vol.131 渡邊 奈々
こんにちは! Causeの井上晶夫です!! 全4回でお届けする渡邊奈々さんへのインタビュー。今号は第2回目です。 前号では、渡邊さんが、いかにしてソーシャル・アントレプレナーシップ(社会起業)という概念に出会い、その魅力的なあり方に吸い寄せられていったのかをご紹介いたしました。現在、ムーブメントになりつつある"社会起業家"という言葉。この邦訳を作ったのが実はインタビューにお答えいただいている渡邊さんと当時のペンの編集長の木田さんだったなんて、ちょっぴり驚きませんでしたか? さて、今号は渡邊さんが目撃した、ソーシャル・アントレプレナーシップが世界に広がる様子をお届けします。ワールドワイドな話が当たり前のようにでてきますが、ついてきてほしいと思います。3回目、4回目の配信記事では、世界と繋がる方法も、ちゃんとお伝えしますので...。
社会起業家という言葉ができたのは、渡邊さんのおかげだったのですね。
2000年当時、インターネットで検索すると「社会的起業」という呼び方で英国の労働党の政策についての情報がいくつかでてきましたが、そういうことになりますね。雑誌『Pen』ではジェッド・エマソンを含む7人の社会起業家を紹介しました。ビジュアルを重視する雑誌なので人物の写真を大きく使って、テキストはそれほど多くなかったのですが、それでもその雑誌を見た何人かの人からコンタクトがありました。 2005年から慶応大学で社会起業の教鞭をとっていらっしゃる井上英之さんとも、ペンの記事を通して知り合いました。 2005年秋に慶応大学で、日本発の社会起業関連のコースが金子郁容教授の提唱で開講しましたが、一冊目の拙書『チェンジメーカー 社会起業家が世の中を変える』は教科書として採用されました。まだその頃は、社会起業家について解説したり、紹介している文献がほかに余りなかったようですね。
社会起業家を世の中に広げる下準備が整ったわけですね。
私が社会起業家を探す旅をはじめた2000年頃のことなのですが、時期を同じくして、世界中で似たような動きが起こっていたのを後で知ることになりました。シナジーというのでしょうか、私と同じように社会起業家を発掘して紹介しようと試みる人々が現れていたんです。2O世紀が終わり新しい世紀が始まる前後、それまで地球を支配していたエネルギーが変わり始めたのだと思います。パメラ・ハーディガンさんと知り合い交友が始まったのも2000年のことでした。 WHOで仕事をしていた彼女は2000年、ダボス会議(WEF)の創立者である経済学者のクラウス・シュワブ夫妻にリクルートされ、WEFのなかに「社会起業」という部門を作りました。当時、クラウス氏と妻のヒルダさんは個人資産で財団を立ち上げ、経済の活性でより拡大した貧富の格差を縮小するために、なにかができないかと思案していらしたそうです。そこで、ハーテイガンさんが「社会起業家」を世界中で探しコネクトするネットワークを創ることによって、貧困、人権、環境などのイシューにグローバルに取り組んでは、と提案したわけです。私自身、2008年1月にこのフォーラムに初めて参加する幸運に恵まれましたが、「彼女は本当にすごいものを作ったんだ!」と驚嘆しました。世界中から顕著な社会起業家と、研究者、支援する側の企業や財団の人達が250人集まり3日間、朝から晩まで一緒に考え、議論しました。彼女は、今私たちの知っている動きを創った重要なプレーヤーのひとりと言って良いでしょう。
ダボス会議社会起業フォーラムでは、具体的にどのようなことが行われるのですか?
ハーテイガンさんは、VOLANSという組織を始めるため昨年WEFを辞職しました。 VOLANS(ヴォランス)とはラテン語でトビウオのことで、"みんなを浮かび上がらせるプロジェクト"という意味なんですね。人権や環境、教育などの分野で活躍する社会アントレプレナーを経済的に支援する可能性のある企業や個人と、マッチングするというのがヴォランスの機能です。それが、"浮かび上がらせる"という意味です。彼女が創案し育て上げた6年間続いたフォーラムの進化した形と言えます。 彼女はVOLANSを立ち上げた数ヶ月後、スコール財団からもリクルートされました。スコール財団とは、eBayの初代社長のジェフ・スコールがオックスフォード大学院のなかに作った財団で、顕著な実績のある社会起業家を選び出し、スコール賞を与え、活動資金を提供します。これも7、8年前にはじまった動きですね。 今年1月彼女はオックスフォード大学院のスコール・ソーシャル・イニシャテイヴのデイレクターに就任。VOLANSの運営からは当面、手を引くそうです。残念ながら、彼女の生み出した「WEF社会起業フォーラム」は彼女の退任と共に消えてしまいましたが、オックスフォードで、さらに大きいスケールのフォーラムを開催しています。
スケールの大きな話が続きますね。スコール財団のフォーラムの印象についてお聞かせください。
WEFに比べて人数が多く社会起業家、研究者、企業+財団側が750人ほど集まりました。毎日、 ひとつの建物の中の4つの部屋でいろいろなイシューのパネルディスカッションが行われてましたから、どうしても4分の1の話しか聞くことができません。WEFの場合は、もっとこじんまりしていて家族的な雰囲気でした。 私はそれほど社交的ではないので、自分から積極的に話かけることは苦手なのですが、たまたま夕食で隣にすわっていた方や宿泊先のホテルの朝食ルームで一緒になった人が皆何らかの変革に携わっている人達だったので、刺激的な出会いはたくさんありました。たとえば、偶然朝食ルームで会った若い女性が、ルーム・トゥ・リードのディレクターだったりしましたね。 今年のスコール賞の受賞者のひとりは、バート・ウイジェンスでした。彼には、WEF以来1年ぶりに会いました。彼は、野生ネズミを訓練することで安価な地雷除去技術を開発したアポポを主宰する人。ウイジェンスさんは、社会起業家の最大の認証レベルであるアショカ・フェローでもあります。アショカ、スコール財団、そしてシュワブ財団は、社会起業家の3つの大きな承認レベルになっています。すばらしい活動をしているということのお墨付きということです。シュワブ・フェロウはハーテイガンさんが去ってからは、どうなっているかは解りません...ハーテイガンさんのスクリーニング即ち、シュワブ・フェロウでしたから。
●世界中で似たような動きが起こっていた
●みんなを浮かび上がらせるプロジェクト
●刺激的な出会いがたくさんあった
渡邊さん、そしてパメラ・ハーディガンさんの活動を通じて、ソーシャル・アントレプレナーシップの広がりについてお伝えしましたが、次号は、渡邊さんがどのようにしてそれらの方々と結びついていったのか、また、社会起業家をどのように解釈しているのかについて、おうかがいします!
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Wrote 2009.06.29 << 前のインタービュー | 次のインタービュー >>