vol.024 水谷 孝次 / Mizutani Koji
水谷事務所代表 URL:http://www.merryproject.com/
1951年3月
名古屋市で生まれる。
1977年
日本デザインセンター
入社。
1982年
東京ADC賞(東京アートディレクターズクラブ)ポスター公告電通賞
1983年
水谷事務所設立。
2000年1月
ラフォーレミュージアム原宿とラフォーレ原宿館内を会場にした写真&ポスター展「Merry at Laforet 2000」を開催。
2001年4月
日英同盟結成100年にあたるこの年、ロンドンのセルフリッジ百貨店で行われた「Merry Tokyo Life」のメイン企画に抜擢される。
2001年9月
阪神大震災から6年。震災時に寄せられた支援に対する感謝の気持ちを、笑顔で発信する「Merry in KOBE 2001」を開催。
2003年2月
9.11から1年後のニューヨークでMerryを撮影。六本木とニューヨークをつなぐインスタレーションが開催された。
2005年3月
愛・地球博にて
「MERRY EXPO」開催。
こんにちは!テトルの本村拓人です!! 今号から3回にわたって、アートディレクターの水谷孝次さんのインタビューをお送りします。 「あれ? 水谷さんのインタビューは終わったのでは?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。それはその通り。彼の人生にスポットを当てたストーリーはいったん終了したのですが、前回のインタビューにもあったとおり、Merry Projectは北京オリンピックの開会式でたくさんの笑顔の花をさかせることに成功しました。
前回のインタビューは北京オリンピックが開催される前でしたので、開会式でMerryの笑顔が本当に使ってもらえるのかがわからず、また、式の前で話せないこともありました。 それが今回めでたく解禁となり、追加取材し、とても素敵な話を聞かせていただくとができました!
「特別編」としてお送りするこのインタビュー。ぜひ原稿を読んでいただき、あなたにもMerryな感動を味わってほしいと思います!
笑顔の開会式に僕が参加しないのはおかしくない?
そもそもなぜ、北京オリンピックの開会式にMerry Projectがかかわることになったのですか?
うちの事務所のスタッフの子がね、インターネットでチャン・イーモウさんがオリンピックの開会式で子供の笑顔を扱うという記事を見つけたんですよ。子供の写真を募集しているという記事だったんですね。僕は世界中の子供たちの笑顔を集めて、愛知万博でもプロジェクトを手がけました。あれ?子供の笑顔で開会式をやるんだったら、僕が参加しないのはおかしいんじゃないかなって思ったんです。
「おかしい」とまで思ったんですか(笑)
ええ。参加しないのはおかしいですよ。世界でこれだけたくさんの笑顔を集めて、プロジェクトを展開している人って僕だけしかいないんですから!
まぁ、勝手な話かもしれませんが"なんで声がかからないんだ?"って。それで、イーモウさんはおそらく僕のことを知らないんだろうと思ったわけです。知らないのはちょっとまずいなぁ、ということで、連絡を取ったんですよ。
連絡は、どのようにして取ったんですか?
メールしようとしたんですが、どこに送ったらいいかわからないのでオリンピック委員会に電話しました。するとね、簡単にイーモウさんのところまで連絡が行ったんですよ。北京のオリンピックのセクションにセンターと呼ばれるところがあり、そこと話ができたんです。
スムーズに話が通るとは意外な感じがしますね
メールアドレスを教わって、Merry Projectのウェブサイトのアドレスを送ったら、向こうから返事が返ってきて「すごい。私たちがやろうとしていることをすでにやっている!」と驚いているんですね。
開会式では、真ん中に地球をイメージした輝く球体があり、そのまわりに子供の笑顔がワッと咲きましたよね。これって、Merry Projectのトップ画面のイメージと同じコンセプトですよね!
そう。基本コンセプトはまったく同じです。それで、資料をもっと送ってくれというので過去の万博の資料などを送ったら、また驚いている。で、向こうが「会いたい」って言ってきたんですよ。「イーモウがこれを使いたがっている」って。
すごくスムーズですね
ところがそうじゃないんですね。これはメールのやりとりの最初から言われていたんだけど、子供たちの笑顔を使うには、その子たちの出生証明書や住民票、両親の許諾書など、5つくらいある書類をすべて揃えなければならないんです。それをセンターの法律家たちが言ってきたんですよ。
貧富の差も、人種の違いも越えた幸せな笑顔
書類提出の義務はやっかいですね
それで彼らはね、インターネットに申し込み欄があるから、そこから申し込んでくれと言うわけです。しかし...まず、そのページ自体がなかなか見つからなかったし、見つかったら見つかったで、提出しなくちゃならない書類がいっぱい書いてあった。
でもね、Merry Projectで僕が集めた写真に関しては、何に使ってもいいというサインを全員からもらっているんですよ。つまり変な話、北京オリンピック委員会とMerry Projectが契約を結べば、出生届なんかなくても、それでいいじゃないかというのが僕の論理でね。でも法律家たちは、それじゃあダメだと言うんです。
書類を揃えなければならないと決定してしまっているなら、仕方がないのかもしれませんね
そうすると、たとえば孤児たちから出生証明書を集めるなんて無理ですよ。だから僕は、メールでオリンピック委員会に言い続けたんです。インターネットで笑顔を募集しても、書類を揃えてまで応募してくるのは、おそらく富裕層の子たちばかり、まずしい家庭で育った黒人の子や孤児の笑顔なんて手に入るはずがない!と。しかも、送られてきた笑顔がどういう状況で撮られたものかもわからないわけじゃない?
Merryの写真は「あなたにとってのMerry(楽しいこと、幸せなこと)」はなんですか、とひとりひとりの子に尋ねてまわって、そのときに撮ったものなんです。幸せを感じているときの笑顔なんですよ。世界中のいろんな国をまわったし、お金持ちの子も貧しい子も人種も関係なく撮影してまわった。
北京オリンピック委員会の写真収集の方法は、平和の祭典であるオリンピックの開会式に本当にふさわしいかと言えば、僕は違うと思ったんです。僕は何度も何度もメールを送って、そんな話をしたんだけど、結局、法律家たちは「書類がないとダメ。」の一点張りだったんです。
もう一度、一から笑顔を集めようと思った
分厚い壁が立ちはだかったんですね。そこで水谷さんはどうなさったんですか?
まず、僕がMerryな写真を集めるときに現地を案内してくれた各国のコーディネーターに連絡して、書類を全部揃えることは可能だろうかと聞いてみました。
コーディネーターからの反応はどこの国も同じで、難しいということでした。一枚の笑顔のために、膨大な量の個人情報を中国に渡さなくてはならないわけだから、子供たちの親が許してくれないだろう、と言うんですね。金銭を要求されるケースも十分に考えられると。
笑顔をお金で買うのは、おかしいですもんね
ええ。それで僕はもう一度、すべての書類を集めながら写真を撮っていけばどうかなと考えたんです。
え?ハードルをクリアするために、一から集め直そうと思われたのですか?
そうです。それで実際にやりはじめたんですね。それから、イーモウさんに会って直接話をしてみることにしました。
最初に連絡をしたのが8月で、それから9月10月11月と結構時間も経っていましたからね。まわりのみんなはね、「水谷さん止めときなよ。」って言うんですよ。そんな一生懸命やっても、写真はいいかげんに使われるだろうし、そもそもやるかどうかも怪しいもんだよ、と。
でも、僕はどうしてもやるべきだと思ってた。だから、2007年の12月10日から4日間、中国へ行くことにしたんです。
10日に中国に着いて、11日に夕方5時半から打ち合わせをやりました。オリンピックのメインスタジアムである鳥の巣の近くに開会式を計画する秘密基地みたいなところがあって、そこへ連れて行かれたのです。部屋に案内されると、そこにチャン・イーモウさんと蔡國強(サイ・コッキョウ)さんがいた。サイさんは開会式の花火を演出したアーティストです。そして法律家たちですね。
僕は彼らと会う前に、書類を完璧に揃えた笑顔の写真を彼らにつきつけました。名古屋で撮影したもので、僕の弟と、子供がいる友人が協力してくれて、やっと用意できたものでした。ものすごいエネルギーと、お金と時間がかかることがわかりました。こんなのは無理だ、と僕はイーモウさんに言ったんです。こんなやり方では、笑顔なんて集められないと言ったんですね。
●どうしていいかわからなかったけど
取りあえず電話してみた
●幸せを感じているときの笑顔なんですよ
●みんなはね「水谷さん止めときなよ」って言うんです
「書類提出の義務を果たさなくてはダメだ」と中国の法律家たちに言われてしまった水谷さん。
“それならばもういいや”と、そもそも記事を見なかったことにすることも出来たに違いありません。しかし、水谷さんはあきらめきれず、北京に向かい、直接彼らに直訴します。幸せな笑顔について、誰よりもよく知っていると自負するからこその行動。そんな彼の思いは、中国の法律家たちに響くのでしょうか?
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Wrote 2009.01.13 << 前のインタービュー | 次のインタービュー >>