vol.011 山阪 佳彦 / Yamasaka Yoshihiko
株式会社マック 取締役 東京本部長 クリエイティブディレクター URL:http://www.maq.co.jp/
1961年大阪生まれ。
1984年、広告制作会社である(株)マック大阪本部に入社。 コピーライターとして、多くの広告制作、キャンペーン制作に携わる。
1996年より同社取締役、2003年より同社 東京本部長。 東京コピーライターズクラブ会員。 TCC新人賞、広告電通賞、日本雑誌広告賞、朝日広告賞など多数受賞。
2006年、GARBAGE BAG ART WORK「ゴミ置き場をアートにするプロジェクト」を 社内に立ち上げ、活動をスタート。 ゴミ拾いなどのボランティア活動等を支援しながら 新たなビジネスへの足がかりを模索中。
こんにちは!テトルの本村拓人です! 本日は株式会社MAQ取締役、山阪佳彦氏のインタビューをお送りいたします。 アートの力をつかって日本のゴミ置き場をもっとオシャレな場に変えようと奮闘する山阪氏。 一見ビジネスとは程遠い活動に見えるこのプロジェクト。 しかし、山阪氏はこのプロジェクトを本気で収益性のあるビジネスに発展させようとしている。
山阪さんが『GARBAGE BAG ART』(ガベッジ・バッグ・アート)を始めるまでの経緯を教えてください。
そもそも、我々の業界(広告制作会社)は、つねに広告代理店やスポンサーから仕事を請け負う受注型のビジネスをやっています。クリエイティブの業界で私も長くやってきましたが、一言で言えば広告は課題解決型の仕事なんですね。課題解決の為にデザインやクリエイティブの力を使うことに慣れてきたので、今世の中で起こっていることに対しても、受注型ではなく、自分たちからの提案型で何かできるはずだ!という確信が、私や社内のスタッフにありました。
何故ゴミをテーマに選ばれたんですか?
様々な社会問題の中で、今いろんな人が一番興味を示しそうなテーマだと思ったからです。また自分自身、朝出社する際に、ゴミ置き場のゴミが散らかっている状況が非常に気になっていました。汚いところは本当に汚いんですが、よく観察してみると、きれいに整理されているところは石垣のようにきれいにゴミ袋が積んであって、「アートみたいだな」と思うくらい職人技のゴミ置き場もあります。
小さい物がマスになって、一つのアートになっているという事はアートの世界でもよく目にする手法なので、ごみ袋をデザインするのではなく、ゴミが置かれている環境をデザインできないかと考えたのがきっかけです。最初はビジネス的な要素は全く考えていませんでした。単純にアートの力で、クリエイティブの力で世の中に何か提案できたらと思っていました。
転機になったのは、東京デザイナーズ・ウィークというイベントです。運良く参加する機会を頂いたので、我々のデザインしたゴミ袋を出展してみました。その時に大きな反響を得て、「ゴミ袋の販売先は?」、「すごく良い活動ですね」といった声を直接聞けました。
当初はエコ活動の一環というつもりも全くなかったのですが、エコ関連の雑誌社からも取材の問い合わせをいただいて、実際多くの雑誌に取り上げてもらったりもしました。そんな中で「もしかしたら、これはビジネスになるかもしれない」と思い始めました。
現在はビジネスとしてこのプロジェクトを進められていますよね?
今、『富士山を世界遺産にする国民会議』をはじめとするNPO団体様にゴミ袋を差し上げているのは、どんどんゴミ袋を使ってもらって、私どもの活動をたくさんの方に知ってもらいたい、という気持ちもあります。ただ、特にこのプロジェクトはそんなに儲からないというのが本音で(今のところ)すごい薄利多売なビジネスです。
ものすごい量を売らないと儲からない。当初は、生産したゴミ袋の2割くらいをゴミ拾い等のボランティアをされている団体様に差し上げて、8割くらいは販売しようと計画していたんですが、今は半分以上は差し上げている状況で(笑)。ただ、やはり商売ですから利益も出さないといけないので、自分たちで東急ハンズさんやLOFTさんに直接足を運び、ゴミ袋を置いてもらっています。
おそらく、商品が面白いというよりも「考え方」が面白いという理由で、現在店頭においてもらっているんだと思います。実際には店頭でお買い上げになったお客様がばらばらに使っても当初の目的を達成できませんので、商店街や町内会単位、またはイベントなどが開催されれば、その主催者に対して一括して大量にゴミ袋を差し上げるようなプロモーションを展開していきたいと思っています。
制作会社でこのようなプロジェクトをされているのも稀ですよね?
他の制作会社でも、ステーショナリー・生活雑貨などのプロダクトやファンションなどを手掛けているところもあります。ただ、私たちは単にモノを制作するのではなく、「考え方」をつくって、世の中を動かそうと考えています。
例えば、ペンをデザインする場合、ペンのデザインが目的ではなく、新しいペンによって手紙の書き方が変化し、それによってコミュニケーションの方法が変わるといった大きなビジョンが大事。そういったモノの見方が何をするにしても我々の考え方のベースとしてありました。
デザインの好き嫌いだけでモノを選んでもらうのではなく、生活者がそのプロダクトを実際に使ってどうなるのか、といった一つ先をデザインすることが他との差別化になったんだと思います。
プロジェクトに必要な資金繰りはどのようにされていますか?
まずはこのプロジェクトの位置づけとして、先行投資として社内でコンセンサスを獲得しました。その為、ゴミ袋を生産するためにもかなりの資金を投じています。当初はこのプロジェクトが、最終的には本業に効果をもたらすということが目的でしたので、このプロジェクトを通して本業のビジネスをいかにやりやすくするのか、ということを考えた上で進めていました。
例えば、「こんなプロジェクトをしている会社です」と紹介することで、会社に対する印象もよいかもしれないですし、従来からお付き合いのある会社に対しても「意外なことをやっている」という評価を得たりする可能性も大きいわけです。
業界での我社のポジションニングを少し底上げするという意味もあってこのプロジェクトを進行させてきました。勿論、雑誌や新聞にも掲載していただくことは当初から計算していました。事実、新聞・雑誌・テレビ・インターネットなど、数多くのメディアで紹介されました。
ただ、ふたを開けてみると本業との距離が想像以上にあり、広告ビジネスの拡大にはあまり貢献していません。ですから、社内的な評価はいまいちです。このプロジェクトがメディアに載り、社名が露出することで、間違いなくPR効果にはなっているはずですが、やはり結果的には利益をあげる必要がある。
ですので、時には本業に立ち返ってスポンサーを募り、ゴミ袋にスポンサー名や商品名のロゴをいれるといった試みは必要だと思っています。この活動がもっと世の中に認知されて、一緒に活動したいと思ってくれるスポンサーが増えていくことが重要です。
実際に企業からも声がかかったりしていますが、自治体主導の商品性質上、使えるエリア、使えないエリアがあり、そこがややネックにはなっているのですが、出来る限り、ビジネスにつなげていこうと考えています。
「考え方」を立ち上げ、その「考え方」に独自性があって、さらに社会貢献になり、多くの企業がそこに触手を伸ばしてくれる。こういった流れをぜひこれからの新しいビジネスのモデルケースにしたいと思います。もし、本当に多くの企業にとって今ゴミやゴミ袋のことがいちばんの関心事だとしたら、また、そのパイオニアとして我々のプロジェクトが認知されていけば、黙っていても仕事が集ってくるでしょう。
この企画をスタートされたのはいつ頃ですか?
昨年の夏頃ですね。また、昨年の10月に発表しましたので、今月で約一年になります。さらにゴミ袋を商品化したのは今年の4月になります。
この一年で何か大きな変化や動きはありましたか?
そうですね。現在我々のプロジェクトは『GARBAGE BAG ART WORK』の傘の中にゴミ置き場をアートにするというプロジェクトや、いくつかのプロジェクトを入れようという計画があります。一つはゴミを持って帰ってもらうプロジェクト。
簡単に言えば観光地や行楽に行って自分で出したゴミは持って帰ろうという提案です。エコバック的なショッピングに持参する商品は世の中に出回っていますが、携帯用のゴミ袋はペットの糞回収袋ぐらいであまり目にしないな、というのがこの企画の発端です。
自分で食べたお弁当箱や飲んだペットボトルを持ち帰ることは「それはそうだよね」ということになる。ゴミ置き場をアートにするプロジェクトも同じ。ゴミ置き場がきれいな方がいいですよね?と訊かれた大半の方がそれはそうですねと思う。そこさえおさえておけば、あとはどう遊んでも大丈夫です。誰もが「そんなことないよ」と思わないコンセプトの立て方。
ネガティブな問題には、単純でポジティブに解決法が効果的。そういった確信があったので、今回マナーバックというカテゴリーでオリジナルの商品を、デザイン・生産しようと考えたわけです。この考え方を世の中に広めていくプロセスには商品は不可欠です。
例えばドライブに行って、帰るときにゴミを車に乗せて帰るのはあまり気持ちよくないけど、これならいいよねと思える納得をどう商品に盛り込んで提案できるか。観光地がゴミの持ち帰りを推進しているのであれば、そちらとのタイアップなどどんな価値観を観光客に提案できるかなど。
具体的にはアウトドア関連の企業や自動車メーカー、鉄道会社、観光協会などへのアプローチを考えています。既存のゴミ置き場をアートにするプロジェクトの方は、自治体や商店街をターゲットに進めていますが、こちらはまた別の業種が狙える。そもそも本業への跳ね返りを考えたプロジェクトだったんですが、さらなる広がりを見せることで、将来的には事業化できないかと考えています。
これから新しいフェーズに向かうということですか?
そうですね。大きな傘の中で発動するプロジェクトには変わりはないのですが、時代が変われば、ゴミの問題も変わってくる。時代に即したものを常に提案していきたいと思っています。
やはり、このプロジェクトの面白さって、ゴミ出しやゴミ拾いが面白くなる仕組みがあることだと思うんですね。また、ゴミ置き場がアートのフィールドになっていて、ゴミ出しやゴミ拾いの参加者がついつい微笑んでしまうところにあると思います。
コンセプトを言葉にしてパンフレットやWEBに掲載していますが、なによりも一枚の写真がこのプロジェクトを物語ってくれています。パンフレットで横長3枚の写真をつなげて見せているのも、誰もが一目で見て分かるよう広告的に表現した結果です。
積み上げることでアートになるゴミ袋。その部分へのこだわりは今でもありますが、一方では『ShiBA』とのコラボレーションなどで、違った顔も出始めていると思います。
『SHiBA』はリリー・フランキーさんが立ち上げられているブランドですよね?
そうですね、リリーさんの分身のようなブランドです。イマジネーションの素晴らしさを再認識し、世の中のみんなが、理想を思い描いたり想像したりすることを手助けをしようというのがコンセプト。今世界で起こっているいろんな現実に対し、こうであってほしいとみんなが想像することは、いまの時代ほんとうに大切とことですよね。ゴミの問題も例外ではありません。今回、リリーさんが我々のプロジェクトに賛同してくれたのは、多くの人が、ゴミ問題って難しく考えるんじゃなくて、こんなことでもいいんじゃないかって提案をしたかったのだと思います。
すごいですね。しかも、銀座の東急ハンズさんでかなり売れているらしいですね?
そうなんですよ。あるネットで見たのですが、銀座の東急ハンズさんのOpen以来に売れたものTOP5の中に『SHiBA』のゴミ袋がランクインされていました。予想をはるかに超える売れ行きの為在庫が切れ、銀座の東急ハンズさんに謝りに行ったぐらいですから。代替品の用意とか『ShiBA』サイドにも大変迷惑をかけました。
この半年間のレバレッジがここにきて効いてきている感じですね??
そうですね、メディアにも載ったということもありますが、今回はやはり、リリーさんのタレント・作家としての知名度も大きいと思います。 多くの人の目にこのプロジェクトが触れられないとやはり今後の発展というのは考えられないですからね。当初、一年は売上げもそこまで上がらないだろうという予測はありました。そろそろ2年目に入りますので、ビジネスに繋がっていくように軌道修正していくということを念頭において活動しています。
『SHiBA』さんだけでなく、『MOTTAINAI』さんとのウェブでのコラボレーションも、プロモーション効果があるのでは?
『MOTTAINAI』の研究員の方が東京デザイナーズ・ウィークをご覧になっていて、BLOGに書いていただいたんですね。そのBLOGをたまたま私が拝見したので「ありがとうございました」という書き込みをしたら、更に返信がきた。そうこうしているうちに、ゴミ袋ができたので、商品サンプルとしてお送りしたんです。
今年の3月か4月くらいの話ですね。そんな関係もあって、『MOTTAINAI』さんが運営するショッピングサイトで、セレクト商品としてゴミ袋を扱っていただくことになったんです。なのでコラボレーションということではないですが、多少のプロモーション効果はあったと思います。
それにしても、『富士山を世界遺産にする国民会議』さんしかり、Mottainaiさんしかり公式ウェブサイトの方も充実していますよね?
そうですか? うれしいですね。ちょっと変な話、『富士山を世界遺産にする国民会議』さんの信用力というのも我々としては非常に重要でして、そこでリンクを張らせてもらうということが一つの広告効果を生み出す要素となります。Give&Takeの考え方で、お互いのNeedsを埋め合わせているような状況がウェブにしっかりと反映できていると思います。
勿論小さな小学校のPTAのゴミ拾いにもゴミ袋は差し上げています。団体の規模や知名度に関係なく、喜んで使っていただけるのであれば、どんどん提供していきましょうという反面、どこかでPR効果の高いところともしっかりと手を取り合ってやっていきたいという気持ちはあります。
また、ゴミ拾いとは全然関係はないんですが、『財団法人ドナルド・マクドナルド・ハウス』様にもゴミ袋を提供しています。入院してる子供に、お母さんが泊まり込みで付き添いをしなければならない時に、病院に併設の施設で宿泊サービスを提供しているのがこの財団法人なんですね。ホテルみたいなところに1,000円で泊まることができる。いい施設でしょ?こういう活動って応援したくなりませんか?
マクドナルドハウスさんのHPで「こんなゴミ袋を提供していただいております」と私どもの活動を紹介して頂いています。それでどれだけ私どもの知名度が上がるのかは分かりませんが、好感度は多少は上がるはず。それより何より、リアルタイムで感想をメールや手紙でもらったりすると、やっぱり気持ちがいいですよね。社会に対して何かよい影響を与えているんだな、と感じられるところは、やりがいにも繋がりますから。
このGARBAGE BAG ART WORKプロジェクトの面白さは、このようにいろんな団体・企業さんとタイアップしてプロジェクトを進めているところだと思いますね。
我々をNPO、NGOなどの非営利組織だと思って近づいて来られる方々もいらっしゃいますが、やはり私たちはNPOではないんです。それを聞いて「なんだ」と思われる方も実際います。 逆にビジネスライクにちゃんとやっているのであれば、きちんと発注すればしっかりと物が届くといったビジネスの基本が出来ているということで、安心したというお客様もいますし、本当にいろいろですね。
●受注型ではなく、自分たちからの提案型で何かできるはずだ!
●「考え方」が面白いという理由で、現在店頭においてもらっている
●ネガティブな問題には、単純でポジティブに解決法が効果的
山阪氏のインタビュー前編は以上になります。
次号も引き続き山阪氏へのインタビューをお送りいたします。
次回はいよいよGARBAGE BAG ART WORKプロジェクトのビジネスモデル、また、ビジョンについて配信します!
みなさま、ぜひお見逃しなく!!
一緒に社会起業家メルマガを社会に提供しませんか!?
現在Granmaでは共にこのメールマガジン事業を推進するスタッフを募集しております!!我こそはと思われる方、
ぜひ一度、コーヒーでも飲みながらソーシャルなお話などしてみませんか?
お問い合わせ先はこちらから!!皆様からの熱いお便りお待ちしております!!
Wrote 2009.12.23 << 前のインタービュー | 次のインタービュー >>