vol.009 玉田雅己

NPOバイリンガル・バイカルチュラルろう教育センター (BBEDろう教育センター)代表理事  URL:http://www.bbed.org/

学校って、本当は楽しいところなんだよ

2003年1月、NPO法人バイリンガル・バイカルチュラルろう教育センターの申請が受理され、正式にNPO法人としての活動がスタートした。もちろんNPO法人化への道も簡単なものではなかった。なにしろ龍の子学園を運営しているのはほとんどがろう者であり、これまで NPO 法人の設立経験を持つものがいないばかりか、そもそも NPO 法人とはどのようなものかを理解している者もいない。玉田は龍の子学園内でその説明からはじめたわけだが、玉田の手話レベルで難しい話を伝え、みんなを説得するには骨が折れた。
「ちょうどそのころ、小泉内閣の目玉である構造改革特区提案の一般公募がはじまりました。これは特定の地域に、一律の規制とは違う制度を認める仕組みで、提案が通り申請が認められれば、バイリンガルろう教育を行う学校がつくれるということなんです。NPO法人バイリンガル・バイカルチュラルろう教育センターができたことを町田先生に報告した私の頭の中には、この頃から『道はこれしかない』という想いがわき上がってきていました」。
正式な学校法人になるためには、高いハードルを越えなければならない。しかし、そのぶんメリットは大きい。国や東京都から私学助成金が出るため経営も安定するし、通学の学割料金などが適用されるので親の負担も軽くなる。
「なにより、ろう児たちにとって楽しい学校を作ってあげたいという思いはありました。龍の子学園のろう者の先生たちに、子どもの頃の話を聞かせてもらったのですが、みんな一様に、学校の話になると表情がこわばるんですよ。そして『学校での楽しい思い出なんかひとつもない』と言うのです。聴覚口話法で授業を受けた彼らは、やはり学校の勉強など全然わからず、手話をすれば手を叩かれたり縛られたりする。寮に戻って先輩たちから手話で勉強を教わっていたそうです。これが自分たちの学校だと胸をはれることもなく、ずいぶん切ない想いをしたらしいんですよ。だから、ろう児たちが誇りを持って、楽しく学べる環境が作りたかったんです」。

独自のPR方法で、ろう児教育の現状をアピール

bodyXX_mtamada004.jpg

バイリンガル・バイカルチュラルろう教育センターを設立した玉田は、今度は私立学校の設立に向け、教育特区として認められるよう精力的な活動をはじめた。
「会社の就業後や週末になるといろいろな場所に出かけて活動の内容を発表してまわりました。 NHK のスタジオで教育特区の番組収録があると聞きつければ早速出かけて PR したり、自民党の講演会に出かけるなど、影響力を持っていそうなところにはとにかく足を運びました。講演会などに行くと、講演の終わりに質問を受け付ける時間帯があるんです。そのときが勝負です。私は大体3番目ぐらいに手を上げて、自己紹介を兼ねてバイリンガル・バイカルチュラルろう教育センターの活動について説明します。日本手話が昭和8年からろう児教育の現場で禁止されてしまっていること、聴覚口話法ではほとんど話せるようにはならないこと、そのようなことを手短かに説明するんです。講演についての質問はさらっとしたもので、自分の活動についてのアピールがメインです(笑)。だから、当てられるのも3番目ぐらいがちょうど良いんです。それ以上待てば質問の時間が終わってしまうかもしれません。真っ先に当てられて自分のことばかり語っても顰蹙を買うかもしれません。講演会の後に懇親会があれば積極的に参加して名刺交換。『先程質問させていただいた者ですが......』とご挨拶させていただくと、たくさんの方が興味を持ってくださいました。いろいろと失敗を重ねながら独自に編み出したPR方法です(笑)」。
構造改革特区へは、第二次提案から挑んだが受理されず、第五次提案まで何度も修正して提出し続けた。「もう、これ以上どうすればいいのだ」というところまで追い詰められながらも、他の教育NPOの勉強会に参加するなどして、どうすれば提案が通るか議論を重ねた。結果、2004年に、ついに第五次提案の再々検討要請という形でありつつも、提案が認められることになった。提案が通っても今度は特別区域になってくれる自治体の受け入れがなければ実現できないのだが、これが東京都に確定。更に品川区の協力を得て明晴学園設立に向けて走り出す体勢が整った。

Word of power

玉田氏のインタビュー三号は以上で終了です。

読者の皆様へ

一緒に社会起業家メルマガを社会に提供しませんか!?
現在Granmaでは共にこのメールマガジン事業を推進するスタッフを募集しております!!我こそはと思われる方、
ぜひ一度、コーヒーでも飲みながらソーシャルなお話などしてみませんか?
お問い合わせ先はこちらから!!皆様からの熱いお便りお待ちしております!!

page top