vol.019 駒崎 弘樹 / Komasaki Hiroki

NPOフローレンス代表理事  URL:http://www.florence.or.jp/

1979年9月18日
東京都江東区生まれ
1999年
慶応義塾大学総合政策学部入学
2001年
(有)ニューロンに共同経営者として参画。同社株式会社後、同社代表取締役社長に就任。学生ITベンチャー経営者として様々な技術を事業化
2003年
フジタ未来経営賞を論文「日本型街づくり終焉」にて受賞
2004年
内閣府のNPO(特定非営利活動法人)認証を取得。代表理事に就任
2005年
保険的病児保育サポートシステム」である『フローレンスパック』をスタート。
2005年
NPO法人日本チャイルドマインダー協会理事就任
2006年7月
# 日本青年会議所主催 人間力大賞グランプリ「内閣府総理大臣奨励賞」受賞
2006年10月
アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー(EOY Japan)セミファイナりスト選出
2007年
ニューズウィーク「世界を変える社会起業家100人」に選出

詳しくは→ 

【NPO法人フローレンス】http://www.florence.or.jp/

【駒崎弘樹氏ブログ】http://komazaki.seesaa.net/

こんにちは! テトルの本村拓人です! 今号はNPOフローレンス代表、駒崎弘樹氏のインタビュー(前半)をお送りいたします。 日本の社会起業家のフロントランナーとして走り続ける駒崎氏。私が感銘を受けた事の一つに、氏が社会起業家というプライヤーとしてだけでなく、日本のソーシャルマーケット全体を見据えた成長戦略を考えつづけている謙虚な姿勢である。 取材を終えた今、私自身、一読者として、ソーシャルマーケットの可能性を引き出すフロントランナー駒崎氏の行方を追ってしまうであろう。

NPOフローレンスを始めるまでのいきさつをお聞かせ下さい。

最初は大学時代にITベンチャーを経営していた時の反省からでした。大学3年のとき、一つ下の学年の後輩が企業を立ち上げていたのですが、その会社は技術者だけだったので、割と行き詰る事が多々あったんですね。そんなある時「先輩、もしよかったら経営をしていただけませんか?」と、声がかかったことがITベンチャーに関わる経緯となりました。

学生5~6人で数千万円を動かしていたので非常におもしろかったのですが、2年くらいたってみると、何のためにやっているのかがよく分からなくなってきた。その理由は、会社自体が技術ベースの会社だったので、自分達のサービスがどう世の中の人に影響をあたえ、役に立つのかという事がどうもクリアーにならなかった所にありました。

「便利にはなるだろう」とは思っていたのですが、そのサービス自体が直接的に誰かを助けていたり、誰かのためになっているという実感がもてなかった。しかし経営者としては「頑張ろう!!」と言い続けなければならない。それに自分より5歳くらい上には日本のITブームを作ってきた人たちがいて、その人たちと話した時に正直「志が低いな」と思ってしまったんですね。

  その先輩の方々に「目標は何ですか?」とたずねると「IPOだよ、当たり前だよ」「君は違うの?」と逆に訊かれるんです。その時、IPO自体が目的という考えに疑問を抱きました。IPOは事業やサービスをより多くの生活者に届ける道具でしかないわけであって、それ自体は手段に過ぎないですから。

「何をもって成功者なのか?」と考え始めました。確かにお金持ちになって、ストックオプションをもって、六本木ヒルズに住むというような事もいいかなと思いましたが、「だからなんだ? 20年後、それが誇れるのか?」と自問した時に何か違和感があった。「自分がやりたいのは一体何なんだ?」と非常に悶々としていました。

ゼロベースになって自分の人生を考えて、やりたいことを探すために、山にこもりました。そこで自分と対話した中で、やはり自分は社会的な何かに触れていたいという気持ちが非常に強い事に気づきました。社会的に意義のある事をしたい。じゃあ社会問題を解決するということをダイレクトにできる仕事は何があるかと考えました。

官僚にはなれないと思い、政治家もしっくりきませんでした。とはいえ、ボランティア団体を作って、渋谷の駅前で「募金をお願いします」と叫んでいる姿も想像できない。じゃあどんな道があるのかと考えれば考える程、理想とする職業が考えつかない状況でした。

そうこう考えているうちに、高校の時に自分はアメリカに留学していたので、アメリカにはもしかすると探している職業が見つかるのかも知れないと考えました。そして、アメリカのNPOのウェブを見た時、すごくショッキングな事に気づきました。そこはNPOなのに非常にビジネスに近い雰囲気があったんです。

ウェブサイトがかっこいい。CEOがいて、マーケティングディレクターがいる。そんな事に非常に興味を抱きました。NPOはボランティア団体と同じだという認識を持っていた反面、衝撃度はすごかったわけです。

さらに深く調べてみると、アメリカではNPOが事業化していて経済的に自立している。ウェブサイトで様々な商品を売って何百万と稼いでいる、という事が当たり前のように行われているのを見て「これだ!」とひらめきました。事業によって社会問題を解決することもできる、という大発見をした瞬間です。

私が社会問題を解決するということを考えると、それまでは「デモ」や「〇〇運動」や「署名」とかを連想していたのですが、海の向こうはそうではなかった。私たちのような若者が革新的な事業モデルを立案して人を救うということをしているじゃないか、と思った。これは日本でもできる。そして事業を通して社会問題を解決していく人たちが「社会起業家」と呼ばれていることを同時に知りました。要するに、私は革新的な事業モデルで社会の問題を解決する人、社会起業家になりたいのだという事に気付いたのが全ての始まりです。

そこでNPOフローレンスを立ち上げ、病児保育のサービスを始めるわけですよね?

最初のきっかけは、私の母親から聞いて、病児保育へのニーズの高まりを感じたことです。事業化を目的としていたため、まずはしっかりと市場調査から取り組みました。特にニーズ調査を通しての、そのニーズの高さが大きなバネになりました。さらに、ニーズが高いのにも関わらず業界として確立していない、ニーズが満たされていないことに気づきました。そこで業界全体が活性化するような仕組みを作ろうということでNPOフローレンスを立ち上げました。

  駒崎さんにとって、NPOフローレンスをやっている圧倒的なやりがいとは?

病児保育をやっていて圧倒的におもしろいのは、「新しいライフスタイル」を世の中に提供しているという実感です。今までは子供ができることを境に、「働くことだけ」と「ずっと家庭にいる」という非常に単色の世界で分けられていました。それを多様なカラーの世界にする。「仕事をしながら子供にも触れられる」そして「自分のやりたいことに取り組める」といったライフスタイルを実現させることができるわけです。

今、日本はしだいに真の豊かさを求める社会になりつつありますが、社会構造がまだまだそれを許していないという状況がある。それを打破するための一つのツールとして病児保育を考えています。そして、もう一つのツールとして「ワークライフバランス」を推進していこうと。日本のライフスタイルを本当に多様にしていけるという実感に触れられるのは、どんな意義にも変えがたいなと思っています。

日本の真なる豊かさの実現を考えた上で、ワークライフバランスという概念の普及、またはそのコンサルティング業務という事業も考えられているわけですよね?

そうですね。病児保育というのは困った人がいて、それを救うという、いわば処方箋なんですね。風邪を引いたら風邪薬を飲むといった流れと同じです。だけれども、本当は風邪をひきにくい体にしていかなければならないわけですよね。それが真に構造的なアプローチだと思うのです。そう考えると、子供が熱を出したら夫婦共働きの方々が休みやすい会社、あるいは、社会にしていかなければなりません。そのためにも「ワークライフバランス」というコンセプトが社会に根を張らないといけない。

NPOフローレンスのワークライフバランス事業の簡単な概要をお聞かせください。

まずワーク・ライフ・バランスについて説明をすると、それは仕事とプライベートをうまく調和させ、相乗効果を及ぼし合う―好循環を生み出すことです。たとえば、仕事において、高い付加価値を提供し成果を上げるためには、広い視野や人脈が必要ですが、それらは仕事以外の場所で身につくことが多いのです。つまり仕事以外の場を大切にすることによって、仕事も短時間で成果を上げることができるようになるのです。「ワーク」と「ライフ」を調和させることで、仕事でも家庭でもより豊かな生活ができるのです。

現在、株式会社ワークライフバランス代表の小室淑恵さんが、率先してこの概念を広げようとされています。私はどちらかというと中小企業に対してコンセプトの理解・その企業にあった技法のコンサルテーションを行っています。日本企業の99%は中小企業です。中小企業が変わらないと日本の企業は変わらないんです。しかし多くの中小企業はワークライフバランス概念の導入なんて「自分たちには無理だ」と最初から諦めている。ワークライフバランスを支える資金的な体力がない、というのが大きな理由です。でも、私の考えは逆で、中小企業だからこそシステムや文化を変えられるんです。

病児保育事業とワークライフバランス事業は非常に密接につながっている事業であり、社会の構造を変える上でどちらも並行して進めていく必要があるということですね?

そうですね。事業部としても現在、病児保育とワークライフバランス事業の二本柱で運営しています。ただ、普通にやってもお金がまわりませんので、行政を巻き込む形でワークライフバランス事業を進めています。例えば、イギリスでは国がワークライフバランスのコンサルティングにお金を出しているという事実があるので、日本でもやったらどうですか? といった提案を品川区にして許可を得たので、中小企業のコンサルティングを始めました。品川区がロールモデルとなり、いずれは国を動かせればと考えています。

事業モデルとして、中小企業に直接アプローチをするのではなく、行政をまず通すわけですね?

ワークライフバランス導入のコンサルテーション市場が出来上がるまでに、まだ2~3年程かかります。市場の立ち上がり期というのはお金が動かないので、最初は行政からお金を引っ張り、実績を作っていきます。今後ワークライフバランスへの関心度が高まった時に、企業からお金を頂くといった事業戦略があります。

また、自分たちだけがコンサルテーションをやるだけでなく、社労士さんや中小企業診断士の方々と共に、各地域で、例えば、島根だったら島根の中小企業診断士がコンサルティングをしてこの概念を広げていければと思っています。ソーシャルマーケットをまずは先行的に作っていこうと。

ウェブサイトを拝見したんですが、ソーシャルプロモーション事業もやられていますよね? これはどういった目的で取り組まれているんですか?

私たちは、仕事と子育ての「両立支援」という分野で戦っているのですが、ワークライフバランスをやりながら最終的にはソーシャルプロモーションといわれる部分にも取り組もうと考えています。具体的には、こうした社会的な活動に対してプロモーションを行うことで、仕事と子育ての両立可能な社会やワークライフバランスという言葉を有名にしていき、取り組みやすいような雰囲気を作り、なんとか私たちのビジョンを下支えするような文化を創っていきたいと考えています。その意味では、病児保育事業も、ワークライフバランス事業も、ソーシャルプロモーション事業も繋がっているのです。この3つの事業をうまく織り交ぜながらやっていこうと考えています。

Word of power

●「何をもって成功者なのか?」
●山にこもりました
●社会的に意義のある事をしたい

駒崎氏のインタビュー(前編)は以上になります。

次号は引き続きフローレンス代表駒崎氏のインタビュー(中編)をお送り致します。フローレンスの経営課題、そして、今後のビジョンについてお聞きしました。

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