vol.008 宮治勇輔 / Miyaji Yusuke
株式会社みやじ豚 URL:http://miyajibuta.livedoor.biz/
1978
神奈川県藤沢市出身
一次産業を、生産から生活者に直接届けるまでを一貫して農家がプロデュースする『新一次産業』の成功モデルを「みやじ豚」で実現するために日夜奮闘中。
かっこ良くて・感動があり・稼げる3K産業として、農業が魅力的な産業であることを訴える。
農業と地域の活性化がライフワーク。
こんにちは! テトルの本村拓人です! 今回は養豚業を切り口に日本の地域活性化を志す宮治氏のインタビュー(後編)をご紹介します!BBQを通して地域活性化を促進する宮治氏。 みやじ豚と併せて地元の農家で生産された野菜をふんだんに使うBBQを通して、子供たちへの食育も実施している。アイディアはシンプル、行動は情熱的。そんな彼が語ってくれた生活の豊かさの裏には、安定を捨てた起業家としての闘争があった。
みやじ豚の課題をお聞かせください。
自分の経営者としての経験のなさっていうのが一番の課題ですね。生産があって販売があり、財務の処理もあります。生産は弟がやっていますから、それ以外の販売の事でボトルネックになっているのは僕。僕がどうそこを乗り越えていくかという感じ。法人化して初めの3ヶ月は、いかにお金を使わないかっていうのが大事だと思ってやっていました。貯金通帳にお金が増えていくのが「おおすげぇー」って思っていたんだよね。でも何でも自分でやらないと全然進まない。
ウェブサイトつくりたくても手が回らない、営業も一人だったらたかが知れていますし、なかなか前に進まない時もあります。そこで、いかにお金を使わないじゃなくて、いかにお金を使って前進するかが重要だということに落ち着きました。
今はウェブやデザインの専門的な仕事は外部に任せたり、営業だったら有名レストランとかにパイプを持っている営業代理店に仕事を依頼したり。
だから毎月外注費を設けるようになったのは、初めと大きく変わったことだと思います。僕自身がいかに経営者として成長していくかが、株式会社みやじ豚にとって一番大事な要因だと思います。生産は黙っててもうまくいきます。大輔(弟)は優秀だし、基本的には作ったものはすべて農協が買ってくれるわけです。そうしたらいかに僕の方で販売を伸ばすかになる。
会社の運営・販売促進・PR・プロデュースというのは全部一人で考えられているわけですよね?
基本的にはそうですね。でも、まわりの方のお話も色々と参考にします。昨日たまたまパソナで一番尊敬していた先輩に会ったんです。その人は今はパソナを辞めて起業していて、人事コンサルティングの会社を営んでいる。やっぱり成長していて、コンペで負けたことがない。それも大手のコンサルティング会社とやりやって一度も負けたことがないって言うんですよ。一度もですよ。
大手のコンサルティング会社は若いし、確かに頭のよい人たちがいるけど、いかにも組織の事を理解していない。読めないような報告書・提案書を持ってきて「はい、これがコンサルティングの内容です、数百万円下さい」という人が多い。でもその先輩はパソナで本当に現場の泥臭い部分を見てきている。そのため現場レベルの事を織り交ぜて提案をしていくと担当者の心に響く。そういうことが他社と完全な差別化になっていると自信に満ちた表情で言ってくれました。あとはただ報告書を書く時も、自分たちが現場に入ってやっていくから実際に組織も変わっていく。
その先輩にレストランを紹介してもらってたんですけど、僕が店長と話をしている間メモを書いているわけですよ。何かと思うと全部僕に対するダメ出し。それで帰りは横浜まで送ってくれたんだけど、車の中で「こういう風にやったらどうだ」って色々話をしてくれました。
その先輩とお話をしていて気づいた事は、僕は今まで何にも考えてなかった、ということ。生産からお客様の口に届けるまで農家が一貫してプロデュースする一次産業にするなんて偉そうなことを言いながら、ただ豚を売ってただけなんだとまざまざと思い知らされました。それくらい先輩は自分の事業について徹底的に考え抜いているんです。
宮治さんのまわりにはコンサルティングやアイディアをくれる人はたくさんいるんですか?
なんといっても、僕の財産っていうのは素晴らしい友人に囲まれていることですから。アドバイスをくれる人は沢山います。だから、大切なのはいかにそれを僕が具現化していくのかですね。経営っていうのは具現化することだと思います。やることを決め、決めた事をやる。シンプルですが、それが一番大事だと思います。
経営者という視点からこのリソースが欲しいというものはありますか
やっぱり人だろうね。経営上の話とか、方向性などの話ができて、なおかつ想いを形に出来るという人がいるだけで全然違う。
条件は想いを形にできる人?
勿論、経営上の話が出来るのも必要だよ。それだけで進むスピードは全然違います。誤解を恐れずにいえばプロのコンサルタントでも本物のコンサルタントは数%しかいない。いかに友人が優秀であっても、僕の話を断片的に聞くだけで「うおー」っていう話をしてくれる人って言うのはなかなかいないでしょう。コンサルティングを外部にお願いしている人たちもいますが、本当にパートナーとして動ける人が中にいれば違う。
あと一つは、優秀な人材を引っ張ってくるって言うのも経営者の仕事ですが、今あるリソースの中でどうやりくりしていくのかも経営者の仕事だと思う。
そう考えるとまだまだ全然だめで、もっと現状の課題も的確に答えられるはずなんです。先ほど言った先輩も年末には社員を8人にすると言ってましたが、そうやってパシッと答えられないとだめだと思うんですね。今は一個一個問題を乗り越えていって、僕が経営者としての経験を積んでいくことからしか、組織ってのは良くなっていかないと思います。
社会起業で働きたいと思う人たちが増えていくためにはどうすればよいでしょうか?
うちの事業内容は普通の養豚業です。みやじ豚が社会企業かっていうと結構疑問ですよ。でも社会起業塾に通ったとか、実際にこんな風に社会起業家としてインタビューをしてくれる要因は何かって言うと、僕の想いや志に対してそういう風に言ってくれているんだと思う。
社会企業としてコトバノアトリエやマザーハウスの名前がよくあがるけれども、「本当にそれしかないのかな?」と思う。たとえばニチイ学館も社会企業だと思うんです。 多分会社ができた当初はみんな社会企業だった。みんな社会に対してこういう貢献ができるという想いで起業し、会社が生まれたと思う。起業家といわれる人は、みんな社会起業家だったんだと思う。そういう意味では僕も社会起業家です。
ただ、企業っていうのは立ち上がった時はみんな志をもっているけど、なかなかそれだけじゃうまくいかない。それである時、稼ごうとか利益を得ようと思った時から組織は大きくなったり伸びたりします。そこが分岐点になって、そのまま利益重視な会社と、また自分の志に戻ってくる会社との2パターンに分かれる。
後者の方で大きくなっている会社であっても、今は社会企業としては取り上げられていないんです。ある程度組織が大きくなるとそういう部分はみえなくなってしまう。本質的にはそういった隠れている社会企業が多くあるにもかかわらず、まだまだ一部の社会企業しか取り上げられていないんじゃないかなと僕は思っています。
みやじ豚の次なるビジョンとは?
生産からお客様の口に届くまで、農家が一貫してプロデュースする新一次産業を、みやじ豚で実現します。できれば全部直販でお店だとか個人に買ってもらうところまでプロデュースできるといいですね。それだけじゃなくて湘南地域の農家を巻き込んで湘南ブランドを作っていくことも次なるビジョンの一つです。農家発の湘南ブランドといった具合でしょうか?
地域活性化の一つのモデルとして地域のブランド作りをやっているんですが、方々で失敗していると耳にします。一番の原因っていうのはまず名前だけを付けてしまう。たとえば湘南だったら湘南っていう名前のブランド力を使って名前ブランドをみんな安易に使ってしまう。例えば、茅ヶ崎でいうと「サザン○○」とかです。中身をみると原料は外国産だったり加工場も他県だったりするのです。
湘南なんとかと名前をつけてしまった結果、消費者は最初期待して買いますが、本質に気づくとがっかりしてしまいます。だから湘南ブランドが育たなかった。思い浮かべて欲しいんですが、湘南地域のお土産って何がありますか? なかなか出てこないんです。せいぜい「ハトサブレ」 ぐらい。
湘南っていうのは名前のブランドはあっても中身がない。その中身を作っていきたいと僕は思っています。しかも農家発というコンセプトでつくりたい。農家っていうのはまさに湘南地域の中で生産をしてるわけです。
湘南地域でつくられた野菜やお肉っていうのは、堂々と湘南ブランドだと語れます。これを作っていくと農業と地域の活性化を同時に実現するモデルになる。一次産業をかっこよくて・感動があって・稼げる3K産業にすることが僕の志ですが、農業を活性化させる為には、同時に地域を活性化させないといけない。
農業と地域は深い関係があるということですか?
九州とか東北地方だと、すごい過疎化に悩まされていて、空き家や耕作放棄地が問題になっている。行政の人たちは、一生懸命東京で説明会を開いて若い人に来てもらえるようにしています。「どうぞみなさん、身一つでうちに来てくれれば、住まいと畑を用意してあげます」という地域が増えてる。
話を聞いて、都心の若い人はその地域に視察におとずれた後、口をそろえて「寂しい」とか「不便」 と言う。その若い人たちの考え方も問題ですが、こういった現状を考えるとやっぱり農業を活性化させる為には地域も活性化しないといけない、というのが僕の考えです。
農業っていうのはその土地に暮らして、その土地の畑を耕すというスタイルが基本。だから、「この地域で暮らしたい!」という魅力がないといけないわけじゃないですか? ということは農業を活性化させるとなると地域の活性化は必然的ですね。僕の暮らしているのが湘南地域なので、この湘南地域で農業の活性化と地域の活性化を同時に実現させるモデルをつくろうと思って活動をしています
そこでNPO法人『湘南スタイル』とのタイアップ企画も始まったりするんですね
湘南スタイルの中で、湘南と農業というコンテンツ作りを担当しています。商品開発にも携わっています。そういう形でみやじ豚とNPO法人『湘南スタイル』との二束のわらじをはいて活動しています。湘南地域で農業の活性化と地域の活性化を同時に実現するモデルを作っていこうということで活動をしているわけですね。まずはみやじ豚で成功モデルを作り、そしてそれを湘南地域にひろげていく。
みやじ豚BBQの今後のビジョンがあれば、お聞かせ下さい
湘南地域にBBQ文化を根付かせたいと思っています。どうも湘南地域の人々はBBQが非常にすきな民族だと思う(笑)。いつも開催している場所が『弁慶果樹園』という果樹園の観光農園なんですが、オーナーから話を聞くと、去年は1万1千人がその果樹園にBBQしに来ているというんですね。実はみんなBBQはしたいと思っているけど、人がいなかったり、器具がない、面倒くさい、といってできない人がたくさんいるんじゃないか? と思っています。でも「BBQって簡単だし、楽しいんだよ」と、BBQをやる人たちが増えてきたら面白い。しかもBBQが地域活性化につながるわけですからね。
また、BBQを開催する時、地域でとれた食材でやろうということも呼びかけています。地のものを直売所で買ってもらう。農家はさっきも少し話したように市場に出すよりも利益が2倍にも3倍にもなるんです。そのまま農家の発展にもつながっていきますよね。
だから、BBQをやる時は「地のもの」を使いましょうということなんですね
農家さんが自ら販売している直売所で野菜を買ったり、みやじ豚バーベキューに参加していただければ私たち農家と直接コミュニケーションが取れます。生産農家と直接接点をもって話せるって言うのはちょっとしたLOHAS的な生活じゃないですか? その中から栽培方法を聞いたり、おいしい食べ方を聞いてみたりすることも可能ですよ。
最後に、BBQは食育にもつながると思っています。たとえば家族が家でBBQをする時に、子供たちに「ちょっと火をおこしてみな」と言うんです。今まで火の熱さすら知らない子供たちが炭をおこす。大人だって炭をおこせない方が多いですからね。子供のうちから火をおこせるようになっていくと、生きていくための最低限の知識とまでは言いませんが、昔の人が当たり前のようにできたことができないことにも気づきます。また、野菜を切れば包丁を使うよい訓練にもなる。最近危ないからって包丁を持たせてくれない親御さんなんかもいらっしゃるみたいですが、BBQっていうイベントを通すと、子供たちにも野菜を切ってもらおうという気持ちになる。勿論手を切ることもあるかもしれませんが、それも身をもって体験できるし、血も見ることもできる。コレって普通に食育じゃないでしょうか。あと地域のものを食べるのも食育。だからBBQっていうのはいいこと尽くめなんですね。
社会的な行動をしたいとおもっている人たちに対して何かアドバイスをいただけますか?
まずは、出来ることをすることだと思います。僕もずっと企業に勤めていて、養豚業を始めるまでは毎朝早く起きて勉強したり、想いを育てる期間がありました。想いを育てる期間があると、もう行動せざるをえない状態になってしまう。勿論自分に出来ることからはじめるというのもそうですが、まずはその「想い」を大事に大事に育てていってください。いずれその想いが抑えきれなくなり、自然と行動につながっていきます。
会社を辞めて、社会企業を始めるなんていうのはすごいリスクが高い事だと思う。でも、どうやって自分のリスクをとりながら、一歩を踏み出すのかも重要だと思います。起業家の重要な仕事のひとつはリスクをとることですからね。あとは、やっぱり何か犠牲にしないといけない。僕も毎朝5時とかにおきて勉強をしていましたが、睡眠時間を犠牲にしたり、友達と飲みに行く時間を減らしたり、あとは休日みんなでわいわい楽しんだり、デートする時間を犠牲にしないといけないとか、そうゆう何かしら犠牲にしないといけない部分がある。勇気をもって一歩踏み出すのって何かを犠牲にすることがすごく大事だと思います。
●僕の財産っていうのは素晴らしい友人に囲まれていることですから。
●みんな社会に対してこういう貢献ができるという想いで起業し、会社が生まれたと思う。
●一次産業をかっこよくて・感動があって・稼げる3K産業にすることが僕の志
地域活性を促進する宮治さんのインタビュー、みなさんどうでしたか?
さて、次回は、『一新塾』代表理事の森嶋伸夫氏。
同団体は驚くことに、現在までに約70名近くの政治家を輩出しているのをご存知でしたでしょうか?
市民の意思と勇気が国内にとどまらず、国境を越えた大きなムーブメントの創造を促すと森嶋伸夫氏は語る。
乞うご期待!
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Wrote 2009.01.13 << 前のインタービュー | 次のインタービュー >>