイネットは第三セクターの会社で、大株主は神奈川県でした。
当時、パソコン通信は夢の双方向メディアとか、ニューメディアとか呼ばれて非常に注目を集めており、
私自身ケイネットには非常に注目しておりました。

しかし、経営状態はあまりよくなかった、と。

設立から2年が経過していたんですが、資本金をなくなって会社存続が論議されるところまできていました。
依頼を受けた私はチームをつくり、3ヵ月ほどかけて調査を行い再建プランを提出したんですね。
そしたら、コンサルティングではなく、
経営そのものをお願いできないかということになりました。
それで、取締役としてケイネットに入ることになったんですね。

なるほど。日野さんはどのように経営を建て直そうと思われたのでしょうか。

高コスト体質の改善ですね。第三セクターは国と民間の中間団体で、
この新しい業態は当時、社会からとても高い期待を受けていたのですが、
実際に調べてみると非常に無駄が多かったんです。
お金も使いすぎ。まずはそれを改善することからはじめました。

ケイネットは、パソコン通信の会員を集めてその会費で経営しようとしていたのですが、
損益分岐点に達するまでにはおよそ10万人の会員が必要でした。
ところが実際の会員は2万人ほどで、とてもやっていけるような状態ではない。
急激に会員を増やすことも現実的ではないので、私はパソコン教室を開設するなど、
通信を使った別のビジネスを立ち上げることにしたんですよ。

そんな事業プランのひとつに、インターネットを使った学校があったというわけですか。

そうですね。ケイネットには、不登校生サロンという評判のBBSがあったんです。
不登校の子どもたち200人ほどが登録している掲示板で、私も仕事としてときどきながめていたんですね。
そうすると、掲示板では非常に高度な議論が行われていることがわかり、びっくりしてしまったんです。

不登校の子どもにレッテルを貼るのは社会的損失

高度な議論と言いますと?

たとえば、97年1月に福井県の沖合でロシアのタンカーが座礁して重油が流れ出す事件がありました。
その事件について小学校4年生の子と中学生と高校生が激論。
事故の概要を的確に説明していたり、油の中和方法についてさまざまな意見が飛び交っているんです。
それを見た私は、非常にもったいないなと思いました。

その当時、不登校は社会的に大きな問題になっていて、不登校児にはやはり、
落伍者のようなレッテルが貼られていたんです。
しかし、議論を見る限り彼らは非常に優秀でした。
そんなレッテルを貼ることは、社会的にも大きな損失だと感じたんですよ。

そこで、彼らがちゃんと帰属し勉強ができるような環境を作りたいと考え、
インターネットハイスクール「風(Kaze)」を立ち上げることにしたんです。

「風」は、ビジネスとしてうまくいっていたのでしょうか?

そうですね。97年から2年間運営したのですが、
だいたい180人ほどの生徒が集まりちゃんと採算も取れました。

それなのに2年間しか運営しなかったのですか?

ケイネットの本業の事業縮小が既定路線になり、その影響で学校事業の営業権を譲渡することになったんです。
当時はパソコン通信サービスの衰退期で、
代わりにインターネットサービスプロバイダが次々と立ち上がっているような状況でした。
閉じたネットワークのパソコン通信が、世界中とつながるプロバイダ事業に取って代わられていたんですね。

ケイネットもプロバイダ事業に鞍替えするべきだったのですが、第三セクターの特性上、すばやい業務転換ができなかったのです。
それで、その波に乗りきれなかったんですね。

「風」の運営を続けようとは考えなかったのですか?

考えましたが、これも第三セクターの特性上、
もともと事業マネジャーである私が事業を引き継ぐことはできなかったんですね。
自己取引と規定される恐れがあるからです。だから「風」は鎌倉にあった教育機関に引き継いでもらうことにしました。
しかし、ニーズがあること、そして採算が取れる、
つまり公益性と収益性が両立することはわかりましたので、新しい学校を立ち上げようと計画したんです。

Word of power

●好きなことを勉強して単位を取れるように
●掲示板の高度な会話に驚いたんです
●ニーズがあるなら、新しい学校を

第三セクターで通信制の高等学校を運営し、大きな手応えを掴んだ日野さんは、新しい学校の設立を夢見るようになります。しかし、大きな母体がなくなると同時に、資金的にも楽ではなくなりました。次号では、そんな日野さんが資金集めやカリキュラム構築に取り組む様子をお伝えします。

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