vol.021 駒崎 弘樹 / Komasaki Hiroki
NPOフローレンス代表理事 URL:http://www.florence.or.jp/
1979年9月18日
東京都江東区生まれ
1999年
慶応義塾大学総合政策学部入学
2001年
(有)ニューロンに共同経営者として参画。同社株式会社後、同社代表取締役社長に就任。学生ITベンチャー経営者として様々な技術を事業化
2003年
フジタ未来経営賞を論文「日本型街づくり終焉」にて受賞
2004年
内閣府のNPO(特定非営利活動法人)認証を取得。代表理事に就任
2005年
保険的病児保育サポートシステム」である『フローレンスパック』をスタート。
2005年
NPO法人日本チャイルドマインダー協会理事就任
2006年7月
# 日本青年会議所主催 人間力大賞グランプリ「内閣府総理大臣奨励賞」受賞
2006年10月
アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー(EOY Japan)セミファイナりスト選出
2007年
ニューズウィーク「世界を変える社会起業家100人」に選出
詳しくは→
【NPO法人フローレンス】http://www.florence.or.jp/
【駒崎弘樹氏ブログ】http://komazaki.seesaa.net/
こんにちは! テトルの本村拓人です! 今号は引き続きNPOフローレンス代表駒崎氏のインタビュー後編をお送りいたします。 事業を運営する上で駒崎氏が一番大事にしている事がある。それこそが『戦略』である。社会起業家に求められる資質はやはりこの戦略性なんだと感じた。米国の非営利組織を視察した際にも氏は戦略的に事業を拡大させていく米国の非営利組織運営にソーシャルセクターへの大きな自信を見出したに違いない。 また、先月出版された『「社会を変える」を仕事にする。社会起業家という生き方』。この本のタイトルにこめられた駒崎氏のメッセージもこのインタビューでお聞きした。このメルマガの読者の皆様にも是非一読していただきたい書です。
ところで、駒崎さん自身のワークライフバランスはいかがですか(笑)?
週5日で働いて、遅い時もありますが、原則8時間労働を守っています。遅い時は遅番みたいなシステムになっていますので、土日もあまり働いていません。起業当初はかなり必死に働いていましたが、現在はわりと時間的余裕はありますね。プライベートは、かろうじて彼女もいます(笑)。
一度、私と、寺井君(Komposition)と、山本君(コトバノアトリエ)と一緒に合コンに参加したんです。私の友人が広告代理店で働いているということで、友達を呼んでくれてやってくれました。けれど、3人とも社会問題の事しか話さなかった(笑)。それで盛り上がってね。山本君なんかは「いやニートがね」とか、そんな合コンだったわけです。相手はみんなちょっとさめた感じで「あははは」と半ば呆れていました。
すごく楽しかったです。合コンという場所じゃなくても良かったとは思いますけどね。向こう側の仲介してくれた女の子たちも怒らせてしまって、「あなたたち何しにきたの?」「もう絶対に誘わないから」なんて言われました(笑)。例えば、あの場に宮治豚の宮治君なんかがいても終始同じような話で終わってしまいそうですけどね(笑)。根っから好きなんだと思いますよ。社会がどうだとか、こうだとかを議論する事が。
仕事がOFFの時は駒崎さんは何をしているんですか?
本や映画をみてOFFは過ごしますね。私は意外と内向的なんですね。最近『「社会を変える」を仕事にする 社会起業家という生き方』という本を出版したんですが、もしこの本が売れたら次回はワークライフバランスについての本を出版したいと思っています。内容としては、私みたいな非ワークライフバランスな人間がいかにして会社にワークライフバランスを導入したのか? 等を書けたらおもしろいと思います。事実ですからね。
出版するに当たって一番考えたのがタイトルです。そもそも、出版の目的はソーシャルマーケットにより多くの人たちがもっと参入したくなるようにする、ということ。どうしてもNPOというとまだまだボランティア団体ですし、それで生活している人となると非常に少ないんですね。
そこで具体的にやり方を知ってもらう。ただ、問題は若い人たちの本離れが最近進んでいるので、いかにして手にとってもらえるかという事を意識しました。小難しくNPOとは?といった話をしても全然リーチしないと思いますので、少々ストーリー調にして、等身大の人間がもがきつつも、楽しくやっていましたというように書き上げました。
本当に7割くらいはギャグで書いていますからね(笑)。私がすごいとかどうとかではなくて、読者の方々が私でもできると感じてくれる本を出版したかったんですね。極力敷居を下げて書いてあります。別に嘘を書いているわけではありません。
私が本で伝えたいのは、自分で困っているなら自分で解決するというような「ノリ」、そして「社会貢献は偽善的だ」と言っている人は放っておきましょう、という事を伝えたいんです。社会という大きなくくりではなく、自分たちの身の回りの事だったら自分たちでやろうぜ、という「ノリ」を作っていきたい。
私みたいな存在が世の中に、徐々に増えていけば社会の構造って結果的に変わると思うんです。例えば、私よりも下の世代の人たちにとって私みたいな存在がわりと珍しくなくなってくるといった状況を作れると思います。
私がITベンチャーをやっていたときも同じだったんですが、最初は友達に「ITベンチャーやっているんだ」なんていうと、「大丈夫なの、就職活動しなくて?」なんていわれていました。ただ、それから数年たって、ITベンチャーが社会に台頭しだしてからみんながそういう事を言わなくなってきた。むしろ、「イケテル」みたいな雰囲気になっていった。たった4年そこまで価値観が変わるという経験をしたので、その戦いを今回は本を通じて演出できればと思っています。是非このメルマガの読者の方々にも機会があればぜひそんな私の想いを踏まえつつ、一読していただければなと思っております。表面的にはおもしろく、裏読みすると深いテーマがあるという事を実感していただければ幸いです。
フローレンスが事業を通して作るプラットフォーム構想や、今回出版された本も、駒崎さんは社会全体の構造を変えていこうとはたらきかけているんですね?
大学時代から私は経営学を学んでいましたので、ある種の模倣でもあるんですね。優れたプレイヤーは必ず市場と法を作っていると言われています。例えば、私たちが大好きだった「ファミリーコンピュータ」が一世を風靡しましたよね。あれのすごいところっていうのはまさにプラットフォームになっているところです。
本体とカセットがあって、カセット自体を任天堂さんが力を入れて生産していたわけではない。ファミリーコンピュータという本体を市場に提供して、ソフト制作会社が参入する構造をつくったわけです。そして、優れたソフトが出ると本体の売上げも伸びるという構造になっているわけです。任天堂はこのプラットフォーム戦略で世界を獲ったと言われているわけです。
経営学を学んでいると時に、このファミリーコンピュータの戦略が非常に美しいモデルだという事を私は学びました。マイクロソフトもそうで、プラットフォームをどこよりも先駆けて社会に提供し続けたわけですよね。優れたビジネスモデルにおいても、自分たちが栄えるのももちろん重要ですが、デファクトスタンダードを作って、みんなで市場を作っていく事で、要するに市場の取り合いではなく、市場の創造で利益を取っていくという勝ちパターンが生まれていくと考えたい。ソーシャルの世界もそうなんだろうと思う。
我々もこれから病児保育のマニュアルを日本全国に提供していこうと考えているのは、社会問題というのはその地域だけの問題ではないからです。ソーシャル経営学がもしあるのであれば、プラットフォーム戦略というのも一つのテーゼになるんじゃないかと思っています。
アメリカにソーシャルベンチャーの最前線を見学されにいかれたというお話をお聞きしましたが、それについて感想をお聞かせ下さい。
約3年前、私と西本千尋(ジャパンエリアマネジメント代表)と木下斉(商店街ネットワーク代表)と一緒に財団のお金を使って、米国のソーシャルベンチャーの視察に行く機会を頂いたんですね。一つはKABOOM(カブーム)というソーシャルベンチャーの視察をしました。この団体は公園を作るソーシャルベンチャーなんです。「おもしろい」と率直に思いました。日本だったら公園は土木課とか役所の方々が作るわけじゃないですか。
ちょうど公園を作っているからという事で実際に視察をしに行きました。NYの州都でもあるアルバニーです。朝7時の時点では何もなかったんですが、夕方4時の時点で公園ができているんです。40人くらいで作っていたんですね。私がすごいなと思ったポイントがいくつかありまして、1つはその40人のスタッフの中でKABOOMの人は1人だけだった。あとの人はみんなコミュニティーの人だったんですね。自分の子供たちが遊ぶからという事で親たちも参加している。
さらに、T-シャツを着た企業の人たちも参加されていたんですね。ホームデポという、米国にはどこでもあるホームセンター、そこの社員の方々がスタッフとして活動していたんです。つまり、ホームデポからボランティアとして参加しているんですけれども、公園が出来上がると、その公園に「ホームデポが作りました」という標識が立てられるという仕組みなんです。要するに広告ですよね。遊具とかもおそらくホームデポから支給されている。また、学校などとの連帯も強く、校庭がない学校からの問い合わせでKABOOMに公園を作ってもらって、子供たちが外で遊べるようになったりしています。
そのKABOOMがさらにすごいのは3年で800もの公園を全米に作っているんですね。2週間から3週間に一つ公園ができている。すごいスピードですよね。要するに彼らがやっているのは自分たちですべてを行うのではなく、それこそプラットフォームを広げるという手法で、自分たちの公園つくりのノウハウをマニュアルに落とし込んで誰でも簡単に真似できるような仕組みにしている。また、事業としても非常に優れていて、そのマニュアルを7ドルで売っていたりしているんです。やりたかったらそのマニュアルを見て学んでくださいという仕組み、さらに勉強したかったら研修があるので、そこでやり方、お金の集め方なんかも学べたりします。
いくらかお金を払ってもらえればスタッフが直接企業や団体、地域のところに行くという非常に柔軟性があり、また賢い組織だったんですね。手法はすべて開示してオープンソース化してしまい、お金も企業とがっちり協力し合ってやっているので潤沢にあるわけです。非常に戦略的にやっているんですね。
最後に読者にメッセージをお願いします。
ちょうど今言っていたことにもつながるのですが、ここでみなさんにも考えてもらいたいのは、米国ってキリスト教だからソーシャルベンチャーが育つとよく言われているんですが、KABOOMのモデルを見るとあまり関係がなくて、どこにもキリスト教はでてきていないですよね。だから、私は戦略の問題なのでは? と思うわけです。そう考えると日本のソーシャルベンチャーも米国に負けるはずがないと思うんですね。なぜならばセブンイレブンにしても、もともと米国にあったものが日本ですごいスピードで成長して、最終的には米国のセブンイレブン本社を買ってしまうまでに至ったわけですらね。私たちは私たちで負けない戦略を日本の文化や流行、習慣をおさえながら実行すればよいんだと思います。
●自分で困っているなら自分で解決するというような「ノリ」
●「社会貢献は偽善的だ」と言っている人は放っておきましょう
●優れたプレイヤーは必ず市場と法を作っている
駒崎氏のインタビューは以上になります。
次号はカーボン・オフセット・プロバイダー事業に取り組む井手敏和氏のインタビューをお送りいたします。11月に設立されたジーコンシャス株式会社。グリーンビジネスのネクストリーダーのビジョン、そして、井手氏が展開する事業モデルについて追ってみました。
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Wrote 2009.01.31 << 前のインタービュー | 次のインタービュー >>