vol.130 渡邊 奈々
東京生まれ。田園調布雙葉学園を経て
慶応義塾大学文学部英文科卒業
米政府奨学金を得てバイリンガル教育修士課程修了
1975年よりニューヨーク在住(1984から88年まで年間半分をパリ在住)
1977年リゼット・モデル氏より写真を学ぶ
1980年ニューヨークにてコマーシャル・フォトグラファーとして独立
90年代半ばまで広告、雑誌を中心とした商業目的の写真家としてニューヨーク、パリ、東京(90年以降)で活動.主なクライアントは、
ヴォーグ誌(パリ)、ロフィシエル誌(パリ)、レヴロン化粧品(広告)、資生堂(広告)、ビル・ブラス(広告)など。
1987年アメリカン・フォトグラファー誌より年度賞受賞
1998年より、東京、ニューヨーク、ベルリン、パリなどで個展およびグループ展で作品を発表
2000年より、個人的なミッションとして社会起業家をロールモデルとして日本のメデイアに紹介を始める。これまでに約130人をインタビューにもとづいた文章と写真で紹介。その内、約40人のストーリーが「チェンジメーカー 社会起業家が世の中を変える」(2005年8月出版:8刷り)、「社会起業家という仕事:チェンジメーカー2」(2007年11月出版:3刷り)に収録されている(共に日経BP出版)
2008年2月チューリヒで開催されたWorld Economic Forum(ダヴォス会議)社会起業家サミットにて日本人として初めてアジア分科会の討論会モデレーターを務める。
2009年3月アショカ上層幹部より、アショカ・ジャパン立ち上げのアドヴァイザーに指名される。
こんにちは!Causeの井上晶夫です!!
今号から4回にわたって、『チェンジメーカー 社会起業家が世の中を変える』『社会起業家という仕事 チェンジメーカーⅡ』などの著者である写真家の渡邊奈々さんにご登場いただきます。
アショカ財団のビル・ドレイトン、コモン・グラウンド・コミュニティのロザンヌ・ハガティなど、
『チェンジメーカー』には、黙って見過ごすことのできない社会問題に取り組み、
この世界に変革を起こそうと行動する世界中のソーシャル・アントレプレナーたちが登場します。
ページをめくれば、「本当にこんなことが実現可能なの?」と、目からウロコが落ちるような話が次から次へ。
貧困に苦しむ人々、教育が受けられない人々、人権を著しく侵害されている人々、紛争に巻き込まれた人々などの問題に、
想像力豊かなベンチャースピリットで取り組み、状況に変革を起こしていく彼らこそ、時代にニーズが生み出した現代の英雄ではないでしょうか。
インタビュー第一回目の今回は、直接彼らと会って、取材を重ねてきた渡邊さんに、
ソーシャル・アントレプレナーとの出会いについてお伺いしました。
渡邊さんが社会起業家に興味を持たれたいきさつを
教えていただけますか?
私は1975年にニューヨークに移り、ときどき里帰りのために帰ってくるような暮らしをしていたのですが、
90年代の終わり頃から、日本に来るたび社会がおかしなことになっていると感じるようになりました。
新聞やテレビのニュースを見てではなく肌で感じるんです。
どのようなことをお感じになられたのでしょうか?
たとえば、街で見かける人たちが失望したような表情を浮かべていたり、
溌溂としているはずの子供たちが、淋しそうな目をしていたり...。
虐めの犠牲者やひきこもりの子供たちの話を身近なところで聞くこともありました。
里帰りの期間はいつも2週間ほどだったのですが、電車に乗っていると2回くらい人身事故で電車が止まることもありました。
実家で「今日、人身事故があった」と話をしても、みんな、"また?"みたいな受け止め方で。人身事故に驚きもないなんて、
戦争の起きている国では、人の死に対して感覚が鈍くなるのと似ていると同じかなと思いました。
どうして、ただ生きることが、これほど困難な社会になってしまったのだろうという疑問が湧きました。
東京の電車が人身事故で止まることは珍しくありませんからね。
戦争や紛争の最中にある国とは異なりますが、日本にも問題があると思いました。
だって、引きこもりが13万人もいて、自殺者の数も一向に減らないわけですよね。
そして、こういった問題に誰も何もしようとしないわけでしょう? 政府だってなにもしていませんよね?
ニート支援、フリーター支援のような話を聴くこともあります。
20年間くらい前から、特にこの10年余り、日本社会は急激に変化しています。
同じ教育を受け、同じバックグラウンドを持つ単一民族から成り立っていた社会が変化しています。
それで、体型が変わったら以前の服が合わなくなるように、以前のシステムややり方が今の社会に合わなくなってきたのだと思います。
それで私に何ができることはないかと、ずっと考えていたんです。
ハーバード大学を卒業したばかりの友人に、アメリカのエリートの間で、
ソーシャル・アントレプレナーシップがすごくホットなことににってきている、と
私が耳にしたのがちょうどその頃。99年くらいだったでしょうか。社会起業家の概念に初めて触れた瞬間でした。
最初にその概念に触れたときの印象をお聞かせください。
なんていうのかしら? さっぱりわからなかったわね。
ソーシャル・アントレプレナーシップって、つまり社会福祉を意味するソーシャルワークと、
ビジネス起業を意味するアントレプレナーシップという相反する言葉を繋げた新しい概念なのですが、
たとえば、飛行機がない時代に飛行機についての説明を聞くようなもので理解ができませんでした。
でも、わからないながらも、この未知のものに強い衝撃を受けました。目の前にドアが開いて先に眩しい光が見えるような経験でした。
それに気づいた友人が、「気になるならジェッド・エマソンに話を聞いてみたら?」と提案してくれました。
2000年の秋、ハーバード・ビジネススクールがソーシャル・アントレプレナーシップを教えるコースが開講することになったのですが、
ジェッド・エマソンは社会起業家を研究しており、そのコースの最初の講師になった人なんです。私はさっそく彼に連絡してボストンまで会いにいきました。
3、4時間かけて話を聴きましたが、ピンときませんでした。
さっきも言ったように、いままでにない新しい概念だったから、なかなかわからなかったんです。
そんな私を見て彼は言いました。「社会起業を音楽にたとえるなら、パンクロックなんだよ」と。
彼自身、髪は長いブロンドで、刺青を入れたパンクロッカーなんですが、その言葉を聞いてようやく理解できました。
それはつまり、マニュアルやプランに頼ってビジネスモデルを考えるんじゃなくて、社会のなかで心に響くものを形にしていくようなもの。
目の前の社会問題に、自由なアイデアでチャレンジするということだったんです。
話を聞いた私は、"ソーシャル・アントレプレナーシップの概念は、もしかすると日本人と相性がいいかもしれない"と考えました。
日本にはボランティアやチャリティといった伝統がありませんが、ビジネスのアイデアは豊富です。
3ヵ月もすれば、さまざまなお店の店頭に日本製の新商品が陳列されています。
私は、日本人ほど新しい製品を創りだす想像力と技術に長けた人達はいないと思うんです。
つまりそれは想像力があるということです。その想像力と技術を社会問題の解決に使ったら素晴らしいと思うのです。
著書『チェンジメーカー社会起業家が世の中を変える』は、
ジェッド・エマソンとの出会いがきっかけとなった生まれた本なのですね。
いま日本ではベビーブーム世代の子供たちのロールモデルがいなってしまっているんです。
団塊世代の大量退職が話題になりましたが、大企業で仕事をして経済繁栄を成就した世代が、その後、混迷している。
それを見た子供たちはどうやって生きていったらいいのかわからなくなってしまったんだと思います。
だから、この人たちに生き方のロールモデルを紹介したいと考えました。
『チェンジメーカー社会起業家が世の中を変える』
は、そういった思いから世界の社会起業家を紹介していったんです。
創刊の頃から関わってきたPENという雑誌の編集長に
"本当にカッコいい生き方・働き方をしているソーシャル・アントレプレナーという男性達を紹介したいので。。。"と
提案したのですが、当時の木田編集長は想像力の富んだ方で、10ページ好きなように使って良いですよ、という快い返事をいただきました。
2000年の10月号です。そして10ページに6人のソーシャル・アントレプレナーを紹介したのが、
私の今まで続いているミッション・ワークの第一歩でした。」
なるほど。その連載が書籍になったというわけですか。
それから2年間、ペンに同様のストーリーを5、6回掲載するほか、フイガロ・ジャポンでも3年間に渡って、
社会を良くする仕事を選んだ女性達のインタビュー記事を掲載しました。
●日本社会がおかしなことになってるって感じたんです。
●想像力と技術を社会問題の解決に使ったら素晴らしいと思う
●ジェッド・エマソンとの出会いがきっかけとなった生まれた本
さまざまな雑誌で特集が組まれたり、テレビでも紹介されはじめている日本の社会起業家。次号は、渡邊さんが見聞きしてきた、世界の社会起業家についてお話をうかがいます!
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Wrote 2010.02.28 << 前のインタービュー | 次のインタービュー >>