vol.032 寺井元一 / Terai Motokazu
NPO法人KOMPOSITION代表理事 URL:http://komposition.org/
1977年9月13日
兵庫県生まれ
1984年
父親の転勤で沖縄県那覇市に転居。3年間過ごす。網膜剥離発症。
1990年
私立灘中学に入学。落ちこぼれる。アトピー性皮膚炎発症。
1995年
阪神大震災に被災。ゼロから勉強をはじめる。
1996年
私立灘高校を卒業。1年間の浪人生活に突入。
1997年
早稲田大学政経学部に入学。学生時代3年間、代議士事務所で学生スタッフとして従事。WEBの企画立案などに関わる。
2001年
早稲田大学院政治学科に入学。若者の価値観と投票行動の関連を研究する。 同年、学生団体kompositionを設立。
2002年
NPO法人komposition-standard(後にKOMPOSITIONに改称)を設立。
2004年
早稲田大学院政治学科を中退。のち、現在に至る。
詳しくは→
【ALLDAY】http://alldaymag.com/
【LEGALWALL】http://legalwall.komposition.org/
【寺井氏個人Blog】http://d.hatena.ne.jp/teraiman/
こんにちは!! テトルの本村拓人です! ! 今号もNPO法人KOMPOSITION代表の寺井元一氏のインタビューをお送りいたします。 ドラッカ-が提唱している『ネクストソサエティ-』。あまりに有名で読者の中でもご存知の方は多いと思う。 お金=資本という考えから一線を置き、『知識』が資本となる構造となるパラダイムシフトを予言した。これは営利・非営利問わず、双方の事業運営にも適応する画期的な考え方なのかもしれないと最近強く感じる。 お金で人をつなぎとめておく時代は終わったなどとロマンを語ることは避けるが、『知識』というバリューを持った人間同士が力を合わせてプロジェクトに立ち向かう頻度は今後増加していくだろう。知識が資本となる社会構造において永遠の調和はないのかもしれない。しかし、個人や団体が社会に何をなすのかに焦点を当てれば自ずと個人間に起こる調和と不調和の連続は案外容易に理解できたりもする。 また、人は自己表現フィールドをミッションとビジョンを下に次々に替えていく。この時代の流れを認識した個人や経営者はより経営基盤を縮小し、企業価値を高める為に迅速な意思決定機関を構築する。そこで、でてくる手法がアウトソーシングである。ことKOMPOSITIONを率いる寺井氏もプロジェクト毎にアーティストをかえる。この指止まれの組織体制に必要不可欠なのが情報と情報、知識と知識を掛け合わせて生まれる創造的なIdeaだ。一時的に共感した仲間は一時的に社会に価値を与える大仕事を達成させる。やがて、KOMPOSITIONを離れた仲間は自らのCommunityを結成し、社会や個人に対して新たな調和を提供する。 非営利組織の経営において、有給スタッフを常に組織にとどめておくことは非常に難しい。よりすくないリソースで経営の舵をとる彼らは、知識と仕組みをうまく活用しながら、人を動かす能力を日々鍛えている。社会が知識に価値を置くネクストソサエティ-。お金以外の目的で人を動かし、集め、生活者とより近いフィールドで事業を運営する彼ら非営利団体に社会がもっと注目する日はそう遠くないはずだ。
コンポジションの可能性って社会に付加価値を提供し続ける『姿勢』だと思います。今まで何も無かったところに表現者が付加価値を加えるアーティスティックなサービスですよね?この付加価値サービスで具体的にどのように利益をあげられているんですか?
利益については、まず僕らの現状の売り上げが付加価値サービスによるものかというと、まだそこまで到達できてはいないんです。でも僕らはこれから、付加価値、つまり表現の持つ価値や、表現をサポートする価値をサービスとして認めてもらえるようになりたい。ただ最近だと、それにかなり近い活動も生まれています。千歳烏山で展開している活動などは、表現によるまちの活性化に予算をいただいています。行政からのリクエストを受けていて受身の要素があるものの、非常にそれと近いですね。
簡単に言うと僕らはトライアルとサバイバルをここ5年ほどやってきたわけで、これからNPOとしてビジネスに挑戦するわけです。今までになかったこと、今まで他の人たちができなかったことをやろうとしている。
次に具体的な事業についてお聞きしたいと思います。先ほどの、行政と組んでやられた千歳烏山の事例ですが、最近NPOと企業が共同でプロジェクトを行うという例は増えている一方で、行政との共同は難しいとも聞きますが?
千歳烏山の活動は世田谷区および地域商店街とやらせて頂いていて、そもそもは世田谷区さん自体が文化芸術振興計画ということで、中長期の計画をたてて文化振興する動きがあるんです。その内容が、どちらかというと古典的な伝統芸能の維持というよりは、新しくそこから何かの文化を生み出していくという内容で、非常に先駆的な要素がある。そもそもの大枠が非常にトライアル的なので、僕らもご一緒できたんだと思います。
ただ相手はやはり行政だから、難しさは無いわけではない。それは否定的に言っているのではなくて、歩み寄りが必要ということです。具体的にはどういう活動かというと、千歳烏山の駅前にイベント広場といわれている公園と、あとは隣接して区民センターがあります。街のイベントは基本的にイベント広場でほぼすべて行われるんですね。
2007年はまず、街に新たなアートシンボルを生み出そうということで、区民センターの壁自体をアート作品にしました。その壁画作品が街のシンボルとして、区民の感覚に訴えていき、街のある種の決意表明的なものになるだろうという企画を立てて、実施しました。あとは現在、商店街を通じて地域住民に配布するフリーペーパーを作成していて、これからも継続的に活動をしていく見込みです。実際のところ、当初は僕らもこの活動がなんの活動なのか、悩んでいましたけれど、これはどうやらミクロな形でクリエイティブシティーを実現しようという、とんでもなく意欲的で意義のある活動だと結論しています。
行政の難しさというのは、例えば壁画は一応三月末(2008年)で消えることになっています。僕が話した趣旨からするとちょっとおかしいですよね。けれど、行政の建物管理部署からすれば、基本は年度末で現状復帰というのが大前提なわけです。行政が一年間の契約を僕らと結んだとして、万一翌年になって僕らと契約が結ばれなかったとき、壁画を消すことになったら誰が消すんだということです。これは行政観点からすれば、どうしようもない話なんですね。
でも元々のコンセプトを考えたときに、壁画を三月末で消すことには大いに疑問があります。アートシンボルをつくって、人の価値観、あそこに暮らしている人の心持ち、街に移り住もうとする人の層、そういうところに影響を与えてきて街のあり方を変えていきたいというときに、壁画をわずか半年間だけ掲示して、成果を残すのは難しい。要はうまれてこのかたあの壁のあるあの広場で遊んでいた子供が二歳、三歳の頃からあの絵を見てきて、思春期を迎えるころに何か変わるかも、っていうレベルの話だと思うんです。
本質的な価値だったら例えばこの活動を10年単位でやるとか、おそらく長期スパンの施策であるべきなんです。もちろん行政が本腰を入れれば、港湾の埋め立てですとか、数十年の再開発計画を組んだりすることもあります。しかし現状で、今回の活動はそういうレベルの話でもない。行政にも議会にも、これでいいのかどうか、文化施策について判断する専門家もあまりいない。先駆的な取り組みが、どこかでスポイルされがちになってしまう。
とは言え、今のところどうやら三月末の時点ではあの絵は消えない見込みです。それは町の人が残してほしいと言ってくださっているようで、ありがたいと思っています。行政とご一緒する活動は、行政でなければできない本質的な企画ができる面白さと、行政ならではの意思決定の硬さとの狭間で悩む、というのが結論ですね。
そういう具体的な悩ましいところがあって、しかも行政からお金をもらって事業委託をうけるっていうのはあまり無いケースですよね。今回はその具体的でわかりやすいいいケーススタディーになると思います。
僕らも最初は想像もつきませんでした。一般的な業務委託は、行政が元々やっていることを他の所にできれば今までよりも安くやってもらおうということですよね。要は派遣会社に頼むみたいに、アウトソースしていくということです。僕らも実はその形の業務委託なら受けていて、たとえば美竹公園っていう公園の清掃を渋谷区から委託されています。
世田谷に関して言うと、これとは違って行政の中でも千歳烏山に限らず、文化振興をやっていくことは、ずっとルーチンでやってきた事ではない。だからある種の新規事業として新しく文化振興をやらなきゃいけない。それを世田谷区さんが考えたときに、KOMPOSITIONを選んで頂いたという話で、いわゆる一般の行政委託とは違う気がします。行政が今まで想定していなかった新規の事業だとか、クリエイティブ性の高いことをやるときに、パートナーとして選んでもらったのはすごくありがたいですね。
今回の事例が革新的なのは、行政とNPO取り組む事例のほとんどは社会的なニーズと直結していて、たとえば病児保育のフローレンスさんのサービスなどは非常にわかりやすいと思うんです。ただ、今回は付加価値的なニーズで行政と組んでいる。しかもお金がしっかりと流れている。こういった事例が増えるとNPOの可能性があがると思うんですね。
それを言ってくれる人はまだあまりいないですけど、嬉しいですね。アートによるまちの活性化といえば瀬戸内海の直島なんかは先駆的な例ですが、クリエイティブシティーというのが最近、国内でもかなり言われ出しています。横浜なんかはクリエイティブシティーを目指して具体的な施策を打っていて、実際にアート関連の民間セクター、財団やNPO団体などの層も厚くなっている。持続的な発展をもたらす都市政策として認められてきたということですね。ポイントとしては、アーティストをはじめとする創造産業の人々が街に住んで活動することが重要で、そういう意味では横浜などは自治体としての規模的にも街の雰囲気的にも、それなりに上手くいきそうです。
今回、僕らはそれをもっとローカルな町で、手探りでやろうとしている。どこまでやれるかは正直まだまだわくわくする部分と、悩ましい部分と両方ありますけれども。そういう意味ですごく大きなことに挑戦しているんだと思うし、先駆性もあると思います。
一方で別の視点からいうと、大きな壁に絵を描きましたね、というだけの理解もありますよね。だからどう捉えるのかは、今のところ見る人とか、その情報を得た人の認識によるんだと思います。PRもまだ全然できてないのは反省点ですね。
でも嬉しかったのは、壁画制作の時期に、通りかかった人で、ダンサーの人みたいだったんですけど、話しかけてきてくれて「これは地味だけど、ものすごく画期的である」と言ってくれたことですね。派手で画期的なことってたくさんありますよね。地味で意味のないこともある。だけど、本当に地味で画期的なことってなかなか無くて、それってすごい本質的だなと思ったんです。
●表現をサポートする価値をサービスとして認めてもらえるようになりたい
●歩み寄りが必要ということです
●"ミクロな形でクリエイティブシティーを実現しようという、
とんでもなく意欲的で意義のある活動だと結論しています"
本当に地味で画期的なことってなかなか無くて、それってすごい本質的だなと思ったんです
寺井氏のインタビュー(第五号)は以上になります。
次号も引き続きNPOKOMPOSITION代表、寺井元一氏のインタビューをお送り致します。
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Wrote 2009.01.19 << 前のインタービュー | 次のインタービュー >>